ぶるがり屋 2021/10/31 22:53

青天を衝け 33話 の感想

青天を衝け 33話
「論語と算盤」の感想です。

青天を衝け | NHKオンデマンド
大森美香
2021/2/14〜
(C)NHK

青天を衝け

 積み重ねが…重い!
死が軽い…儚い!

激動の時代を重ねて、「新しい時代」の産みの苦しみが長いなぁ。
江戸から明治へパッと変わったので無く、一歩一歩苦しみながら変わったのだと。
その時代に生きる人の営みが、瞬くように消え生まれていくのだと。
胸がキュッとなりシーンの多いですよ……
 やすさんの慟哭、慶喜の背中。
三野村利左衛門、西郷隆盛と大久保利通の、死。

 ああ、小野組も辛かった…
義理と金、国の未来と心通じた者たち。
それは政府と何が違うのか。
乱世を、多くの苦難と犠牲の上に乗り越えた先、閉ざされた未来。
…辛い。

 とは言え、多くの犠牲と過ちを背に負ってるのも事実だけど、絶対人生で一番謳歌してるよね、慶喜(笑
あふれる才能の輝きは、慶喜の意思と関係ない見方と敵ばっかり作って。
争いと断絶の種にばかりなっていたからなぁ…
権力が無い今が、一番。
 あと「自分がつまらない」を相手に察知させるのはズルいと思いますよ!もう!(笑

 先週の予告で、大久保利通は懇願をしている体でも、「自分が有利な状態下で、弱みを見せられないんだろうなぁ」と思っていたのですが、存外、期待以上のものを見せられました。
 五代に諭されて、それでも虚勢を張ったまま頼って、弱さを見せ切れない不器用さ。
でも目が、弱くへなへなで。
子犬みたいな眼差しで。
笑って「おかしれぇ、やってやりましょう」と受け入れちゃう栄一…
萌える!

 「10年越しの俺たちの横浜焼き討ち」は期待していたより小規模なものでしたが、まだ資本主義も国家経営も未熟な日本がもがきながらに進む、その現れなのですよね。
10年前は何も分からないまま失ったけど、失った今だから進もうとする未来。
仲間だけで銃と刃で壊すのでは無く、考えも立場も違う多くの者と協力し、経済政策で挑む。

 でもそんな、栄一との協力も、五代との優しい囲碁の手合いも、終わりは一瞬で。
 新聞で流れる西郷隆盛の死、敵商の反応で描かれる大久保利通の死、戦費で描かれる西南戦争。
残酷。

 だけど木戸孝允の死、全く描かれてなかったような…
こっちの方がヒドいよ!(笑

 ちょっと話が変わりますが、うちの両親が結構な年齢なので、偉人の名前を有職読み(音読み)するのです。
おかげで徳川慶喜を話すと混乱するし、木戸孝允は今日までずっと「こういん」だと思ってました(笑
文化の変化は早いなぁ。
面白いけど困る。

 今回も新聞が言論が、貨幣が金融が資本が、新しい時代になってしまった。
栄一たちがした。

 新しい時代まで生きられなかった小栗忠順、真田範之助、長七郎、平九郎。
多くの同志たちの名が重く、また新しい時代もまた重い、重過ぎる。
今でも真田範之助の最後の別れの時の、壊れそうな表情を覚えています。

 今までと同じく過去の積み重ね、失ってきたものとこれからを生きること。
新しい時代を生き、作ること。
そして今回は、その先への道程が描かれたように感じます。
 三英傑は亡く、経済の先導者は、自分。
壊してしまった古い時代の理想を、新しい時代に打ち立てる責任は。
今まで死んだ者たちを背負い、今目の前の子供立ちのために。

 ただ今回はそれ以外に気づかされてしまいました。
憎々しい相手でも心通うものがあると見せられて。
また時が経てば、そして激動の時代ならなおさら、
「大事な人を失い続ける」という事実が分かってしまって、それがとても重くて辛いです。
 当たり前も当たり前ですが、人はどんどん死んでいくのですよね……
時代の必然でなく、次の時代の礎でなくとも、愛する人が、大事な人が。

 次回、『栄一と伝説の商人』
私はド左翼なので、もちろん労働者も経済弱者も重視する栄一の方が賛成ですが、岩崎弥太郎の半生を思うと、彼が徹底的な実力主義・無能蔑視は当然なのですよね…。
 経済、人の考えが誰より見えるのに、誰よりも踏み潰されてきた。
媚び諂い才能のみでのし上がった。
その半生を思うと、少し涙が滲みます。
(創作的なもので、もちろん史実でははるかに複雑だと思いますが)

 裕福で、同志にも仲間にも主君にも愛され期待され人の上に立ち続けてきた栄一と、極貧で、利用され下に立たされ続けてきた弥太郎。
封建主義の身分差別を憎み、才覚によって身を立てた2人は、いかに戦い、そして心通うのか。
今まで見せてくれたこのドラマだからこそ、とても楽しみです。

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