赤羽決亭@木東有稀 2020/10/13 17:02

【ノベル】フシギナパラダイス1話:〜不思議な道〜2/9

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…耳をすませば、小鳥や鳩の鳴き声が聞こえた。

しかし、そんな清々しい音とは裏腹に、私の後頭部はズキズキと痛んだ。
ちょっと転んだだけだと思ってたけど…なかなかの衝撃だったらしい

…ん?

あれ?ちょっと待って?私…なんで後頭部が痛いの?
さっき、私こ飛んだ時にぶつけたの…おでこじゃ…

私はゆっくり目を開ける。

「あ…れ…?」


*気まぐれアフター様より画像素材拝借

目を開けると、そこには真っ青な空が広がっていた。
私は慌てて体を起こした。

青い空が広がっていて、おかしい事も困ることも別にない。
でも…今の私にとって、これはあまりにもありえない不思議な出来事だ

だって…ついさっき…どんなに長くても1 分前くらいまでは…夕方だったのだ。
赤い空が1分もしないうちに青空になるなんて、自然の摂理的にありえない…

それになるちゃんと心矢の二人の姿がない。
ついさっきまで見える範囲の場所にいたはずで…見捨てて行ったにしても
見えなくなるほど遠くに行く時間はない

場所は幸いにもさっきと同じ場所みたいだけど…

なんで場所以外のことがこんなに変わっているのか、
私は状況が把握できず困惑していると

「ルイちゃん!」

大きな声で自分の名前を呼ばれたかと思うとそのまま誰かに抱きつかれた。
その相手は…

「な…なるちゃん?」

「よかった〜無事で…」

「ぶ…無事?」

「怪我してない?頭とか打ってない?気分悪くなってない?」

そう聞きながら、私から体を引き剥がすと、今度は肩に手を置いて
ブンブンと体を揺すった。

頭打った可能性を危惧してるなら揺らさないで〜
というより、頭打ったことよりも頭揺らされてることで気持ち悪くなりそう
という、私の胸の内を伝えるのはこの状況では無理そうだ。

すると、パタパタともう一つ別の足音が聞こえてきた。

「ルイ〜!大丈夫〜!?なんかすごい威力だったけど」

どうやら心矢のようだ。
威力がどうとかいうのはよくわからないけど
とりあえず、二人ともどこかに行ったわけじゃなかったことに安堵した。

でも、その直後、私はあることに気がついた。

「あれ…二人とも…いつ私服から制服に着替えたの?」

「え?」

入学式前日の私たちが、プライベートで制服なんか切る必要はない。
だから当然、私たちは説明するまでもなく私服で買い物に出かけている。
なのに二人は制服にいつの間にか着替えている、なんの脈絡もなく。
だから私がこの質問をすることに何もおかしいことはない。

なのに、二人は困惑したかのように顔を見合わせた。
そして心矢が言葉を発した

「何言ってるのさ…自分だって制服着てるじゃん」

「え…!?」

そう言われて、私は自分の体を見回した。
心矢の言う通りだ。
さっきまで私服を着ていたはずなのに、いつの間にか制服に着替えている。
…でも…いつ?いつ着替えたの?私、着替えた記憶は…

「ルイちゃん…ちょっと…大丈夫?
今日入学式よ?制服着てるのは当たり前でしょ?」

なるちゃんは諭すように言ったその言葉に私はぎょっとした。

「ちょ、ちょっと待って、入学式は明日でしょ?」

「何言ってるのよ、入学式は今日よ?」

「だ…だって今夕方でしょ?」

「この青空のどこが夕方なのよ!」

私はなるちゃんに指で空を指され、その方向に顔を上げる。
憎たらしいくらいの青空は、私の記憶よりもなるちゃんの説明の方が正しいことを証明している。
でも…さっきまで間違いなく…だってあんなにはっきり重い荷物持ってた記憶が…

「おい、なる!自分のことくらい後始末してけよ!」

少し遅い足音と、目の前にいる二人以外の別の声が聞こえる。
その声に反応したなるちゃんは笑顔でその人物に手を振って

「遅かったじゃない洋太くん」

と声をかけた

「え?」

私はゆっくり振り返ると、そこにはよく知った顔があった…知った顔ではあるけれど…
彼がここにいるのはあまりにも不自然だ

だって、さっきまで一緒にいたのはなるちゃんと心矢、私を入れて3人だったはず…
なのにまるで最初から一緒にいたかのように違和感なく会話に混ざっている…
突然湧いて出たかのように現れているにも関わらずだ…

「お前…こんな重いのよく持てたな…ってか、これ当たったんならだいぶやばいだろ…
ルイ、お前ほんとに大丈夫か?」

「あの…それがね…」

「…んで?」

だから…たとえ心配してくれてたとしても、私のこの疑問を口にするのは
何も間違ってないと思う…と言うか、当然の疑問

「なんで洋太がここにいるの!?」

「は!?」

「だって…洋太が今、ここにいるわけないもん。
さっきまで、なるちゃんと心矢と3人で…」

私がそう言うと、目の前にいた心矢となるちゃんは不安が的中したかのように慌てだし
洋太は自分がなぜいないことにされているかに驚くと言う
三者三様…いや四者四様の混乱がここに生まれた。

