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2022年 03月の記事 (24)

有坂総一郎 2022/03/08 18:00

国家の設定

国家の設定

中央集権か封建体制か、ここで国家の軍事力や外交のそれが大きく違ってくる。

例えば、帝国規模の国家があるとする。

その帝国は封建主義で皇帝直轄領の他、皇帝家の分家である大公国(王国)や地方領主の公爵領などが遍在しているとする。

その場合、総合国力では確かに相当なモノになるかも知れないが、皇帝軍、王国軍、領邦軍とその指揮系統はバラバラであり、当然、麾下の騎士や兵達の忠誠は直属の各領主へ向く。

となれば、いくら総兵力が10万規模であっても、その実態は10万の烏合の衆である。

しかし、それが中央集権であり、皇帝若しくは中央政府が直轄する国軍であった場合、指揮系統は一本化していることで総兵力が仮に5万であっても、その兵力を中央が適切に運用することが可能である。

実際の例で見ればドイツ第二帝国が前者であり、大日本帝国が後者であると比定出来る。

ドイツ第二帝国は確かに総合国力では大英帝国に比肩するほどにまで成長していたが、その内政は各領邦バラバラであり、軍隊も鉄道もそれぞれ各領邦に属していたこともあり、規格統一が出来ていたとはとても言えない状態だった。

そして、同様に国内に民族問題を抱えいたオーストリア=ハンガリー帝国の場合は更に頭が痛い状態であった。

アウグスライヒで国内第二勢力であったハンガリー(マジャール人)と妥協することで少数民族を押さえ込むことで国家の存続を図ったものであるが、当然、その結果は時流に逆らう形での中央集権から分権であったため、後に帝国の分裂へと繋がっていく。

また、大日本帝国の場合は二次大戦の敗戦によって日本国への衣替えすることで実質存続を図っているが、一貫して継続した形で中央集権を維持している。もっとも、その弊害として地方自治体の中央への依存という問題を引き起こしているが、国民国家という概念を考えれば、大きな政府による指導という恩恵を得ていると言える。

では、その中央集権はどういう経緯で進むのか?

1,貴族の弱体化
2,騎士の弱体化
3,経済圏の拡大による大商人の勃興
4,植民地及び海外領土からの資源の調達
5,宗教勢力の弱体化

1は大規模貴族の没落によって発生し、2は銃火器の発展により騎士の戦力価値の低下による。

3はインフラ整備や船舶の航海性能や遠洋航海が可能になったことで、商人が広域商圏で活動するようになり、希少な産品や地域間の価格差で富を得るようになった。

4は3が更に進むとともに旧大陸での国家間戦争よりも(欧州視点で)劣等種族を相手とした戦争や余剰人口の海外植民が行われ、奴○による安価に産品を得ることが出来、本国に持ち込むことで巨利を得ることになった。

5は旧大陸における戦争を裏で煽っていた教会勢力が宗教改革などによって没落していったことで相対的に王の権威が上回った。

となると、作中世界において中央集権を進める国家で出現するトリガーは王権の拡大を狙う存在の登場、そしてその条件である宗教勢力との決別、貴族特権の制限などを起こすことである。

このあたりは割と小説上でもいろいろな形で実施されたり、既に実行済みだったりしているからよく見かける。

主人公がそれを行うにあっては必ず誰か協力者を必要とし、その立役者は粛清するか明確に臣下の礼を取ることになる。そうでなければ、後年に反乱の火種になる。これも割とよく見かける仕掛けだろう。

また、王国スタートであれば、中央集権化を進めつつ富国強兵を図るというストーリーが一般的であるだろうし、帝国スタートであるならば、既存勢力を粛清するために反乱を促すシナリオや直轄領の富国強兵を進め決定的な力関係をつくった上で恭順を求めるというシナリオも考えられるだろう。

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有坂総一郎 2022/03/07 00:00

帝国と皇国と王国と公国とあと共和国

一般的にナーロッパ的小説における舞台は王国であることが多い。対して、敵やライバルには帝国が多い。

まぁ、その理由はその殆どが帝国という名称へのイメージによるモノだと思う。

一般的に帝国と言えば、枕詞に「悪の」が付くことが多い。また、強大な国家=帝国というイメージがある。スターウォーズでは帝国はその両方で語られるからこそ、物語が盛り上がるわけだ。まぁ、私はスターウォーズなんて見たことないがな。

また、帝国には有能かつ豊富な人材が存在し、それが故に国力の差を示す象徴になっている。

けれど、逆に王国という存在はどうかと聞かれたら、「弱小」「衰退」「小国」「滅亡寸前」というイメージが付いていることが多いと答えるべきだろう。また、対比して「善」「正義」という印象があるとも言えるだろう。

