「ジビエート」
もう何をどこから突っ込んで良いのやら・・・。
僕ね、ここでは多少厳しいこと書きますけど、基本、作品のことをあんまディスりたくないってのがあるんですよ。
なので、批判すること書いたら、でもこういういい部分もあったよと、それは提示しておきたいんですよね。
つうかまあ、なんだかんだいってプロの仕事なんで、どんな作品にも見所、良い部分ってのはあるんですよ。
でもジビエートのいい部分って、明らかに制作側が意図してない、真面目にやってるのかもだけどネタにしかならないとこなんですよね。
ほんのちょっとでも光る部分と言えるかもってとこが見えても、それら全部押し流すくらい、決定的に話が駄目なんですよ。
端的に言って、物語になってない。
突っ込み所は無限にあると言っていいので、ここではピックアップする形で、いくつかあげてみますね。
・「キャスリーン」
本作のヒロインですね。
どれだけ序盤から作画崩壊してても、この娘だけはかわいく描いていたのは、作画監督の意地でしょうか。
ラスト近辺、特にボートに乗る辺りは、ちょっとやばかったですが・・・。
まあとにかく、この娘のリアクションはすごく変。
序盤の頃、千水がジビエを倒してるの見て、「千水、こんなに強かったんだ・・・!」つって、泣くわけですよ。
泣くんです。
意味わからないですよね。
ラスト近く、この娘の願いによって、三人の戦士がタイムスリップしてきたって事実(?)が明らかになるんですが、キャスリーンはそのことにものっすごい衝撃を受けるんですよ。
えらいガクブルな感じで。
いや、驚いたんだろうけど、このリアクション変じゃない?って。
自分のせいで、みんなが!って、いや、なんかそういうことじゃないだろうって。
あと、母親がジビエに刺されたのに看病せずに千水の傍にいる、雪之丞が盾になってジビエと戦おうという時にシャッターガンガン叩いてジビエの注意を引く、とか、もうホントに枚挙に暇がないくらいに、挙動がおかしい。
これ、声優さんもどんな芝居しようか、結構悩んだと思いますよ。
あと、雪之丞が死んでるとこで「目を開けて!」は強烈でしたよね。
雪之丞、目を開けて死んでるんで。
最初は作画ミスで、ホントは目を閉じてるんだけど、目を開けた絵になっちゃったのかなって思ったら、その後千水が来て目を閉じさせるという。
え、目は開いてる場面で合ってるんだな、じゃあ「目を開けて」って、なんだったんだって。
ここ、ものすごくこの作品を象徴してる場面だなって思います。
なんやねんもう。
ジビエートのキャラは全体的に挙動おかしいんですけど、キャスリーンはこの作品唯一のヒロインらしいヒロインなんで、それが目立つんですよね。
最初、剣道とかやってて自分も戦える風にしてましたけど、基本守られ役でしたし。
んー、なんというか、んー。
・「止め絵アクション、というよりも」
アクションシーンが多いのに、基本アクションできてないんですよ。
ぶっちゃけ、止め絵で「うおーっ!」みたいのは、まあ揶揄される程悪いものでもないと思ってるんです。
最近だと「コップクラフト」なんかは止め絵でアクション描くことが多かったんですが、あれはタイミングが悪くないし、絵面が良かったんで、むしろ格好いいくらいに思ったんですよね。
こういうのもアクセントになっていいかなくらいの感じで。
とにかく動かないんですよ。
止め絵で「うおーっ! ぬおーっ!」はまだしょうがないかなと思えても、実際に動いてるシーンが、まずいんです。
どうまずいかというと、斬るキャラたちに対して斬られるジビエがまったく動いてないんで、なんというか、動物虐○してるみたいに見えるんです(汗)。
なんかこう、ジビエさんたちが人懐っこく寄って来ると、うおーっ!って言う人たちが斬り殺す。
素人の暴力行為というか、なんかやばいものや、気の毒なもの見てるような気になっちゃって。
あの、素人独特の、暴力行為してるとこのいたたまれなさってあるじゃないですか。
もう全体的にあんな感じで。
・「回想シーン乱発」
それでもなんとか、僕はこの作品にもいいとこあるんじゃないかと、最後まで見てみなきゃわかんないぞと思いながら見てたんですよ。
アクションやばいな、回想シーンやたら多いな、とか思いつつも。
これ、なんでそう思ったのか、突っ込み所が多過ぎたせいでちょっと思い出せないんですけど、兼六が彩愛からお手製鎖鎌もらって、回想シーン入るとこあるじゃないですか。
なんかあそこで、ブチっと切れちゃって(笑)。
またかよってよりも、もうそんなお手製鎖鎌だけでも回想しちゃうんだって。
箸が転んでも笑う、以上のレベルで。
直近では、「GREAT PRETENDER」が、抜群に回想シーンの使い方が上手いでしょう?
