投稿記事

ボクシングの記事 (31)

柱前堂 2021/07/02 23:03

小悪魔後輩女子にノックアウトされてしまった男子

「えいーと、ないーん、てーん」

深夜のジムに、結花の弾むような声が響く。最後まで言わせてはならないのに、俺の体はキャンバスに磔にされたかのように少しも動かなかった。

「かんかんかんかーん、のっくあうと〜。きゃはっ、女のパンチなんて効かない、でしたっけ? 3ラウンドで伸びちゃった情けないセンパイ、感想はいかがですか?」

俺を覗き込む結花から、目をそむける。恥ずかしさと恐怖とで、とても視線を合わせることなんてできなかった。

「む〜、態度悪いですね。ご自慢のスポーツマンシップとやらはどうしたんですか? まあいいです、センパイがそういうつもりなら、私にも考えがありますから」

そう言うと、結花は俺の頭を挟んで立つ位置に移動した。
そして、真っ直ぐ腰を落とす。

「センパイが顔を合わせたくないんでしたら、いいですよ。私の顔が見えないように、こうやって塞いであげます」
「〜〜ッ!」

ビキニパンツに包まれた結花のお尻で、俺の顔面は塞がれた。ボクサーらしく絞り込まれてなお形のいい桃尻は、柔らかく形を変えて俺の鼻口にぴったりと張り付く。強打の連続で酷使された筋肉は滝のように発汗し、濃縮されたフェロモンを脳へと直に叩きつける。

「パンチは脚で打つ、でしたよね。ほらっ、これがっ、センパイをブチのめした大臀筋っ、ですよっ!」

結花は俺の腕をまたぐ脚で体を持ち上げ、ねちっこく俺の顔面にヒップを擦り付ける。
グロッギーなところに呼吸を塞がれる苦悶と、極上の女体を五感で味わわされる悦楽。
そのどちらもが、出口を求めて股間へと殺到した。

「うわっ、センパイ、テント勃っちゃってますよ。年下の女の子にボコボコにされて負けを認められないだけならまだしも、神聖なリングの上で勃起しちゃうっていうのは……ちょっと、恥ずかしすぎませんか?」

そう言いながらも、結花は俺の顔に尻を擦り付けるグラインドをやめない。
それどころか、俺を嘲る言葉はじわじわと、しかし深い熱を帯び始めていた。

「でもそうですね、よわよわなセンパイがボクシング続けたって何もいいことないですもんね。じゃあセンパイが二度と間違ってボクシングなんかしないように、私がセンパイの体に教えてあげます。リングは闘う場所じゃなくて、精液びゅーびゅーってする場所なんだって」

結花は俺のボクサー生命に勝手に死刑宣告を下すと、腰を持ち上げるのをやめてどっかと座り込んだ。俺のトランクスを下ろし、屹立したペニスを露出させる。
結花は真上を向いたそれを確認すると、俺の頭にしっかりと体重を預け、反り返り……

「はぁっ!」
「んぶううっ!」

俺のボディに、拳を打ち下ろした。

「んぶうっ! んぼぉっ! んぐぶぇっ!」
「んっ……センパイ、くすぐったいですよ。センパイはエッチな気分でも、私は真面目にやってるんですからね」

試合中にも酷く打たれた俺のボディは、キャンバスを背にしていることもあって、結花のグローブをずっぽり受け止めた。
腹筋という鎧はとうに砕かれ、内臓を直に叩かれる激痛に悶絶する。
それすらも、結花の尻に塞がれ、くぐもったブザマな声が響くばかり。
そして口を開けば、結花の汗が流れ込んでくる。俺を打ちのめしているパンチを支えているのは、キャンバスではなく俺の頭なのだ。今まさに稼動している大臀筋が、新鮮な汗を生産し送り込んでくる。
いや、汗だけじゃない。結花の股に流れ落ちてくる、生臭く粘ついた液体は、汗なんかじゃない。真面目にやっているだなんて、どの口が言うのか。

