フリーセンテンス 2023/03/17 14:47

もそもそと書いております

こんにちは、フリーセンテンスです。

当方が投資信託を買い始めて早々、いきなりリーマンショックの再来だと言われはじめた今日この頃ですが、皆さんいかがでしょうか。

投資の話はさておいて、現在、「私立魔鬼孕学園の淫談」の続きを書いております。まだ完成はしていないのですが、内容は、六呪院舞香という本作のヒロインが、依頼を受けてシェアーズ・ジュニアを呪殺を試みる話になります。またなんやかんやあってヒロインがぐちゃぐちゃにされる話です。はい。

また今回の話では、始まった「向こう側」の世界からの侵略の一端とか、魔鬼孕学園が設立された理由とか、とりあえず設定してある内容を散りばめたいと思いますので、もしよろしければ読んでいただけると幸いです。

とりあえず、冒頭部分を掲載したいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m



・・・・・・六呪院家を知る者は、この一族を由緒ある名家として認知しているその一方で、この一族に漂う怪しげな気配と雰囲気に本能的な危機感を覚え、決して深く関わろうとしないとされている。それは六呪院家の人々も同様で、彼らは常日頃から極限られた特定の者たちとしか交流を持たず、狭い人間関係の中で生きてきた。そしてその特定の者たちとは、古い歴史を持つ名家や旧家の人々なのだという。
六呪院家の興りは古く、その家系図は平安時代まで遡ることができる。当時、六呪院の先祖は陰陽師として宮廷への出入りを許されており、時の権力者の陰となって暗躍していたという。この時代から、六呪院家の人々は権力者に取り入ることを得意としており、時代が平安を過ぎ去って、鎌倉、室町、戦国、江戸へと進んでも、そのつど役職や立場を変えながら、時の権力者たちと密接に関わってきたという。
しかし、明治になって鎖国が終わり、文明が開化すると、彼ら一族は突如として表舞台に進出を始める。当時の当主が野心家であったからといわれているが、それは定かではない。しかし、彼らが興した事業はどれもが成功して六呪院家は瞬く間に莫大な財を築くにいたったのだった。
 不思議なもので、六呪院家が興した各種事業には、すでに数多の競合相手が存在しており、六呪院家は後発に属する部類だったにも関わらず、六呪院家との対立が鮮明になるや否や、競合相手には様々な不幸や厄災が襲いかかって半ば自滅するような形で衰滅していったのである。
「六呪院家の人間は呪いの力を使う。そしてその力を使って競合相手を次々と潰していったのだ。奴らはおぞましい」
とは、六呪院家の成功を妬む者たちが口にする決まり文句のような愚痴であるのだが、あながち間違いではないかもしれない。なにせこの噂を耳にした時、六呪院家の人々は一度として否定したことがなく、不敵な笑みを浮かべるだけだったのだから。
 明治から大正時代にかけて莫大な財産を築く成功した六呪院家は、その後、築いた富を背景に政治家や軍部との結託を強めていき、日本の政策が本土ではなく朝鮮半島や満州国に向けられていくことを知ると、炭鉱山や鉄道会社に率先して投資をおこない、大陸での権益を拡大していった。特に関東軍と結託しておこなった阿片事業の利潤が大きく、それはわずかな期間で資産を一〇倍にも膨張させるほどであった。
 六呪院家の人々は、戦線の拡大によって日本が激動の時代に突入しているにも関わらず、築いた莫大な富力を背景に我が世の春を謳歌していたが、因果応報というべきか、日本の敗戦によって全てを失うことになる。敗戦により、日本が大陸や朝鮮半島における全ての財産と権益を放棄したのは周知の事実である。それは六呪院家とて例外ではなく、彼らは大陸への投資に傾注し過ぎたせいで本当の意味で全ての財産を失ってしまったのだった。
 六呪院家の人々はほうほうの体で大陸から引き揚げてきたが、それでも彼らはそのまま没落するにはいたらなかった。戦後は自ら表舞台に立つのではなく、また以前のように裏方へとまわり、昔からの繋がりを頼りに政治家や実業家たちに対する「相談役」めいたことを生業として成功するにいたったのだった。