その中で一番最初に落ち着いたのか、心矢は私の肩に手をポンと起き

「ルイ、ちょっと落ち着いてけって。
今日は朝、待ち合わせ場所で僕となると洋太とルイの4人で集合してから
ずっと一緒に行動してたでしょ?」

と私に説明してくれた。

「…」

「覚えてない?一緒に入学式行こうって約束して…」

「約束のことは覚えてるよ?でも…朝…?」

私はそう言うと黙って頭をフル回転させた。
でも、該当する記憶はどこにもない。
なんなら寝た記憶すらない。

その様子に、3人とも流石に私の状況を把握したらしい
そして3人とも、洋太が持っている白い箱に注目した。

「おい、これ想像以上にやばいんじゃねーの?
お前威力どうやって調整したんだよ」

「ちゃんと健康被害で内容にはしたのよ?
でも仕方ないじゃない、壊れて予想外の方から飛び出ちゃったんだもの」

「だからそう言う不具合なくしてから…ってかなんでこんなもん持ってきたんだよ!」

なるちゃんと洋太は、何かを察してか喧嘩が勃発してしまった。
話を聞いている限り、その白い箱こそが、私がこんな状態になってしまった原因らしい。

目の前で喧嘩されても、私自身状況把握ができないので
その場を収めて説明をしてもらうと、どうやらこう言うことらしい

さっきも説明したように、なるちゃんは機械を作ることが大好きだ
そのなるちゃんが、なぜか張り切ってびっくり箱を作ったらしい。
そのびっくり箱は、よくあるボクシンググローブのやつで
開けると攻撃を受けるらしい。
ちゃんと開ければ少し重いパンチくらいですむらしいんだけど、
心矢に試そうとした時に何かの拍子で壊れ別の場所からグローブが飛び出した…
想定していない場所とタイミングで飛び出したグローブは威力の制御ができていないまま飛びだして…
その飛び出した場所に私がいて、思いっきり飛ばされたらしい。

で…頭をぶつけた私は…

「…記憶喪失…ってこと?私が?」

「って…ことみたいね。」

「二人とルイの話を聞く限り、昨日の夕方から半日…ってところか?」

「で、でも半日でよかったわね、長期間だったらたいへ…」

「そう言う問題じゃないだろ、ちょっとは反省しろ」

「…ごめんなさい。」

洋太に怒られたなるちゃんはめちゃくちゃ責任を感じているらしく、
道端だと言うのにその場に正座してうなだれた。

「ルイどうする?病院行く?」

心矢は私を心配してそう提案する。
確かに、ちょっと心配ではあるけどあんまり実感ないし、
幸い消えた記憶も半日でそんなに困るレベルじゃない。
だから私は首を横に振って

「いいよ、そこまで大袈裟じゃないし…」

と断った。
しかしそれを聞いた洋太はこっちを向いて、少し渋い顔をしていった。

「けど、念の為行った方がいいんじゃねーの?
頭部を強打した時って、後から来るって言うし…」

「でもなぁ…ほんとにもう大丈夫だし…」

って言うか、ここで病院行ったら私入学式出られないじゃん。
この日を待ちに待ったのに、そんなの絶対ヤダ。

その意志を感じ取ったのか、それ以上誰も無理強いはしなかったけど
心配は拭えない様子。
何も覚えていないけど
本当にすごい勢いで頭をぶつけたらしいことを、その場の空気が教えてくれた。

すると、心矢が何かを思い出したかのように手をポンと打つと

「あ、じゃあ近道していこうよ、早く学校つけば万一のことあっても保健室で見てもらえるし」

といった。

確かに近道があるならそれに越したことはないし、早く学校について困ることはない。
でも、この辺りに学校への近道できるような道なんてあったっけ?

それはなるちゃんと洋太も気になったのだろう。
本当なのかとか、そんな場所あった?などと問いただしていた。
あまりにも信じてもらえないことに不貞腐れたのか

「ほんとだって!ほらあそこ!」

と怒りながらある場所を指差した。


そこで私は違和感を持った。

心矢が指を指している場所は、私の少し後ろあたり、
でもそこはさっき…じゃない、
昨日、みちびきこちゃんの案内する場所に「道がない」と話になった塀あたりだ。

だから道があるはずはない、そんなことはあの場にいた心矢も知ってるはずなのに…

そう思って私はゆっくり振り返って指を刺された方向を見た。

「え」

私はその場所を見て息を飲む

だって、さっきまで塀だったはずの場所に…細い道が現れていたからだ。
記憶間違いなんてことは絶対にない。
だって私は昨日のことを、文字通り「さっきのことのように覚えている」
だから、この場所に道がなかったことに間違いがないことは断言できる。

だから私はそれを口にしようとした…けど

「本当にここ、近道なの?」

と、なるちゃんは不服を口にした…でも…

「ほんとだって、この前見つけて試したし、間違いないよ!」

「でもねぇ…洋太くんならまだしも、心矢の話じゃねぇ…」

あくまでその道が「近道であるか」の心配はしても、「その道があることについて」の言及は心矢同様しなかった。
これはおかしい。

だって、二人は私と一緒にここに道なんか存在しないことを一緒に確認してた。
なのに…なんで?

「ルイちゃん?どうしたの?」

なるちゃんに声をかけられて我に戻る。
気がつくとこの道を通ることはいつの間にか3人の中で決定され
心矢と洋太はすでにその道を歩き始めていた。

まるで、そこに最初から道があったかのように、何も疑問に持たずに…


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