フリーセンテンス 2021/04/08 16:40

魔鬼孕学園の淫談 托卵娘折○○問胎内回帰転生編(冒頭シーン先行公開編)

 ・・・・・・三笠奈月が類稀なる美貌の持ち主であるという事実は、彼女が昨年の学園祭でおこなわれた美少女コンテストにおいて、得票数で同率一位を獲得し、「学園美少女神セブン」の一員に選ばれたことからもわかる通りである。ただし、彼女は学園祭当日、サボッて無断外出し、都内に遊びに出かけていたため、選出された七名のなかで唯一、ステージに姿を見せなかった人物でもあった。
コンテスト中に彼女に連絡がいっても、最後まで姿を現さなかったため、場合によっては「一位剥奪」という事態もあり得たのだが、そのような声が生徒たちからあがらなかった理由は、日頃の彼女の素行不良はさておいて、彼女が一位に相応しい美貌の持ち主であったからに他ならない。
 繰り返しになるが、三笠奈月は間違いなく美しい。その端麗な容姿は、目つきの悪さを差し引いたとしても、学園を代表する美少女に相応しく、いますぐ芸能界に進出しても十分、通用するであろう。実際、コンテストをサボッて都内で遊んでいた時、彼女は大手芸能プロダクションからのスカウトを受けていたのだが、本人にその気が無かったため、貰った名刺をその場で破り捨ててしまっているが。
 彼女はまた、容姿だけでなく、スタイルも抜群で、その肉体は日本人離れした色香と魅力を漂わせてやまなかった。身長はすらりと高く、手足は華奢でしなやかで、ウェストのくびれがはっきりとしているほど無駄な脂肪が身体に付着していない反面、乳房や臀部には水準以上に肉が蓄えられており、普通に歩いているだけで世の中の異性の肉欲と性欲を刺激してやまない。実際、歩いてくる彼女の姿に欲情して思わず勃起してしまった男子は後を絶たず、授業の最中に彼女の乱れた服装に発情して我慢できずに自慰行為をおこなってしまった男子生徒が実在するほどである。そこまで極端な例とまではいかないにせよ、彼女が無思慮に振りまくフェロモンに蠱惑される男子の数はとても多く、その影響は教師や講師たちにも及んでいるほどだった。
 しかしながら、学園の外では数えきれないほどナンパされた経験を持ちながらも、彼女が学園内で交際を申し込まれたという話は皆無といってよく、誰か特定の男子と一緒にいる姿を見かけられたことすらなかった。
その理由は、すでに前述にある通り、彼女の素行不良にあった。
 彼女が不良であるという事実は、自他共に認めるところである。服装の乱れ、乱暴な言葉遣い、下級生に対する横暴なふるまい、同性・異性を問わず気に入らない相手への暴力、教師に対する悪態や露骨な反抗、喫煙、寮での飲酒、授業の無断欠席、無断外出や外泊など、彼女の悪行はあげればキリがない。
ただの素行不良女子であれば他の不良グループに目をつけられて、「制裁」と称する集団リンチを受けて態度が改まるかもしれないが、彼女は女子でありながらも異常に腕っぷしが強いため、それが効いた試しがない。
一度、男子の不良グループが、性的暴行目的で彼女を襲ったことがあるのだが、相手が武器を持ち、一〇人以上の人数で襲いかかってきたにも関わらず、奈月は素手だけで相手全員をぶちのめし、そのうちの半数以上に骨折や内臓破裂などの重傷を負わせて病院送りにしてしまったほどである。しかも当の本人は無傷だったのだから恐れ入る。
 そのような理由から、彼女に近寄ろうとする男子は皆無といってよく、彼らは遠巻きに彼女を見て欲情し、股間を熱く膨らませるだけだった。
 しかしながら、彼女の日頃の行いは、魔鬼孕学園の「ゆるい校則」に触れるどころか、法律や東京都が定めた条例に抵触するものも数多く、それは看過されるものではなくて、本来であれば停学や退学といった厳しい罰を受けて然るべきものだった。
 にも関わらず、彼女が退学どころか、停学や留年、さらには逮捕といった「罰」を受けるにいたっていない理由は、彼女の父親の影響が大きいと言われていた。
 三笠奈月の父親である三笠幸三は、素行不良の娘とは真逆の人物といってよかった。真面目で、寡黙で、愚直なほど職務に忠実で、他の教師や生徒たちからも厚い信頼を寄せられていた。