そういう比較材料があるから尚更なんですけど、回想シーンって、それを挟む意味もタイミングも必要なんですよ。
ジビエートの回想シーンって、全部取っ払っても話として成り立っちゃうじゃないですか。
一つとして、意味を成してないんですよ。
それを挟まないとこのシーンが成り立たないってものが、まったくない。
雪之丞が独身だったからキャスリーンママと仲良くなるのかと思えば、ママのピンチにもロクなことできず、今度は娘と仲良くなりそうになったと思ったら、ママジビエを殺せなくて?(殺しちゃってるけど)、結局死んじゃう(お願い、目を開けて!)。
もうこんなんだったら最初からエロ親父でいいんですよ。
その方が、あいつただのエロ親父だと思ってたけど、ママンジビエ相手に本気出せずに死んじゃったんだなってことで、それはそれで物語になるじゃないですか。
なのに朴訥とした童貞キャラみたいな位置づけにするから、あの親子との関係性がややこしく感じるんですよ。
ママンジビエ相手に本気を出せずに死んだ、という最期に、それまでの回想シーンってまったくいらないでしょ?
おそらく、どんなキャラでもそうやって死んでしまってもおかしくないシーンなんで(そのシーンが発生する無茶苦茶さはここでは置いておくとして)。
他のキャラにしても、もう回想シーンの全てが無意味。
なのにやたらとそれが挟まれる。
行間で描くってことが、まったく、微塵もわかってないんだなと。
全部説明しようとして、それらが全部取っ散らかってるんで、話に整合性が取れなくなってくるんですよ。
まあ変な話、無駄な回想省くだけでも、メインの話の整合性の取れなさ、実は過去にこういうことあったんじゃないかって、視聴者の方で、アクロバティックな背景考えてくれたかもしれないじゃないですか。
なのに全部描いちゃってるから、ああ単純に物語として成り立ってないんだなってのがバレちゃって。
・「寝込む千水」
一応主人公だと思うんですけど、戦うと寝込む(笑)。
ジビエの血を浴び過ぎると、みたいな台詞があったような気がするんですけど、そんな後付け理由はどうでもよくて、この男が戦いの度に寝込む理由が、まったく見当たらない。
いや、主人公が半ば舞台から下りるんだったら、そうする意味がなきゃまずいじゃないですか。
あえてそうすることで、こういうシーンが描きたい、みたいな。
ありましたかね?
つうか、兼六が主人公ですかね。
止め絵で「うおーっ!」ってやってるとこか、寝込んでるところ。
大半は、そんな感じだったじゃないですか。
べらべら喋るキャラでもないですし、どのシーンに挟んでも話を混ぜっ返すことのない空気主人公なのに、これだけ寝込ませてることの意味が、まったくないわけです。
ちょっと話逸れますけど、ガリアンズに妙に尺取ったとこでもわかるように、このキャラで押して行きたい、みたいのが全然ないんですよね。
千水ちゃんと売り出せば、他のキャラに尺取っても、それはそれで群像劇みたいな見方もできるじゃないですか。
あるいは色んな勢力がいて、三国志でも戦国時代でもいいですけど、そういうんだったら主人公がさほど活躍しなくてもいいんですけど、これ、基本はロードムービーですよね?