つまり、一種のテンプレートによって使い分けされていることになる。

では、皇国とか公国はどうかと言えば、前者は帝国の「悪」イメージを多少減じた感じに見えるそれで、後者は分離独立若しくは反乱による独立というイメージが付いているように思える。ジオン公国によってそのイメージが付いているような気がする。従って、軍事国家であったりその国力が歪であったりすることが多い。

以上を踏まえて主人公サイドにとってプラスのイメージをつける意図では王国を称することが望ましいと言えるだろう。まぁ、王国スタートで帝国に発展するそれも中にはあるわけだが。

逆に帝国スタートの主人公の場合、星界シリーズや銀英伝とかが有名であろう。これらの場合、帝国の王女(→皇太女)と伯爵公子(→伯爵)が宇宙戦争を二人三脚で戦い抜くそれであったり、野心あふれる伯爵提督が内外の敵との抗争を経て下剋上を果たすそれであったりして、最初から元首スタートではないのは共通している。

流石に皇帝スタートではスタート時の与えられる権力が大き過ぎて面白くないというそれがあるのは間違いないだろう。

あと、共和国。

これ、個人的に面白くない。デモクラシーで成り上がる奴なんて基本的にはポピュリストであって個人的にこんなロクデナシが主人公などと言うのは許せない。むしろ、こういう輩を葬ることこそ帝国や王国に課せられた義務だとすら思っている。

そして、飛躍することはほぼ無い。議会制なんて小説においては「なにもしない」「なにもできない」の代名詞。そんな存在は戦乱の世ではまな板の鯉でしかない。

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有坂総一郎 2022/03/05 00:00

見通せない闇の中にある「このはと」世界

見通せない闇の中にある「このはと」世界
「このはと」世界の36年。

モスクワにおける日ソ交渉、米ソのオホーツク会談。
列強海軍の戦艦建艦競争再開。
米帝様の超重爆開発促進。
ドイツ国内の政軍の方向性の不一致。
シナ大陸での大躍進政策、それに対する米帝の方針。
ローマ帝国の夢を邁進するドゥーチェ。

考えられること、指導者達がどう判断するか、それらに最適であると思われる可能性を選び取って執筆してきたのだけれども、未だ一寸先は闇。

誰かが自重すれば、誰かが出し抜こうとする世界。

日ソが妥結するにしても妥協点はどこか。オホーツク会談をどこまで米ソが遵守するか。
史実よりも経済復興が進んでいない米帝が限られた予算でどこまで軍拡を出来るか。
ドイツの方針がグダっているその両隣で赤化の危機とコメコンによる鉄のカーテン。
ハプスブルク家再登板による中東欧の統合とその行き先。
英仏を刺激すること間違いなしのドゥーチェのアビシニア侵攻計画。
支那への介入は米帝にとっても泥沼へ脚を踏み込むそれだが、デラノ家の野望は捨てられない。

全く、ままならない。どこをどう切り抜けたら破綻無く次の展開を見いだせるかが全く見通せない・・・・・・。

困ったなぁ。

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有坂総一郎 2022/03/04 14:30

娯楽と税収外収入

古代ローマ帝国では娯楽が国家安定のために大きな役割を果たした。

そう、パンとサーカスという奴だ。

1500~1700年頃を規準に話を作るとすれば、この時期で最もカネを掛けずに手持ちの資産で運用可能な娯楽は二つ。

御前試合と競馬だろう。

前者に関しては個人競技であるから各領邦(貴族領地)代表というそれで良いだろうし、場合によっては富士総合火力演習みたいな形でのものでも良いだろう。派手であればあるほど国民士気を向上させるし、観覧券の収益も上がるし、それを目当てに集まる群衆への露天商の売り上げから場所代と消費税を調達可能になるだろう。

ただ、これは定期的に行うにしても総火演モドキの場合は広大な演習場を必要とするし、一度に使う弾薬兵糧が大きな負担になる。まぁ、それでも収支がプラスになれば良いのであるが。

また、観客動員能力という点で、間違いなくインフラ強化が必要になるだろう。中央政府軍だけでなく領邦軍も参加となれば、その移動に耐えうる交通網の整備は必須であるし、また地方からの観客の集客に耐えうる旅館の充実が不可欠だ。

よって、これは大量輸送手段たる鉄道がないと難しいと言わざるを得ない。

御前試合の発展でのそれであっても、軍部隊の移動はなくとも、闘技場や観客収容能力が必要になるのは変わらない。まぁ、かかるコストは比べるまでもなく低負担であるが。ただし、リターンも少ないと言わざるを得ない。

