赤羽決亭@木東有稀 2020/10/14 21:09

フシギナパラダイス1話:〜不思議な道〜3/9

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あれから数分

結局その後、私は特に何も言及せず3人の決定に従ってその後ろについて歩いた。
でも…歩けば歩くほど違和感しかない。
今どの辺りに自分がいるかも把握できていないのだ。

私は前を歩く3人を見る。
なんか必死になって話しているので、何かと思って耳を傾けると

「今年もさ、4人とも同じクラスだったら10年連続?ちょっとした記録よね」

「10年は3人の場合だろ?…まぁそれはいいとして
今までは2クラスだったかけど、今回は6クラスだぞ?
全員一緒は無理だって、てかもう俺はいい加減クラス別がいい」

「何よつれないわね…心矢だって、記録チャレンジしたいわよね?」

「んー…気持ちとしてはともかく現実的に難しいんじゃないの?
洋太が計算してそう言ってるならなおさらさ」

やっぱり誰も疑問に思ってる様子はない
もう会話は道のことや私の怪我のことじゃなく、この後のクラス替えの話で盛り上がっている。

私の気にしすぎ?
それとも頭打って記憶が混乱してる?

でも…それだけじゃ説明ができない。昨日今日だけの話じゃない。

私だって、この町に住んで長い、四捨五入したら10年くらいは経つ。

そもそも、うちの中学までは位置的にどうしても遠回りになってしまうというのは周知の事実で
話題のタネになってたレベル。

だから、こんなわかりやすい場所に近道があるのなら、もっと早くに知られてなきゃおかしい。
なのになるちゃんと洋太は、疑問に思わなかっただけで、道のこと自体は今日初めて知った様子だった。

だから本当であれば存在なんかするはずがないのだ。
でも、実際には存在して…私はここを歩いていて…
じゃあここは一体…

「二人で賭け始めたんだから二人でやりなよ!僕は関係ない!」

「何よ、つれないわね…いいじゃない二人でやってもつまんないわよ。」

「絶対ヤダ」

一人で悶々と謎解きをしていると、前の3人の会話が一層にぎやかになった。
よくわからないけどなんかいつの間にかクラス替えの話から賭けの話までに発展している。
なぜそんなことになったのかはわからないけど、まあ楽しそうで何よりだ。
心矢はイヤイヤと頭を抱えながら首を横にブンブンと振っている。

そんな様子を見て洋太は心矢をなだめる

「まぁ、別に無理強いはしないけど
でも、なるの提案にしては比較的フェアだぞ?」

「やだって!絶対なんか企んでる!」

「どうせ4人全員おんなじクラスなんて無理だって、
不安ならそこの神社で神頼みしたら、安心かもしれないぞ?」

「え…」

私はその会話を聞いて、顔を上げた、
確かにすぐ近くに神社があった。小さかったけれど、結構立派だった。

でも、私はそれをみた瞬間…私はサッと血の気が引いた。
いよいよ話がおかしくなってきた。

「ルイちゃん?どうしたの…そんなに青ざめて…」

私の顔色が悪くなったことに気がついて、なるちゃんは私に声をかけてきた。
あまりにも自分の記憶と目の前の光景が違いすぎて、頭が混乱して、爆発寸前だった
だから、私はついに疑問を口に出した

「ねえ…神社なんて…この辺りにあった?」

だって…この辺に神社なんかないはずないのだから。
うちから一番近い神社でも、あるのは中学の向こう側
つまり通学中に通る場所に神社はない。
だから、ありえない…なのにそんな私の声に誰も賛同してはくれなかった。

「ルイちゃん…どうしたのよ…突然そんなこといいだして…」

「だって、だってやっぱりおかしいよ。
この神社のこともだけど、この道だって…昨日までなかったじゃん。
あったなら、もっと前から知ってるはずだし」

「ルイ、本当にどうしちゃったのさ…やっぱ頭打って記憶混乱して…」

「違うって…だって、ここにこんな道がなかったことだけははっきり覚えてる
心矢だって…なるちゃんだって、昨日一緒に確認したじゃん!」


なるちゃんと心矢は私の言い分を聞いて困惑したかのように顔を見合わせた。
まるで、おかしなことを言ってるのは私と言っているかのように。
ただ、何をどう言っていいのか悩んでいるみたいだった
その様子に見かねたのか洋太は

「でも、あるもんはあるんだからしょうがないだろ…」

人事も生えてくるわけじゃあるまいし…とそう言葉を付け足して私に言った。
一瞬反論したくはなった、でも言われてみたらその通りだった。
どんなに記憶の中と現実が違おうとも、現に私はなかったはずのその道を通って
神社までやってきた。
その事実は変えられない…じゃあ…間違ってるのは…私なのかな…