全部押したい/推したい。
なのに全部が持ち味を出せてない。
構成上そうなってしまった、以前の問題で。
もうね、ホント何がしたいのかわからないです。
・「こういう結末もありってことだ!」
十一話の無茶苦茶さは当分語り継がれるレベルだと思うんです。
けど、ここまで斜め下の展開用意したんだから、ラストはさらなるメチャクチャさが来るに違いない!と変な期待させておいて、最後はどうしようもなくグダグダで終わらせるという、さすがの展開(笑)。
ていうか、「こういう結末もありってことだ!」って台詞も、あそこで吐くのおかしくないですか。
なにこのメタ発言、みたいな。
あのですね、物語になってないんです。
ホントは物語って、最初にある程度思いついた時に、そこそこ整合性って取れてるわけじゃないですか。
でもよく見ると、ここはここと矛盾してるな、このシーンいらない/付け足す、とかそういうのもあったりして。
で、推敲するわけですよね。
見直す、くらいでもいいです。
まったく、見直されてないですよね。
もうね、五分前のシーンと矛盾するようなことが、多過ぎるんですよ。
あ、ちょっとここおかしいな、みたいのがあまりに頻発するものだから、突っ込みが追いつかない。
この状態が、第一稿未満のメモ書きだとしても、どこから手を着けていいのかわからないレベルで破綻してますよ。
なのにこれが完成稿として世に出る、アニメとして出てしまうって、ホントどういう体制なんでしょう。
冒頭、タイムスリップしてきた千水たちを、「そうなんだ」レベルで納得してしまう周囲もどうかなと思いましたけど、その意味では最初から一貫して、まともな話になってないんですよね。
なんとなく色んな作品で使い古されたシーンや台詞を適当に繋ぎ合わせた、だけの作品なんですよ。
その全てを矛盾させつつ低水準で強引に形にした(形になってないけど)、と。
・「日本のアニメにもグローバルな視点を」
なんて感じで、放送前のインタビューやら何やらで吹きまくったことも、低評価に拍車をかけたかなと。
この一言だけでも、もうどうしようもなくこの業界を舐めてるんだなって、わかりますよね。
青木良って人、一応これまでアニメやらゲームやらの制作に携わってきた人なんですよね?
現場に立つ機会がそれだけありながら、一体何をしてきたんですかね。
青木殿〜っ♪つって揶揄する声が、僕なんかも聞こえてきたレベルですけど、まあここで人を嘲笑うようなことをしても仕方ないかなと。
ただ一言、真面目に仕事して下さいと。
原作もやってるんですよね。
多くの方が、そしてお金が動いてるんですよね。
真面目に仕事して下さい。
経歴見るに、これまで僕が一生かけても追いつかないくらいに稼いでますよね。
いくら努力しても、いくら才能があってもそのポジションに辿り着けない上に、顎で使われるだけの人間はいくらでもいます。
ものすごく恵まれたポジションにいるわけですよ。
どうか、真面目に仕事して下さい。
僕はアニメの仕事したことないですし、できる自信もないです。
当たり前ですが、どんな仕事でも素人が簡単に茶々入れられるようなものではないことは、それこそバイトでもなんでも、「仕事」をしたことがある人間なら誰でもわかることですから。
けれど、僕は今作よりもいい作品を作れる自信があります。
いい仕事をできる自信があります。
今はここCi-enで書いてますけど、周りの記事見るに、みんな真面目に作品に取り組んでますし、熱意も才能もあります。
でも、誰も青木殿のポジションには辿り着けないわけですよ。
僕も当然その一人で。
けど、僕が同じポジションにいたら、絶対にこれよりいい仕事します。
僕の周りにいる人たちも、絶対にできるでしょう。
120%、これよりまともで、面白いものを作る自信があります。
舐めたことを抜かしてないで、真面目に仕事したらいいんですよ。
・「最後に」
最後に、これに関わった全てのスタッフに、ご苦労様でしたと。
色んな事情があって、あるいは事情を聞かされず、今作に関わった人は、本当に大変だったと思います。
止め絵アクションも、四分割回想シーンも、しゃあないですよ。
よっぽど現場に金も時間もないんだなって。
それでも一本の作品として仕上げられたのは、ちょっと真似の出来ないことだと思いますよ。
声優陣も、この脚本でどう芝居したらいいのか、戸惑いが大きかったと思いますよ。
それでも最後まで手を抜かず、ご苦労様でした。
随分と長々と書いてしまいましたが、自分からは以上です!