「はぁっ! やぁっ! ……センパイのおちんちん、ビクビクってしてます。もうちょっとですね、頑張れ、頑張れ」

呼吸を塞がれ内臓を壊される恐怖からか、それとも結花の色気に堕とされているのか。結花の言う通り、俺のハムストリングスは強ばり、発射のカウントダウンを始めていた。
イキたくてたまらない。結花という発情したメスが間近にいる。このまま殺されたら二度と機会はない、と本能が強く訴える。
イキたくない。ここで射精してしまったら、二度とリングに上がれなくなる。ボクサーじゃいられなくなる。
どんな負け方をしても、諦めさえしなければ再起できると信じていた。例え、相手がプロを目指しているわけでもない後輩の女の子であっても。
だけど、ここで射精しちゃったら、もうダメだ。プライドや仁義の問題じゃない。結花にこのまま敗北サンドバッグ射精を教えられてしまったら、二度とリングで踏ん張れなくなる。ここぞという場面で必ず負ける、どうしようもないマゾ犬ボクサーになってしまう。
皮肉なことに、ボクサーでい続けようと必死に我慢すればするほど、拮抗する快楽も強くなり、堕犬ボクサーになる確信が強まっていく。

そして、イくかイかないかを決めるのは、俺じゃなかった。

「だぁあああっ! ……これで……イけぇ!」
「んぶぶぶうっ! ぐぼっ、〜〜ッ!!」

細かく長い連打に呼吸を止めらえる。そして解放され、緩んだお腹に一際強烈な一撃が打ち下ろされた。爆心地で体が二つ折りになると同時、俺のペニスは勢いよく精液を放った。
一度の射精ではあき足らず、ピンと揃えた両脚を振り上げて二度三度と射精した。どろりとした塊が尿道を押し広げて通っていく、その刺激すらも気持ち良かった。

「んんっ……はぁ……っ! はぁ、センパイの完全ノックアウトザーメン、熱いです……ぷるっぷるの特濃で……そんなに気持ち良かったんですかぁ?」

俺の精液を浴びた結花もまた、明らかに絶頂していた。俺の顔に預けられた尻は、どんな言い訳もできないほど濡れていたのだから。

「ああそっか、センパイはプロテストに向けて禁欲してたんでしたっけ。じゃあもう、いらない精液ですよね。殴られて射精しちゃうクソマゾボクサーのセンパイは、我慢なんてしなくていいんですよ」

朦朧とした意識に流れ込んできた甘ったるい言葉に、俺のペニスはびくんと跳ねた。

柱前堂 2021/06/04 21:53

決着の光景

深夜の部室では、マキとユミが望んだ、明確な決着がつこうとしていた。

黒グローブを嵌めたユミは、前のめりの内股でかろうじて立っている。
リングに立った女の唯一の武器であるボクシンググローブは、胸元より下の中途半端な位置までかろうじて上がっている。とても構えと呼べるような状態ではなく、闘う意思があることを主張するだけの機能しか果たしていない。
自慢の腹筋は痣だらけで、乱れた呼吸の苦しさを訴えるように収縮しているのが見てとれる。
決闘だからと放り出したおっぱいは荒い呼吸のままに揺れ、その先端は疲労から充血して硬く勃ち上がっている。汗と涎が垂れ流された胸元は、深夜の眩しい照明でてらてらと輝いていた。
グローブとマウスピース以外に唯一身につけたトランクスは、限界を越えた体が失禁した黄色い染みが裾まで伸びている。
何より、顔が酷い有様だった。もう何十ラウンド殴り合ったか分からない完全KOマッチの果て、頬は二つのトマトのように、右のまぶたはウィンナーのように大きく腫れ上がり、右目を完全に塞いでいた。左のまぶたも右に比べたらマシというだけで、ほとんど見えてはいないだろう。
鼻は何度も潰れては止血を繰り返し、固まった血でほとんど塞がっている。かわりに口で呼吸するたび、何度も吐き出されリングの汚れが染みついたマウスピースが顔をのぞかせる。頬の腫れとマウスピースという大きな異物のせいで、口を必死に開けても吸気が追い付いていないようだった。ときおり苦しげに天を仰ぎ、バランスを崩して脚がふらつく。

