フリーセンテンス 2023/03/02 18:35

短編(?)小説 肉欲の養殖事業(加筆前提作品です)

 ・・・・・・ルドイド・ローパーは、数多くの種類が確認されているローパー目ローパー種のひとつであり、淫魔に属する魔物である。
 ルドイド・ローパーの形状は、海洋性無脊椎動物のイソギンチャクを彷彿とさせる姿形をしており、その大きさは、本体の部分だけで最大七メートルにもなる。イソギンチャクと異なる点は触手が頭頂部のみならず胴体からも生えているという点で、触手の数や太さは本体の大きさに比例する。すなわち、本体が大きければ大きいほど、生えている触手の数は多く、また太いというわけである。ちなみに、生えている触手は再生可能だ。
 ルドイド・ローパーは、普段は触手の一部を植物の根のように地中に伸ばして土中の養分を吸収することで生を繋いでいるが、これは彼らの生息域に本来の「獲物」が滅多に訪れないため会得した手段だと言われている。
 淫魔に属するルドイド・ローパーの本来の獲物は人間の女だ。もちろん、人間の女であれば誰でもいいというわけではなく、最低でも閉経前の女で、肉体的な魅力に富んでおり、なにより容姿端麗な美女でなければならなかった。これは別に、彼らが容姿や肉体で獲物となる女を選り好みしているわけではない。
 女性としての魅力的な人物という者は、ルドイド・ローパーの栄養となる「性的エナジー」を豊富に有している場合が多く、そのためルドイド・ローパーは進化の過程で美女や美少女しか襲わなくなったのである。醜女や肥満の女性には極めて失礼な話だが、彼らがこのように進化した背景には、ルドイド・ローパーたちが取る繁殖方法に原因があるとされていた。
ルドイド・ローパーは、繁殖期になると触手の一部を自ら切り離す「自切繁殖」という方法で増えてゆくのだが、切り離された触手は遺伝子的には本体と同一の個体であるため、オリジナルの生態を強く反映させる傾向にある。そのため、どこかの過程で人間の美女や美少女を好む個体が大量繁殖した結果、いま現在のルドイド・ローパーの生態を形作ったのではないかと言われていた。しかし、この進化の選択が、彼らルドイド・ローパーたちを絶滅寸前に追いやろうとすることになろうとは、よもや彼らたちも思っていなかったに違いない。
 ルドイド・ローパーは、他の魔物たち同様、ダンジョンと呼ばれる「魔物棲息域」に生息している。ダンジョンには希少な動植物が多く生息していたり、重要な素材、貴金属の塊、さらには宝石の原石なども多く在るため、昔から探検家や冒険者たちが危険を顧みず訪れることが多かった。ルドイド・ローパーは、ダンジョン攻略にやってきた女性たちを襲っては彼女たちの肉体を触手で貪り、「性的エナジー」を吸収することで数を増やしてきたのだが、それはもはや昔の話であって、現在は状況が異なる。
 人間たちはダンジョン内での危険を少しでも回避するため、若く未熟な女性の帯同を禁止にしたのだ。その結果、ルドイド・ローパーたちは重要な栄養源としていた女性の「性的エナジー」を吸収できなくなって、各地のダンジョンで急速にその数を減らしていったのだった。
 このように、進化の過程で選択を誤って、自らの落ち度で絶滅していく種というものは古来から存在していたが、ルドイド・ローパーたちの数が激減しても、それを悲しむ者はいなかった。ローパー目ローパー種は彼らの他にも数多くいたし、ルドイド・ローパーが居てもいなくてもダンジョンの生態系にはなんの影響もないうえ、彼らから「獲物」と見なされない「女性優勢主義者」たちからは、「これは天罰だ! 自業自得だ!」と手を叩いて喜ばれたりもしたほどだった。
 かくしてルドイド・ローパーは、このままひっそりと絶滅するかと思われたのだが、予想外の形で脚光を浴びることになる。とある錬金術師がルドイド・ローパーの体組織成分を調べたところ、なんとそこから、不妊治療や性機能の改善、さらには老化を防ぎ、細胞を活性化させ、若返りの効果がある超常的な作用をもたらす物質が発見されたのだった。これは彼らが長年に渡って若い女性たちばかりを狙っていたことによって獲得したものであると推測されたが、とにかく、この発見により、ルドイド・ローパーたちの価値は一変した。ルドイド・ローパーは貴重生物として高値で取り引きされるようになり、その価値は同量の黄金に匹敵するほどの値段になったのだった。
しかし、この頃には、すでに各地のダンジョンでルドイド・ローパーたちは姿を消しており、捕まえたくても見つけられない状況が続いた。また見つかっても、その大きさはイソギンチャクのように小柄なモノが多く、とてもではないが物質を生成するに足る量を確保することはできなかった。
 そこで試みられるようになったのが、ほんのわずかに残っていたルドイド・ローパーたちを使った「養殖」だった。ルドイド・ローパーに、彼らにとって極上の栄養素となる「餌」を与えることで、人工的にその数を増やす試みが各地で始まったのだ。
 そしてこの物語は、ルドイド・ローパーの養殖によって、一族の栄光を取り戻そうとした、とある没落令嬢の再起を賭けた性の物語である。

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