 これもまた不思議なことであるのだが、六呪院家が「相談役」として振る舞うようになってからというもの、野党政治家やジャーナリスト、弁護士、刑事や検察官、果ては市民運動の参加者までもが不審な死を遂げるという事例が相次ぐようになったのである。しかし、この件に関して、六呪院家の人々が疑われることは一度としてなかった。なぜならば、現代の日本において「呪い」による犯罪はたとえそれが成功したとしても、法律で罪に問うことはできないからである。
 かくして六呪院家と繋がりが深い者たちは、声を潜めながらこぞって同じ言葉を口にするのだった。勝ち誇ったように。
「困ったことがあれば六呪院家に相談するといい。彼らなら、邪魔者を確実に「排除」してくれるから」
そんな六呪院家で急な代替わりがおこったのは、今年の八月下旬のことである。五十四代目の当代当主が四五歳という若さで急逝し、当主の座がその娘に移ったのだ。娘の名前は六呪院舞香。この時、年齢はまだ一七歳。若すぎるだけでなく、社会経験も未熟であるため、普通であれば一族内から異論が上がってもおかしくない決定であった。
 しかし、この決定に、一族内から異論は上がらなかった。むしろ一族の他の者たちが誰も当主の地位を継ごうとしなかったため、仕方なく娘が就くことになったというのが実情であった。なぜならば、六呪院の当主となった者は、財産を継承するだけでなく、一族を代表して「相談役」としての責務を果たさなければならず、それは決して安易なものではないからであった。
 父親の跡を継いで当主となると決まった時、舞香の身分はまだ学生であった。そのため、彼女は夏休みが終わると同時に通っていた私立魔鬼孕学園に自主退学届けを提出して実家に戻ってきたのだった。
 彼女が退学すると知った時、同級生だけでなく、下級生や上級生、さらには教師たちも驚き、泣いて彼女の退学を惜しんだ。それだけ、彼女の人気は学園で高かったのだ。なぜならば、彼女は昨年の学園祭で開催された美少女コンテストで同率一位を獲得した「神セブン」のひとりであって、漂わせる妖艶な色香と神秘的な雰囲気は、一部でカルト的な人気を博していたからだ。
 通いなれた学園を去らねばならないことを舞香も悲しんだが、それは仲間たちとの別れを惜しむというよりは、当主の地位を継ぐことによって世俗から離れなければならないことに対する哀しみの度合いの方が強かった。若くして、残りの人生の大半を、「相談役」としての責務に費やさなければならないという事実は、むしろ死んでしまった方が幸せと思えなくもないからである。
もっとも、彼女がこれから生涯の大半を過ごすことになる六呪院家の本拠地は、世俗から遠く離れた深い山の奥には無く、むしろ真逆の場所にある。そこは大都会東京の港区「七本木」、その中心地に建つ巨大複合商業ビルの居住区域の中に在るのだ。
通称を「七本木ヒルズ」というこの建物は、高さ二四四メートル、地上五五階、地下六階、塔屋二階からなる巨大建築物で、その威圧的なまでの巨大さは、さながらバベルの塔のように、見上げる者の心情に圧倒的な感情を吹き込んでやまない。
 この巨大商業ビルは、バブルが最盛期を迎えていた八〇年代半ばに都市再開発計画の一環として建設が計画され、途中でバブル崩壊という憂い目や、地元住民からの強い反対運動に遭いながらも、一七年という歳月をかけてどうにか完成するにいたった。広大としか言えない内部には企業のオフィスや商業施設、居住区域、ホテル、テレビスタジオ、レジャー施設、美術館や映画館、病院、専門学校、さらには宗教施設まで入っており、さながら小さな街がそのまま入居している感がある。実際、このビルには、再開発によって立ち退いた住民たちも入居して暮らしており、金銭とその気さえあれば、生涯をこのビルの中で暮らすことも不可能ではないのであった。