どう見たって、ユミは限界だった。あと一発、軽く小突いただけで、もう二度と立ち上がることはない。サンドバッグにすらなれない、立っているだけの肉塊だった。

だけど、ユミはまだ立っている。私のマキとは違って。

「立ってマキ! あとちょっとでユミに勝てるんだよ!」

マットを叩いて名前を叫んでも、マキはぶうぶうと潰れた呼気を漏らすばかりで、私の声に応えてはくれない。
ユミが立っているだけの肉塊なら、マキは潰れたカエルだった。
仰向けに倒れたマキの両腕は頭上に投げ出され、降参のポーズにも見えた。両脚はコの字に開かれ、トランクスに恥ずかしい染みが広がるところを強調していた。
誇り高く晒した胸は重力に潰され、あらぬ方向へ下品に投げ出されていた。ユミの猛攻に耐え続けた腹筋はビクビクと痙攣して、もう殴られたくないと哀れに訴えているかのよう。
極限まで酷使されたマキの身体は、普段の色白が嘘のように真っ赤になっている。その体の上を、血と汗と涎が流れ落ちていく。

だけどユミと同様、マキも顔が一番酷く打たれていた。
仰向けに倒れたマキは、首を仰け反らせて顔をリングサイドの私へ向けていた。
ユミ以上に腫れ上がったマキは完全に目が塞がっていて、その顔から闘志を読み取ることはできない。口から零れ落ちそうなマウスピースが、パンパンに腫れた両頬に挟まれて引っかかっている。よく手入れされた自慢の黒髪は放射状に投げ出され、キャンバスの汚れが染み込んでいく。

こんな酷い有様になったマキに、立って闘えだなんて言えるだろうか。
私は言える。こうなるまでのマキを、ずっと見てきたから。

「あとちょっとだけ頑張って! じゃなきゃ、ここまで頑張ってきたのが、全部無駄になっちゃう! 立って……立ってよ……マキ……」

言える。そのはずなのに、私の言葉はみるみる弱くなってしまった。
マキはもう闘えない。私の声すら届いてはいないと、分かってしまったから。
倒れたマキと立っているだけのユミに、ほとんど違いなんてない。それでも僅かな、けれど決定的な差ができてしまった。
マキは、闘って、負けたのだ。

「ぶはっ……はぁっ……はぁっ……か、カウント……ワン……ッ……」

いつの間にか、満身創痍のユミが自分のセコンドが待つコーナーまで戻っていた。
私達が事前に決めたルールは一つだけ。自分のコーナーでテンカウントを数えられたら勝ち。これ以外にこの決闘を終える方法はない。
私はユミが力尽きてコーナーで崩れ落ち、ダブルノックアウトになるよう祈ってしまった。マキが立ち上がってユミを殴り倒すのではなくて。

柱前堂 2021/05/24 00:15

とってもパワフルな挑戦者の登場です

桁違いのパンチ力
KO率は脅威の90%。それも、4ラウンド以内に。
10戦全勝の新たな才能が、チャンピオンベルトを狙います。



パワーだけじゃありません、
スピードだって新時代

ゴングが鳴ればすぐ、翼の生えたようなフットワーク
打つも躱すも自由自在。試合の主導権は、チャンピオンにだって渡しません。



鮮烈なダウンシーンを見逃がさないで!
いつだってKOチャンス。第一ラウンドだって例外ではありません
強引な攻めをあしらうのもお手の物。全力のフックが入れば、チャンピオンも背中から倒れ込みます。



亀のように丸まる王者、でも
鉄槌のようなボディブローが体力を奪います
ボディブローだって一撃必殺。鍛え抜かれた足腰から放たれるフックが、腹筋の守りを粉砕します。



明瞭なコントラストをお楽しみください
インターバルだってチャレンジャーの独壇場。凛々しい横顔をご覧ください
余裕がありながら次のラウンドを見据える挑戦者。未来を見据える横顔は、顔色の悪いチャンピオンサイドと好対照。


歴史的な瞬間が、すぐそこに
決めにかかるチャレンジャー
ガードを固めるチャンピオン

少しでもダウンを遅らせたいプライドも、ボディの激痛が削り取っていきます。腕が下がれば、チャレンジャーの猛ラッシュを阻むものはありません。


煌めくマウスピースは勝利の証
アッパーカットがチャンピオンの全てを打ち砕きます
膝から崩れるチャンピオン。レフェリーストップとタオル投入は同時でした。


ここから始まる新時代
新たなチャンピオンはとってもパワフル。
それに、とってもキュート

試合が終われば、新チャンピオンは年頃の女の子。コーチに飛びついて喜びを爆発させます。
これからの防衛戦もなんのその。明るい未来にふさわしくない前チャンピオンは、担架で運び出しましょう!


