わさび農園領主の日記 #12 ダーケストダンジョン中編~敗走と勝利の迷宮~

村の様子がおかしい


冒険者のアイコンが、変わっている。化物になっている。
何かがおかしい。ダーケストダンジョンから、何かが漏れ出して来ているというのだろうか。触れてはならない災厄を村に持ち帰ってしまったというのだろうか。

だが、それでも、やらなければならない。3度目の攻撃。獣の道。果たして2回目以上に厳しい戦いになるのはわかっていた。それでも、やり遂げなければならない。

3回目の攻撃 獣の腹


三回目の目的はローカスビーコンを調査することだった。
ローカスビーコン、それが何なのかはわからなかった。

前回の恐怖、レベレーションがまた来るかもしれない。
炎のタリスマンを持っていくことにした。


選出メンバーはDフィスト・むちむち・豚狩り屋・ナメクジ女
全員がエース級のメンツだ。数多くのボスを葬ってきた頼れる仲間たちだ。
こいつらしかいない。小細工は無用。力で押す。

むちむちとDフィストは狂犬病に罹っている。命中率は下がるが、攻撃力が上昇する強力な病気だ。命中率をトリンケットでカバーしてやれば、かなりの活躍が見込める。

クエストの準備の段階で、気づいたことがあった。


長すぎる。薪が4つインベントリに入っている。通常、キャンプが2回出来る長いダンジョンですら、2つの薪が必要になるだけだ。

向かわせる冒険者を選出し終え、クエストを確認する。
長さは書かれていない。ただ、疲れ果てるの文字があった。


販売所の人にも変化が……


クエストのメッセージを読む限り、ここは巨大な獣の体内であるようだった。

完全な迷宮になっていた。
どこに進めばいいかわからない。全体の構造が掴めないからアタリをつけることもできない。そんななかで、ひたすら迷い続ける。そして、通り道には凶悪な魔物が徘徊している。

敵は不気味な肉の魔物。前回ボスと一緒に出てきたやつが通常エンカする。
フレッシュ・ハウンド


口と舌を使って責め立ててくるいやらしいやつ。
攻撃力も高く、気絶とムーブの複合技がかなり邪魔なくそくそ遅延マン。

ポリープ


速いスピード、高い回避率を持っている。
毒攻撃とムーブを使ってくるいやなやつ。

アンチボディ


昏睡する体液を吐きかけてくる。単体攻撃でダメージも高い。

マンモス・シストとホワイトセル・ストーク


道中に固定で配置されているらしい巨大なゲイザーみたいな敵。
HPが150以上あり、2回行動。
大きさは3マスで後ろのやつと同時に攻撃できるキャラは限られている。

きしゃない……1~2人に対して毒攻撃をしてくる。

眼からビーム!! 攻撃力をダウンさせてくる。
後ろのホワイトセル・ストークを再配置すし、自己再生もする。

勝てない相手ではないが、連戦はしたくないレベルの強敵だ。


後ろのやつは、たいして強くはないが、ゴミ・オブ・ザ・ゴミ。
ムーブ(強○隊列移動)と弱体化をしてくるらしかったが、一度も効果が発言することは無かった。ただ厄介なことに、テレポートという技を持っているのである。こいつが最適のクソクソクソ技だった。

なんと、パーティをワープさせてくるのである。ワープ先はいくつかの候補の中からランダムで選ばれるらしかった。そこに敵がいれば即戦闘になる。バフを引き継げるのはありがたかった。

そして、ホワイトセル・ストークは前衛が生きている限り何度でも再配置される。
だから、どうしても目玉野郎から先にぶち殺さないといけないが、なかなか倒せない。
そうして、てこずっている間にワープで飛ばされるという最悪のループに陥る。

同じやつに仕掛けに行けば、HPの減った有利な状況からスタートできるが、そもそも同じ奴に辿り着くまでに結構な距離を移動し、戦闘をこなさなければいけない。
つらい。
つらすぎる。
4回キャンプ張れるが、それでもどこを目指せばいいのかわからない。
ストレスが蓄積し、食料と松明と毒消しを消耗していく。
包帯を余分に持ってきたが、出血を与えてくる敵はいない。無駄になった。



むちむちはやはり強い。

豚狩り屋も頑張ってくれていた。

ナメクジ女も懸命に死に抗った。


Dフィストは絶不調だった。狂犬病の効果が出ているとはいえ、トリンケットの効果で実質補正は0のはず。敵の回避率を考えても75%くらいは命中するはずなのにバンバン外しまくる……つれえな。

豚狩り屋がデスドア状態に……だが豚狩り屋は耐える。

そして、覚醒。このドヤ顔である。

自己再生もしてくれる。こいつほんとに人間か?