 またこのビルは「成功者の象徴」としても広く知られており、高層階の居住区域には、大企業の社長や役員、資産家や投資家、大物俳優や有名タレント、トップミュージシャン、さらには若手ベンチャー企業の経営者などの高所得者がこぞって入居しており、その中の一室に、六呪院家の本邸もあるのだった。
 そこに来客があったのは、ニュースで世界的な軍需企業ダーク・シェアーズの新しい最高経営責任者がプライベートジェット機で来日したと報じられた日の夜であった。それは九月三〇日のことで、この日、日本のワイドショーでは、わずか九歳という年齢で世界的な巨大企業のトップに就任したこの少年の話題でもちきりとなっていた。
 彼の名前はボナパルトス・シェアーズ・ジュニア。金髪碧眼の美少年で、わずか八歳で名門ハーバード大学を首席で卒業した「天才」であり、行方不明となっている父親の資産、総額およそ八〇〇億ドルを継承したと伝えられると、子どもを持つ女性出演者やタレントたちからは感嘆のため息が漏れたほどであった。
 さて、話は戻る。
九月三〇日の夜、「七本木ヒルズ」内にある六呪院家邸宅を訪れた人物は、全身が黒ずくめの男であった。着ているスーツ、ネクタイ、靴下、そして現れた六呪院家新当主を前にしても決して外そうとしない帽子やサングラスも、全てが黒一色で統一されており、それはまるで頑なに「個」を隠さんとしているかのようであった。
 この全身黒ずくめの男は、名前を「斎藤和氏」と名乗ったが、これが偽名であることは、応対した六呪院舞香にはすぐに判った。しかし、重要な点はそこではなく、この「斎藤和氏」を名乗った人物が、現在、保守党の幹事長を務める人物の「紹介状」を持参してきたことである。「紹介状」を持つ者を無下にはできない。舞香はこの黒ずくめの男を家の中へと招き入れた。
「あなたが何処の何者で、なにを目的にここへいらしたかは伺いません。ですが、この「紹介状」をお持ちになったということは、我が一族が持つ「力」を求めてということでよろしいのですね?」
舞香が静かな迫力をたたえた瞳で黒ずくめの男を真っすぐ見つめると、男はやや気圧されたようであった。だが、男は固唾を飲んで姿勢を正すと、改まった雰囲気でもって肯定の言葉を口にした。
「は、はい。私は、あなた方の一族が持つという「力」をどうしてもお借りしたくて、こうしてここへやってきました」
この時、男の喉が先ほどよりも強く鳴ったのは、舞香の有無を言わさぬ強い気迫に圧倒されただけではなかった。年齢に似つかわぬ舞香の大人びた妖艶な美貌と、そして巫女装束に包まれた彼女の豊満な恵体をほとんど直視する形で目の当たりにして、彼は「男」として圧倒されたのだった。
 すでに承知の通り、六呪院舞香は美しい。年齢はまだ大人と称されるには足りないものの、すでに絶世の「美女」の気配を存分に漂わせている。
小さくて白い顔立ちは端正であり、黄金比の見本のような美貌を湛えている。長い黒髪は染色した絹糸を束ねたような色艶があり、黒くて大きな瞳はまるで最高級の黒曜石のような輝きを放っている。鼻は小さくもツンと尖っており、唇は花弁のように可憐だ。また容姿だけでなく肉体の方も「豊満」という言葉が相応しい体型をしており、大きく実った乳房は巫女装束越しにもわかるほど巨大で、重力に負けないハリとボリュームを誇っている。臀部の肉付きも立派そのもので、安産型の極地ともいうべきそのお尻は、子孫繁栄を祈願される母神の化身を彷彿とさせるものがあった。結婚すれば、きっと多くの子宝に恵まれるに違いない。そして、彼女を孕ませた人物は、周囲から嫉妬と羨望の眼差しを受けるのだ。
 もっとも、当の舞香本人にとって、自分の容姿や肉体は、それほど重要なモノではなかった。彼女には、自分を推し量るうえで他にもっと重要なカテゴリーがあったため、もし仮に、なんらかの事故で美貌や肉体を失ったとしても、それほど悲しまないに違いない。
舞香は姿勢をやや改めた。そして、自分の「迫力」に圧倒されている黒ずくめの男に対して、もう一度、確かめるような口調で問いかけた。
「あなたがいうその「力」とは、我が一族が扱う「呪い」の力のことでよろしいでしょうか?」
