時 自若 2022/11/11 08:02

今生のローダンセ 第13話「触手駆除業は儲かるんよ」

ブチリと切れた音がした。
「どうした?」
「いえ…すいません、確認してもよろしいですか?」
「ああ」
急いで彼女は電話をする。
「…そうでしたか、嫌な予感というわけではありませんが、それで…なのですね」
義実家らしい。
明らかに電話が終わった後にシュンとしていた。
悲しみをこらえているのだろう。
「どうしたんだ?パフェ食べたいからそれ食べながらでいいか?」
「普通のサイズならばいいと思います」
「お前がいない悲しみを甘いもので埋めていたからな」
そして思い出して泣くコース。
「ええっとですね、私の背負っている業は人では切れないのは知っているとは思いますが」
死という形で難をそこで切っても全部は切れても、新しくからめられる可能性もあるし、それこそ何もない状態に近いので、色んなところから絡まれやすくなる。
「あぁ、それは痛いほど」
「うちの義兄弟が今関わっている仕事で、死傷者が出ましてね」
「それはお悔やみを申し上げなければ」
「ええ、それで兄弟以外にも出たのですが、その方がどうもついでに今絡まれそうな業かな、新しいやつ、それブッチブチに切ってくれたらしいんですよ」
ブッチブチだったから、本人にもわかるそうだ。
「それこそ地味に徳を積んでいたりして自分でハズシやすい状態にしても、自分でははずせないところがあるものですからね、わざわざお切りになってから、こちらからお発ちにならなくても良かったのに」
「そいつはお前のこと好きだったのかもな」
「はあ?」
「とりあえず嫌いなやつにはしないさ、それか死した時に、その絡み付くものが見えたから、ほら、窓から見える蔦あるじゃん、色が変わっている、あれをベリベリって剥がしてから、来年は業者に頼んでねみたいな」
「業者が存在するのかな?っていう蔦なんですがね、これは」
「触手駆除業みたいなもんか」
「触手駆除業、ありましたね」
元々は触手採集を目的にしていた。
「今、チェーンとかも出来てるし、他の会社も参入してるよ」
「繁盛してる!」
肛門に優しい触手を探すという使命から始まった触手採集、しかし、触手というのはあまり一般社会では受け入れられず、むしろ嫌われもの。
だが世の中が荒れてくると、隙間からそっと生えている触手も、範囲を広げて、特に空き家などに生えたりするので、許可を得て立ち入った業者などが、人の味を覚えた触手を発見し、駆除となる。
「エアコンのクリーニング兼触手駆除、兼業でやるところも多いな」
触手は駆除したら魚拓ならぬ、触手拓を取ったり、現物がコレクターに引き取られる場合もあるので、結構美味しいという。
「世の中には色んな商売があるものね」
「そうだな、俺毎年、お前との記念日に、絵を描いてもらってたもん、一年づつ年を重ねた注文でさ」
パフェ食べながらさらっという。
「…それはまた結構来てましたね」
「来てたよ、まあ、目の前にお前が言うから言うけどもさ、そういうどうしようもない部分を埋めてくれる商売があって、こっちの世界でお金稼いだらさ、結構費やしていたよ」
「貯金どうしていたんですか」
「あんまり残ってないか、すまんな」
「いいえ、別にあなたのお金ですし」
「ごめんなさい」
「そこまでやる気無くすぐらいだったんですか」
「そうだよ、それだけ大きかった、だから顔を見に来たって、再会したときにいったじゃん、ああ、信じて良かったとは思ったな、なんというか、俺が嫌なことはしないというか、しかも他の時間軸では俺との子を作っていたりもするし」
「だいたいそこじゃあなたの方が亡くなっていたりしますからね」
「それでもなんで、その受け入れたのさ、死の予感でもあったの?」
「ないですよ、それこそ、私の業のせいもあるのでしょうよ」
「俺が呪われると?」
「いえ、そうではありませんでしたね、…いえ、そうではないと断言はしますが、あなたが向こうで死んだ話は、それこそ、連絡一つですよ、お亡くなりになりましたって」
「戦って死んだ?」
「そういう時もあるし、守って死んだ時もあるし、まあ、剣やら何やら振り回しているお仕事ですからね、いつそうなっても、あら、そういえばそちらでは若庭組はいませんでしたね」
「?分岐点が違うのか」
「確かに、薔薇病は流行していたはずです、でもそれに伴っての入れ換えは、ええっとあなたとの子供たちが剣を習うときに、あなたの流派は選ばなかったはずですよ」
「それは…ちょっと残念だ」
「代わりに指南する方がそれぞれいたような感じなので、全員流派が違っていた感じですね」
「娘とは話したのだがな」
「あああの世界だと、今の時間であなたが死に、娘一人でもう嫁にいく話が出てますね」
「早くない?もう相手いるの?パパどうすればいい」
「生存している世界ではあなたと娘婿さん仲いいんですけどもね」
父親がいないので、武術の先生と嫁2の父がその代わり。
「嫁2」
「ああ、今のところ娘を含めて二人」
「そ、それは幸せなのか」
自分が一人なのでハーレムの気持ちがあんまりわからない。
「嫁1子ちゃんと仲いいですよ」
その世界の彼女は、二人とも娘なのでの姿勢を崩さない。
「その子もあなたとの子もみんな強かったですね、そういう意味では私の血やネガティブが影響でなくて良かったなって思いました」
出そうだったために他の人たちの力を借りたとも言える。
「そっちの世界では幸せか?」
「まあ、でもあなたがいませんとね、こうして話す相手は向こうではいませんでしたから、ほら娘たちは、旦那さんいますから」
「良かった、これでいなくてもやっていけるとか思われたら、落ち込んでいるところだった」
「あなたは十分、私の運命を曲げた存在ですよ」
「もっと好きって言われたいな」
「頑張ってください」
そこで感情もなく言われるので、M心がブルッと来た。

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