彼はまた、歴史学の権威としても名を馳せており、日本学術会議のメンバーにも名を連ね、考古学界や日本歴史学界でも重鎮として君臨しているだけでなく、魔鬼孕学園創立時から特別講師として多くの生徒たちに歴史を教えてきた功績を持つ。その教え子たちの中には、日本の歴史学界の最前線で活躍する者も数多く、それは学園の創立者でもあり理事長を務める槇原雪史郎の信頼を厚くした。三笠幸三が、学園の私設博物館ともいうべき「魔鬼孕歴史資料館」の管理を一任され、そこに展示する遺物や資料、貴重品を収集するために、年間で三億円もの予算を与えられているのがその何よりの証拠であった。
 彼と、三笠奈月の関係性を知る者は、声をひそめるでもなく、公然と言ってはばからなかった。
「トンビがタカを産むということわざがあるが、あの父娘はその真逆だな」
「可哀そうに。彼は完全に子育てに失敗したな」
「あの父親からあの娘が生まれるのか。まったく、人とは不思議な生き物だな」
「しかし・・・・・・全てが彼のせいという訳でもあるまい。アレは母親の血が悪すぎたのかもしれんぞ」
「と、いうと?」
「幸三さんの元妻は、根っからの性悪女だったからな。結婚してからも男遊びを止めず、夫の財産を使い潰して、挙句の果てには夜の街で知り合ったホストと逃げたらしい」
「それは酷い・・・・・・」
「でもまぁ、その報いを受けたのか、最後は悪い所から金を借りてヤクザにソープに沈められ、薬物中毒で死んだそうだから、まぁ、自業自得なんじゃないかな」
「そりゃそりゃ。しかし、それだともしかして、幸三さんと奈月は血が繋がってないんじゃないだろうか」
「それはあり得るな」
「なにせ、世の中の旦那の三割は、自分と血が繋がっていない「托卵児」を育てているそうだからな」
「おお、怖いこわい」
そのような陰口は、幾つもの口を通じて三笠幸三本人の耳にも届いていたが、そのことに対して彼が意見や反論を口にしたことは一度としてなかった。
三笠父娘の遺伝子上の関係について知っているのは、彼らの血液成分を入手して分析したことがある宇智田裕也ぐらいであろうが、彼にとって三笠父娘の血縁関係など、宙に舞う埃よりもどうでもいいことであった。
 しかしながら、行政手続き上、三笠奈月の父親は間違いなく三笠幸三であったから、父親が娘を護るために、自分が持つ権力を行使していたとしても不思議なことではなく、また学園も彼に求めていたことは公人としての義務と責任と職務の遂行であったから、それを忠実に実行している以上、学園における彼の地位に変化はなかった。
 自分がどのような状況にあるにせよ、三笠幸三はあくまでも職務に忠実であって、その日も彼は、深夜まで、自分の研究室がある私設博物館「魔鬼孕歴史資料館」の三階にて仕事に没頭していた。
その仕事内容は、学園を通じて学界の知人から頼まれた「ズルアレットの書」の解読作業であった。
 この書物は、一四世紀にフランスの「狂人」ボナパルトス・ズルアレットによって書き記されたとされる書物で、ラテン語と古代カルパチア語を混ぜ合わせた暗号めいた文字で綴られており、内容を全て解読して理解した者には狂気と超常の力をもたらすという、いわくめいた伝説があった。
 三笠幸三に解読作業を依頼した知人は、これをパリで開催されたオークションで落札したといい、この書物が本物であるか否か、そして逸話が真実であるか否かを知りたいとして、三笠幸三に鑑定と解読作業を依頼してきたのだった。
 依頼を引き受けた三笠幸三は、多角的な観点から鑑定した結果、この書物が一四世紀にボナパルトス・ズルアレット本人によって作成・執筆されたものだと判断し、さっそく内容の精査にとりかかったわけだが、三か月という時間をかけて九割の内容を解読したところで、陰鬱なまでにげんなりとした気分にさせられたものだった。
「まったく、なんて酷い内容なんだ。ほとんど全て、女性に対する○問や虐○の内容や方法ばかりじゃないか」
その言葉が全てを示すとおり、ズルアレットの書の内容は、いかに女性を苦しめ、痛めつけ、また弄るかに焦点があてられて書き記されており、それはとても正視に耐えうるものではなかった。