六呪院家が呪い――すなわち、「呪術」という超常の力を扱うことを知る者は、「相談役」として懇意にしている一部の者たちしか知らないことである。ゆえに、あえて「呪い」という言葉を強調する形で尋ねたのは、相手がどこまでその「力」を信じているのか、確認するための作業的な意味合いもあった。なにせ、科学が発達したこの現代社会において、「呪い」などという非科学的なことを口にしても、一笑に伏されて信じられることはほとんどない。
しかし、舞香に改めて問われても、黒ずくめの男は怯んだ様子はなかった。
「はい。その力のことで、間違いありません」
黒ずくめの男は己の意思を翻すような真似はせず、スーツの内側から一枚の写真を取り出すと、それを舞香へと差し出した。
「あなたには、この男を呪い殺して欲しいのです」
「・・・・・・!」
写真を受け取った舞香は少しだけ驚いた様子だった。そこに写っていた「男」とは、まだ年端もいかない少年だったからである。しかもその子どもに舞香は見覚えがあった。
「この子は、確か・・・・・・」
「彼の名は、ボナパルトス・シェアーズ・ジュニア。アメリカの軍需企業ダーク・シェアーズの新しい最高経営責任者に就いたばかりの少年です」
ダーク・シェアーズ。
それはアメリカのフィラデルフィアに本社を置く軍需企業。軍事に関するありとあらゆる産業に進出し、アメリカのみならず世界各国とも強い繋がりを持ち、人や社会の不幸を糧として、莫大な利益をあげている。南半球を中心に多数の軍事基地を持ち、退役軍人を中心に雇っている社員の数は「大軍」と称されるほど膨大で、一国の軍隊を凌ぐものがあった。つい最近もカブラン島での大惨事が発生する前にグラチネル社の株式を全て売却したことでも話題になった会社である。そして、まさに今日、写真の人物が来日したとニュースで報じられたばかりであった。
 黒ずくめの男が姿勢を正した。
「私は・・・・・・素性を話すことはできませんが、とある有力な政治家一族の出なのです。先祖には首相や官房長官を経験した者もおり、親族には現役の国会議員や知事として活躍している者が多数おります。しかし、私は一族の基盤を継いで政治家になるつもりはなく、貧しい人のために尽くそうと、医師の免許を取得した後、国際的な人道団体に所属して、主に紛争地域での医療支援に尽力してきました」
そう言って男が口にした地域は、イラクやパレスチナ、シリア、アフガニスタン、南スーダン(旧ダルフール)などで、いずれもテロが頻発する危険な紛争地帯であって、外務省から渡航制限が出されている場所ばかりであった。
「お医者さまでしたか。でも、人を助ける立場にある方が、どうして人の死を望まれるのですか? それも、こんな年端もいかない子どもの死を・・・・・・」
「そ、それは・・・・・・」
「それは?」
 黒ずくめの男は、やや口ごもった様子であった。自分でも、人の道に反したおこないをしようとしていることに対して、後ろめたい気持ちがあったからかもしれない。
しかし、それも長いことではなかった。
やがて男は、意を決したように、強い言葉で一気に言葉を吐きだした。
「・・・・・・それは、戦場でこの軍事企業がおこなっていた酷い蛮行の数々を目の当たりにしてきたからです!」
半ば叫ぶように告げたのは、それだけ強い想いを抱いていたからに違いなかった。眼光はサングラスに遮られて確認することはできなかったが、膝の上に乗せられている拳は、まるで石のように硬くギュッと握り締められており、それは男の決意の強さを表明しているようでもあった。
「このダーク・シェアーズという企業は、はっきり言って、とてつもなく恐ろしい会社です。死の商人や、悪魔の手先という言葉が相応しいかもしれません。本当に酷い会社なんです!」
そう言って男が語った内容は、耳を塞ぎたくなるようなものだった。ダーク・シェアーズは民間の軍需企業である。ゆえに、利益を追求するための兵器の販売や傭兵を派遣しての戦闘は仕方がないかもしれないが、だが、彼らが紛争地域でおこなっていたことはそれだけではなかった。
 民間人に対する虐殺、非戦闘員に対する激しい○問、略奪、婦女子への性的暴行や「勧誘」と称する市民の拉致、さらには非道な人体実験にまで手を染めているというのだ。