「とりあえず、早く行きましょう。
長居すると、せっかくの近道なのに意味なくなっちゃうわ。」

私がうつむいて悶々と考えていると、なるちゃんはそう私に声をかけた。
そして3人はその言葉を合図にまた歩き始めた。

私はもう一度神社の方を向きなおす

そっか…知らなかっただけで、神社この近所にあったんだ…
そうだよね…別に住んでるからって隅々まで知ってるわけじゃないし
知らないことあったって…不思議じゃないよね。

そう自分に言い聞かせて自分も一歩前に足を踏み出そうとしたそのとき、
鳥居の奥の方から、パタパタと足音が聞こえてきた。
なんだろうと思って振り向くと

「うわっ!」

誰かとぶつかった私は思いっきり地面に尻餅をついて転んでしまった。


「イタタ…な…なんなの?」

起き上がってみると、そこには見知らぬ…子供が覆いかぶさっていた…
不思議な格好をした金髪の…顔が見えないけど、多分男の子…
この神社の子だろうか…でも神社の関係者で金髪…

「ルイ、大丈夫か?」

遠くの方から名前を呼ばれた。
私はその声にハッとして「大丈夫〜」と返事して、男の子に視線を向けた

「ごめんね、ぼく大丈夫?怪我してない?」

私は男の子に手を差し伸べると、

「すいません」

と言って、男の子は私の手を取った。
そのとき、手の中に皮膚ではない何かが触れた
それが何か考える間も無く、男の子はその場を走り去ってしまった

「え、あ、ちょっとぼく!?」

私は焦ってその子を呼び止める
怪我してないか心配だったのもあるけど、
私の手の中には、先ほど触れた男の子の忘れ物が残されていたからだ。
でも変えそうにも、男の子の姿はあっという間に見えなくなってしまった。

どうしようと途方にくれる私は、掌を開いてそれがなんだったのか確認した。
それは…勾玉だった。

「ルイ、本当に大丈夫か?」

いつの間にか近くまで来てた洋太にハッとする。
心配かけてしまったらしい。

「ごめん、なんでもない。大丈夫」

私はそういうと、勾玉をもう一度握りしめて、今度こそ学校に向かって歩みを進めた


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そこから少し離れた場所で、彼らを見守る影があった。
「どうだった?」

結果がきになるそれは、彼にそう尋ねる。

「ひとまず準備はできました、後は結果を待つだけです。」

「一致しそうか?」

「おそらく、まちがいないかと」

「…」

それは、彼の答えに少し不服そうな態度を示した。
その様子に彼は小さくため息をつく

「まだ、あの件について心配されているのですか?」

「仕方ないだろう…歴代よりも年齢が幼い
いつも年齢は大体同じだったのに…本当にそうなのか?信じられない」

「それは、前にも説明したじゃないですか。
諸事情で時期が早まったって…それにその事情を抜きにしても誤差にすぎません。
それに、年齢に何か問題あります?」

「…」

そう聞くと、それは少しの間黙った。
確かに、「そう」であるなら、年齢など関係ないのだ。
しかし、それがそこまで心配するのには、少し訳があった。
今回はそれまでと違い「異例」があまりにも多い。
だからこそ、何か間違いがあるわけにはいかなかった
間違いがあった場合、これまで以上に問題になり得るからだ。

「…今回の*****には…辛い役目を負わせることになるな…」

「…確かに心は痛みます、しかしこればかりは初めから決まっていたこと
…それがたまたま……………だっただけ、それだけです。」

「…お前は平気か?」

それは、彼を見る。
もともと、これは本来彼の仕事ではない。
彼は今、代理として、危険で…重い任務を引き受け、ここにいる。
だから、慣れていない任務に躊躇しているのではないかと思ったのだ。
しかし予想とは裏腹に、彼は真剣な顔でこういう。

「何かを守るために、多少の犠牲はやむを得ません
誰かがやるべき役目がぼくに回ってきた…それだけの話です。」

その瞳から…決意と覚悟が伝わった。
だから

「…最後の最後で…押し付けてすまない。」

そう、静かに彼に告げた。
彼は、パッと笑顔になって

「何言ってるんですか、これも修行の一つですよ」

と、なんでもないかのようにそう言った。
だから「跡を頼む」とだけ伝えて、シュンッと姿を消した。

彼はそれがいなくなったのを確認すると、空を見上げてぽつりと呟いた。

「ええ、お任せください。責務は必ず」


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