こちらのパロディです。すなわちパロディのパロディ
桃太郎なのに、とっても Apple

柱前堂 2021/05/19 20:06

ボディでダウンする選手に見惚れてしまう

『強烈なボディブローが炸裂ーッ! アユミ選手の脚が止まる! これは効いてしまったかーッ!?』

あと一分耐えれば判定勝ち。だからこそ、アユミに油断はないはずだった。
だというのに、一番恐れていたチャンピオンのボディをここに来て貰ってしまうなんて。
ここから立て直せればまだ勝機はある。アユミにまだその力があるか、私は祈るような気持ちで注視した。

アユミの様子は絶望的だった。チャンピオンをあと少しで狩れる興奮で血走っていた目はまんまるに見開かれ、涙が浮かぶ。ボディブローのダメージに闘争心が吹き飛んでしまったのは明らかだった。
打ち抜かれたアユミのお腹は、私と鍛えた腹筋などなかったかのように赤いグローブがめり込んでいる。あんな強烈なボディブローは、練習でも再現してあげられなかった。アユミは今、これまで経験したことのない苦痛と闘っているはずだ。
そのグローブが、ぐりりと捻りを加えて押し込まれる。アユミの肩がびくんと跳ね、頬がパンパンに膨らむ。吹き出る脂汗、目尻から零れ落ちた涙は練習中にはない有様だった。

初めて見るアユミが苦悶する姿に、目が離せなかった。
なんとかこの苦境を耐え抜いて判定勝ちしてほしいと願う一方で、構えたまま震える拳に、流れる汗に、膨らんだ頬に、抗いがたい魅力を感じてしまう。
その頬の先、唇がゆっくりと割れていくと、もう会場の大歓声もチャンピオンの姿も感じられなくなった。
紫色になったアユミの唇から、真っ白いマウスピースが顔を出す。のっぺりとして、涎でてかって、弾力のありそうなアユミのマウスピース。それがアユミの体から出てくる様子は、ひどく官能的だった。
マウスピースを吐くほどのダメージを受けてしまっては、このラウンドを耐え抜くのは難しい。どうか出さないでほしい。セコンドとしての私はそう思う一方で、出てくるマウスピースを早く見たい、いや、マウスピースが出てくる一瞬一瞬を永遠に見ていたい、そう願う私もいた。
喉がカラカラだった。初めて体を触られる生娘みたいに全身が硬ばって、ジーパンの中はだらしなく濡れていた。早く、早く。

その瞬間はすぐに来た。ほとんど全体が出てきたマウスピースが、重みに耐えかねて唇から零れ落ちる。口を塞いでいたマウスピースが抜けて、ブボォッと汚い水音が立った。それを気にする余力すら、今のアユミにはない。
アユミの口を離れたマウスピースは、涎の糸を引きながらまっすぐ落ちて、キャンバスにバウンドした。マウスピースに溜まった涎がぼちゃっと音を立てた瞬間、私の腰も砕けた。立っていられなくなり、エプロンに上体を投げ出した。

『アユミ選手、ダウーン! チャンピオンをあと一歩のところまで追い詰めましたが、これは厳しいか!』

チャンピオンが拳を引き抜くと、アユミは膝をつき、そのまま上半身を投げ出すように倒れた。膝を折り頭をチャンピオンに投げ出したダウン姿は土下座を連想させ、その連想が説得力を持つほどチャンピオンのボディは効いてしまっていた。

現に受け身も取れないほど、ボディの苦痛に支配されたアユミは体を少しもコントロールできていないのだから。

「アユミ、立って! あとちょっと立っていられれば勝てるのに! 立って!」

我にかえった私は、アユミに必死で呼び掛ける。ここに来るまでのアユミの努力を全部見てきた私が、それが無駄になる瞬間を黙って見ていられるわけがなかった。
だけど一方で、アユミがボディブローに沈む様子を最後まで見たいという欲望が、口から出てしまいそうなほど膨らんでいた。

