時 自若 2022/11/13 20:37

今生のローダンセ 第18話 山の獣も騒いでいた

「すいません、わざわざ来てもらって」
魔法使い案件なので、近くにいると召集はくるのだが、義務ではないから、どうしても顔を出すのは決まってくる。
「はい、それでは簡単になのですが」
この先に1400年代、中世の城があるそうで。
「ダンジョンだと思われます」
どこぞの誰かが作ったが、その主は1400年代の生まれか、趣味の持ち主であろう。
「それで、攻略に挑んでいるかたがもう先に進んでいるのですが、もしものことも考えてお呼びいたしたわけで」
「挑戦している人はどういう?」
「ベテランですね、何個もクリア、潰している、先日オークションで茶器が話題になりましたよね?あの人です」
「ああ」
茶器というのは200年前のティーセットで、表側のオークションに出されたので知名度は高いが、出品者は魔法使い側の人間であった。
「買う人は買いますからね」
「あのニュースのせいか、古城ともなると、素人が度胸試しか、一攫千金かで集まってきちゃって」
それで攻略を急ぎたいらしい。
「お金にはなりますからね」
彼女も食えるからこそ、こちらの世界に来た口でもある。
「成功するばかりが人生ではないでしょ」
「…それは確かに」
ちょっと驚いてしまった。
こういうところだと、町おこしなどがどうだとかで、攻略が進まないものなのだが、なかなかどうして悪くはない。
(もしもなんかあったら、義実家に連絡して人員頼むか)
とまで考えるほど、好感度は高い台詞であった。
『ギャァァァァァァ』
そこに絶叫が聞こえた。
ズバァァァン!
雷が落ちたかのような音、
「後ろへ」
彼女が前に出る。
何かが飛んでくるので、盾を張る。
ベチっ
ベチベチベチ
「あわあわあわ」
何の音ですかといいたいのだろうが、それが後ろに隠れた人からは言葉が出てこない。
(音も本当は消したいんだけども)
彼女には何が起こっているのか見えているし、悪臭が立ち込めているのもわかっていた。
それを一般人には見えないように、嗅がせないように調整はしていたものの、音まで消すと守りの外に出てしまうので、それだけは残していたのだ。
ブチャ
潰れたその音で雨は終わった。
(幻はかけたままの方がいいわね)
確実に焼き付くであろう光景である。
「とりあえず連絡を、手慣れた人に代わってもらった方がこれはよろしいですよ」
「そ、そうですね、ではさっそく」
何も知らないで、手慣れた人間と交代ということになった。
「それでは説明をお願いしますか?」
「わかりました、魔法は解いても」
「はい、周囲に漏れないように結界を貼りましたから」
話が終盤に差し掛かると。
「あっ、魔法を使っても?」
「構いません」
彼女の方がそれを直視することが辛くなり、魔法の使用許可をとった。
ここは地獄か、もしくは冥府に繋がっているのだろう。
そのような光景は広がり、山の獣も騒いでいた。

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