 女性に対する拘束からはじまる本の内容は、単純な素手での仕打ち、鞭や蝋燭、針、金具、火や水、各種○問器具を使った方法や、精神的あるいは心理的に負担を強いるモノ、異生物を用いて強いる性行為、さらには子宮や卵巣に対する加虐行為など、ありとあらゆる虐○や○問の方法と描写が事細か鮮明に記されており、三笠幸三は、ページをめくるたびに精神を擦り削られるような気持ちにさせられるのだった。
「ボナパルトス・ズルアレットは何十人もの女性たちを○問して殺害した罪で火炙りの刑に処されているが、なるほど、こんな書物を書き残すくらいだから、彼は本当に狂人だったのかもしれないな」
ボナパルトス・ズルアレットに関する記録はほとんど残っておらず、歴史の専門家でもなければ彼の名を知る機会はまず無いといっていい。その理由が、この書物を読み解くことで、なんとなく理解できた三笠幸三だった。
「しかし・・・・・・」
ページをめくりながら、三笠幸三は呟いた。
「ここまで精読しても、狂気や超常の力がもたらされるといった兆候は感じられないな。逸話は、やはり眉唾だったか」
三笠幸三はそう言って苦笑した。
 別に伝説を信じていたわけではないが、ほんの少しだけ、心のどこかで期待していたのは確かな事実だった。もう七十に近い年齢で、寿命も幾ばくも無い彼であるが、だからこそ、心の奥底のどこかでは、現実ではありえないような「奇跡」とも呼ぶべき事象に遭遇したいと思ってやまないのである。
 彼はまた、書物のページをめくった。
「もし、私に狂気や超常の力が訪れるとしたら・・・・・・この本に記されていることを、実行に移すだろうか・・・・・・」
 人には言えぬ暗い狂気は、人間であれば誰もがその身に宿しているものである。それは常識人の権化のような彼とてそうであり、口には出さないだけで、人には言えないような狂気を心の奥底に隠し孕んでいるのだった。
 しかしながら、ソレを解き放たないのは、彼の理性と正気がそれを許さないからであり、彼もまたそれを望んではいなかった。
かくして三笠幸三は、心の奥底に暗い闇のような陰鬱な願望を封じ込めながら、書の解読作業に没頭するのだったが――そんな彼を、書の狂気は、確実に蝕んでおり、そして三笠幸三本人はそれに気づいていないのだった。
彼はこの夜、いつにも増して速いペースで書を読み進め、解読作業はズルアレットの書の最後の章に到達した。
 その章に記されていた内容は、女性を使った「転生」の方法だった。激しい○問で女性の自我を破壊し、その子宮に老いた身体を潜り込ませて、新しい肉体を得るための手段が、奇怪な呪文と一緒に記述されていたのである。
 三笠幸三は、最後の章を読み進めながら、解読作業に熱中するあまり、思わず、その呪文を口にしてしまった。
「ア・グリア・ロス・レトル・ルスファルト・レガ・ルタ・・・・・・」
 意味も判らぬまま、奇怪な呪文が読めてしまったのは、三笠幸三が、無意識のうちに、書に願いかけていたからに他ならない。
(もし、生まれ変われるなら・・・・・・)
 と。
 書は三笠幸三の心の闇を見抜いていた。彼が、いまの自分の人生に満足しておらず、むしろ後悔ばかりであって、しかもその後悔の源泉にあるのが、「女」であるということを。ゆえに、書は三笠幸三を狂気に導き、彼の願いを叶えるべく、行動する「勇気」と「力」を与え、その肉体も、転生に耐えうるよう、「変貌」させたのであった。
そして、書の内容の全てを理解した時、三笠幸三は、もはや以前の「彼」ではなく、あきらかな「別種」に生まれ変わっていた。
「・・・・・・」
三笠幸三が、無言で自分の席から立ちあがった。
外見は、以前と変わらず、そのままであるにも関わらず、灯りに照らされた彼の影は、なにか得体の知れない軟体生物のように蠢いており、当の本人は無表情であるにも関わらず、その影は不気味に笑っていた。
 まるで、これからおこなうことを、心の底から愉しみにしているかのように・・・・・・。


 ・・・・・・本編は、この7~8倍の文章量になる予定です。

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