「戦争に犯罪は付き物ですから、それを悲劇と言葉で片づけることは簡単です。日本のマスコミはダーク・シェアーズの戦争犯罪を決して報道しませんし、ネットで晒される情報も極一部です。ですから、ダーク・シェアーズの悪行の数々は、世の中にはあまり知られていないでしょう。でも、私は見たのです。いえ、見てきたのです! ダーク・シェアーズによる悪逆卑劣な蛮行の数々を! 想像できますか? 頭に銃口を突きつけられた子どもの顔を、強○されて殺された妻や娘の前で泣き崩れる父親の顔を。そして悪意に満ちた傭兵たちの愉しそうな笑顔をあなたは想像できますか? 私は、見てきました。実際にこの目で、何度も、何度も、何度も何度も! もう、本当に地獄ですよ・・・・・・」
そう言って男は涙を拭った。凄惨な光景を思い出し、涙が止まらないといった様子だ。
「・・・・・・だから、その元凶を呪い殺したい、と?」
「そうです。いま、ダーク・シェアーズは揺らいでいます。前の最高経営責任者であるボナパルトス・シェアーズ・ジュニアが行方不明になっている間、会社の経営を支えていたのは長年に渡って彼に仕えていた側近たちでした。私が入手した情報によりますと、彼らはいつか自分たちの誰かが、新しい最高経営責任者になると思っていたようです。ところが、その座に就いたのは、先代の血を継いでいるとはいえ、わずか九歳の少年だったのです。老獪な幹部たちが不満を抱かないはずがなく、実際、同社にスパイとして潜入している仲間からの情報によりますと、この人事には幹部クラスの者たちも不満を抱いているとのことです。ゆえに、もしこの少年にもしものことがあれば、おそらくダーク・シェアーズは、醜悪な権力闘争の果てに瓦解することになるでしょう。そうなればいまのように全地球規模で事業を展開することも難しくなるはずです。そうなれば、彼らの暗躍によって不幸な目に遭う人たちも減るはずなんです! だから、どうか力を貸してください! お願いします、お願いします!」
そう言って男は深々と頭を下げた。額を床に擦りつけ、拝み倒すように。
「・・・・・・」
舞香はしばらく沈黙を保っていたが、やがて口を開いた。
「・・・・・・わかりました。そこまでおっしゃるのであれば、やってみましょう」
「ほ、本当ですか!」
「ええ。それに、西沢先生のご紹介とあれば、無下にはできませんからね」
西沢とは、いまの保守党で幹事長を務めている人物である。六呪院家とは先々代から付き合いがあり、彼が幹事長の座に就いた時、競争相手が相次いで不審な死を遂げたのは、決して偶然ではない。
「ただし、決してお安くはありませんよ。前金で五千万円、呪殺成功後、成功報酬として追加で一億円いただきます。よろしいですね?」
「はい、問題ありません」
「では、この者について――呪殺の標的であるボナパルトス・シェアーズ・ジュニアに関して、詳細をもっと詳しく教えてください。年齢や性別、身長、体重、それに現在の居場所や、もし可能であれば、この者の身体の一部を手に入れてください。毛髪でも爪でも構いません。もしあれば、より強い力で呪い殺せますので」
「はい、わかりました。彼は現在、我が一族が所有する帝都ホテルに滞在しておりますので、少し時間をいただければ、必ず入手してきます」
そう言って男は舞香の元を後にした。何度も何度も頭を下げて、繰り返し繰り返し礼を述べながら。
 そして「斎藤和氏」を名乗った黒づくめの男が去ってから二十四時間後、舞香の元に保守党幹事長西沢文雄名義で荷物が届いた。その中には札束の塊が五つと、ボナパルトス・シェアーズ・ジュニアに関する詳細な資料の束、そして、硬質プラスチックケースの中に厳重に封印された金糸のような毛髪が入っていたのだった・・・・・・。


追伸
また近いうちに、ポートフォリオを公開したいと思います。マイナスのパーセントだけが増えているやつですが(;'∀')

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