「月とライカと吸血鬼」
・アニメ公式
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何気に大きな夢というか目標を掲げつつも、丁寧に日常を描いていく、そんな作品でしたね。
最初、人類初の宇宙飛行に吸血鬼絡める意味あるのかなってちょっと疑問だったんですけど、あー、こういうギミックなんだって。
実験動物と人間の、ちょうど真ん中を描くって視点は、これは上手いなあって。
人であって、人間でないみたいな。
あと、冷戦時代をモチーフにしてるラノベ系ってのも、珍しい。
ちょっと系統違うけど「プリンセス・プリンシパル」も冷戦モチーフで、僕はあの作品が昨今のアニメの中では最も好きなんです。
で、今作見てあらためて思ったんですけど、意外とこのモチーフって、アニメと相性いいのかもですね。
少し話それると、近代を扱った作品って、少ないわけですよ。
なんといっても、適当に自分で作った世界観で遊ぶみたいなことができず、膨大にある資料を、かなりの部分読み込んでいかなくてはならないわけで。
そこにプラス、自分独自の設定を加えていくわけで、作者にかなりの技量が求められるんですよね。
なので、設定を活かしてるとこに加えて、話そのものがじわじわと面白い、今作はかなりの良作だったんじゃないかと。
それと、これ色んな作品に共通してますけど、差別と迫害をきちんと描いてる作品ってのは、それだけでレベルがぐぐっと上がりますよね。
これもやっぱり、扱うのが難しいものですから。
なにが難しいって、人権意識とかって、直感的な「かわいそう」とかとはまた違ったもので、社会の硬直性/柔軟性の問題とセットじゃないですか。
ソ連モチーフの舞台といい、この辺のこと、よく練られている作品だなあって。
設定周りのことに色々触れましたけど、話自体も良かったですね。
夢や目標、指令といった重たいものを、日常を描いていくことで浮き上がらせていくみたいな。
あと、ラスト近辺も良かった。
ラスト一話のカタストロフィももちろん、その前の、レフが宇宙に飛び立った時に、イリナの言葉をなぞっていくってのがね、あーこれいい話やって(笑)。
キャラそれぞれの思いも、丁寧に描かれていたなと。
これに立場みたいのが絡んで来るってのが、また重層的な描き方で。
流行りの作品の系統とは違うんで、いわゆる大ヒットになりにくいタイプの作品ではないかもですけど、これは良作だったなあって、そう思います。
キャッチーじゃなくとも、僕もこういう丁寧な作品を書きたいなあと、そう思わされた作品でした!