ナメクジ女も耐える。こいつさえいれば、何度でも復活できる。

何度も飛ばされながらも、マンモス・シストを撃破し続けた。
だが、目的の場所にはいつまでたってもたどり着けなかった。
どこにある。せめて場所がわかれば希望も花開くというのに。


道中にアイテムを見つけた。だが必需品の補充はなく、金になるものばかり。そんなものはいらない。いくら払ってでも食料が欲しい……。


戦い、傷つき、消耗し、休み、戦い、疲弊した。
人は流れに逆らい、そして力尽きて流される。

不注意だった。戦いの中で毒を受けたむちむちが……。

ぎりぎりデスブローは免れると思っていたが、デスドアになったあと1回ダメージを受けた。それが、致命的だった。死ぬ確率は約3割。だが、死が彼女の隣に立っていた。


嫌だ……というDフィストの悲痛な叫びは、しかし、死の手を遠ざけはしなかった。

どこへ向かえばいいかもわからない中、攻撃役を失った。
このままでは全滅する。3人が死ぬよりも一人が死ぬ方がましだった。


わさびは撤退を選んだ。

誰かが死ぬ。


死んだのはDフィストだった。むちむちの後を追いかけたのかもしれない。

わさびは精神的にダメージを受けた。
万全の状態で、最強のメンバーを選んだつもりだった。
それが、最悪の、いや、最悪よりも少しだけマシな結果に終わった。

新たな人材を育てなければ。生還した冒険者たちのストレスをケアしなければ。

そう思い、しばし簡単なクエストに冒険者を派遣した。

初期の敵たちが、まるで遅るるに足りない雑魚だと思えた。

2度目の3回目の攻撃

そして、再起の準備は整った。
わさびは折れていない。何をすればいいか考える必要があっただけだ。

まず第一に、炎のタリスマンはいらない。
レベレーションを使ってくる敵がいないからだ。

第二にペスト医師を連れていく。
毒対策が必要で気絶に弱い敵が多いからだ。

第三にマークを持ちを選ぶ。
強力な攻撃でマンモス・シストを狩るためだ。

第四に目指すべき場所のヒントが無いかクエストを見直してみた。
心臓部を目指せと書いてあった。つまり、広いダンジョンの中心の近くに、目的の場所があるのだろう。マンモス・シストがそれを守るために配置されているのだとしたら、その周辺の部屋をくまなく調べる必要があるだろう。

その結果、選出されたメンバーは―ー
ルセル・2B・インディ・ナメクジ女
ナメクジ女は2回目の攻撃だった。だが、クリアしない限りはあの地獄に再突入させることができる。辛いだろうが、仲間の仇をとるために頑張ってほしい。

ほとんど苦労はなかったと言っていい。どの辺りを目指すかの目途は付いていた。
中心部の部屋をくまなく調べることを念頭に、ワープさせられてもそこに向かうことを心掛けていればいいはず。


パンツ見せて気絶させる2Bちゃん。普通にかっこいい蹴りだ……

ペスト医師でバチバチして気絶させてやる!
マンモスは気絶しにくいとはいえ、完全耐性ではない。6割くらいで気絶するので2体とも気絶したらアド。毒も効く。

マークを付けて、殴る。それで倒せるのだ。

ルセルと2Bのコンビはやっぱり強い。ジーザスがいてくれれば……。



飛ばされつつも次々とでかいのを殺していく冒険者たち。
やがて、他とは異なる場所をみつけた! ここに違いない。
守っている奴がいる。
そしてテレポート。はいごみー


だが、場所がわかれば何度でも仕掛ければいいだけだ。


ルセルと2Bのクリティカルが刺さる!

そうして、ようやく目的が果たせた。


始まりと終わりの扉を開くのだ……。

2度目の攻撃は非常にうまくいった。情報があるというのは、強い。
だが、二人の命を失ったというのは事実なのである。

次は最後の戦いだ。あの扉の先に何が待ち受けるのか……つづく。

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