じれったいほどに長いカウントが進む。アユミはまだ、動かない。

柱前堂 2021/02/06 21:39

腹パン嘔吐ギブアップ

ラウンド終了を告げるゴングが、こんなに嬉しかったことはない。
対戦相手は品定めするように私を上から下まで眺め渡して、満足げにコーナーへ向かった。自分の勝ちを確信した、舐めきった態度。
けれど私は、そんなムカつく顔をブン殴るグローブを両手に嵌めているのに、睨み返すことすらできなかった。丸まりたがる体を起こして痛むお腹を抱える姿を見せないことが、精一杯の意地。

「ふっ、ふっ、うぷ、う、はぁっ! はぁっ、ふっ、ふぅっ……」

遠ざかっていく相手の背中をぼんやり眺めながら、細い呼吸を繰り返す。身体は酸素を欲しているのに、痛めつけられた腹膜を庇いながらでは息を吐いて吸うポンプの仕事すらうまくできない。10kmをシャドーしながら駆け抜けるロードワークで鍛えた肺活量は、今や見る影もない。

内臓に刺激を与えないよう慎重に歩みを進めて、やっと自コーナーまで辿りついた。セコンドが心配そうに見ているものの、スツールに座ることすらできない。倒れ込むように一歩ずつ進むことはできても、そこから体の向きを変えて、膝を曲げて腰を落とすだなんて、今の私には難しすぎる。
スツールの前で立ち尽したまま、左右のロープに両腕を載せて体を支える。俯いてコーナーポストで顔を隠すような情けない格好が、今の私の精一杯。
とても次のラウンドに備えるボクサーには見えない格好で、痛めつけられた内臓に負担がかからないよう慎重に息をする。

安定する姿勢を見つけて呼吸を繰り返したことで、激痛で埋め尽くされていた内臓がしだいに輪郭を取り戻す。内出血がじくじくと痛む腹筋、乱れた呼吸で酷使され軋む横隔膜、押し潰された反動がいまだ荒れ狂っている胃、ぐちゃぐちゃに掻き回された腸。
その腸が、余裕を見つけて元に戻ろうと動き始めた。

「ふぅ、ふっ、はぁっ……んぷ、ぎぃっ!? いぎゃぁああ!?」

文字通り、はらわたを捻じ切られるような激痛が走る。少しでも痛みが逃げるかのようにロープをぎゅっと握りしめて、意識を埋め尽くす苦痛をなんとかやりすごそうとする。
そして、狭い腹膜内で腸が変形すれば、押される臓器も出てくる。

「んぎっ……う、あ……っ、うぷ、げぇぇぇ!! げはっ、う゛お゛お゛え゛ぇっ!!」

圧迫された胃が、内容物を減らして楽になろうと激しく収縮する。せり上がってきた胃液を押し返すことなどできず、ほとんど素通りで私は吐いた。
せり上がる嘔吐感に対して、反射的に口を閉じる。せり上がってきた吐瀉物を受け止めた私の頬が、マンガみたいに丸く膨らむ。けれど弱った私じゃお腹で爆発した圧力にはまるで勝てず、パンパンに膨らんだ頬は一瞬で決壊した。

「はぁっ、はぁっ、……っぷ、んん、ぼう゛ぇえ゛え゛っ!! げぇっ! はっ、がぁあっっ!!」

吐き出して少しは楽になった、と思えたのはほんの一瞬。出ていった分だけ空気を吸い込むと、活力の戻った体はすぐにもう一度吐こうとする。
第二波は酸素を供給した分だけ力強く、無様な声とともに吐き出された。すっかり嘔吐モードに入った体は痙攣しながら、内臓を吐き出すかのように前のめりに口を突き出す。

「はぁーっ、はぁーっ、はぁーっ、ふーー……っ」

吐くだけ吐き切ると、また体に酸素が入ってくる。痙攣も次第に収まり、浅い呼吸を繰り返してようやく外界の刺激に意識を向ける余裕が出てくる。

えずきながら涙で霞む視界に、私の胃液でべとべとに汚れたスツールが映った。覗き込む私の顔から涙と脂汗が滴り落ちて跳ねる。こんなんじゃもう、座れない。次のラウンドまで、吐いたせいで立ったままの姿を会場中に見られる?
何やってんだろ、私……。

やがてやってきたレフェリーの、重い言葉。私はノーと言えなかった。

1 2 3 4 5 6 7

月別アーカイブ

限定特典から探す

記事を検索