しかし、総火演モドキの場合は、高コストであっても、リターンは非常に大きい。観客による経済活動の恩恵は大きいし、何より、定期的に実戦形式の訓練を観客のカネで賄えるのだから国防予算の助けにもなる。

次に競馬だ。

競馬の場合、用意すべきは馬場と競走馬数十頭だ。この程度は近衛軍/禁軍/政府軍が常備しているものであるから初期投資はほぼゼロだろう。

第一回開催こそ賞金は持ち出しになるだろうが、第二回以後については掛け金によって賄えるであろうから、定期的に開催してその掛け金からの収益を国庫へ還元して税収外収入を増やすという策だ。

ローコスト・ハイリターンである。

恐らく、各領主なども似たようなことを始めそうだから、国営事業として主要直轄都市においてのみ開催することで各領主の懐が温かくならないようにする必要があるだろう。

また、農閑期に輓曳(ばんえい)競馬を実施させることで地方農村の農業外収益を出すようにするというのもアリだろう。

この競馬政策の目論見は二つある。

中央競馬の場合、軍馬量産と品種改良。地方競馬の場合、輓馬の普及と品種改良。どちらも軍事力や農業生産力の拡大に寄与する。これは史実に倣った形での馬匹の発展を目論んだものである。

まぁ、騎兵戦力がどこまで有効であるかは微妙なのだが、それでも、自動車やそれに相当する輸送能力がないのであれば、一番リスクがなく、効率が良い手段が馬であるのは間違いない。

それに軍部と農村の支持を得やすいから実施のハードルが著しく低く、やろうと思えば即日実施可能であることが最大の利点であり、関係者にとってデメリットがない。まぁ、あるとしても賭け金を失う側くらいなモノだ。そんなのは自己責任だ。

また、これも集客力が大きいから経済活動の起爆剤になるしね。

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有坂総一郎 2022/03/03 16:00

通信と交通

通信と交通

さて、丁度ウクライナ戦役で補給不足になって云々と話題になっているのだが、そら短期決戦で使う戦力及び兵站と長期戦で使うそれでは違うだろうさ。

巷で言われている通りに、ウクライナの善戦で長期化したのかは正直どうか解らんが、なにせウクライナや西側の大本営発表ばっかりで客観的なそれがないから判断のしようが無い。

ただ、確実なのはウクライナの善戦云々は抜きにしても短期決戦から長期戦にステージが変わったと言うことだ。そのステージが変わったことで補給兵站に支障が出始めたのは事実であろうということだけが信用出来るモノである。

そして本題、通信に関しては別に検証していた通りで、主人公サイドにアドバンテージを与えることになるが、次に重要なのは交通だ。

「現国」では、禁軍の土系魔法のそれを動員して土木工事にあたることで建機代わりに道路の拡張と道床の強化を行っていた。これは主として交通網の整備によって流通を強化、物品とくに食料品の流通コストの低下による市場価格適正化を狙ったものであり、作中でも触れられている。

史実において、道路行政を重視した戦国大名として有名なのは武田信玄が挙げられる。

棒道と称されるそれは甲斐本国から信濃へ向けての主要侵攻ルートとして整備がされていた。現在でも上の棒道、中の棒道、下の棒道の三筋が残されている。

まぁ、武田家の事情による部分も大きかっただろうが、その道路行政は非常に効果的であり、上杉謙信が苦労して山越えして川中島にたどり着くのに対して、距離が倍も離れている武田信玄はそれほど苦労せずに川中島に布陣出来ていたことからその効果がうかがえる。

そして史実の日本は馬車が存在しなかったが、欧州は馬車運用であった。馬車運用する上で道路行政は武田信玄以上に取り組まないといけないことになる。

定時性の確保や重量物輸送、高速運行を考えると舗装は必須になる。そしてそれを支えるためには道床の強化が必要になる。

また、製鉄が大規模化すれば、鉄道馬車が運行されるようになり、蒸気機関が実用化出来たら真っ先に蒸気機関車による鉄道運行とその後に続く発展のことも考えるとこれらは非常に重要な公共事業になる。

まして、不況により職にあぶれるというのが日常茶飯事のナーロッパ世界のご都合を考えると公共事業の重要性は史実を上回るだろう。それは文字通り景気回復、経済活性化の起爆剤になるからだ。

ここまで来たら国土が多少小さくとも産業ベースで優位に立てるから富国強兵は軌道に乗ったも同然だろう。

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