鎌倉殿の13人 26話 の感想
見逃し・同時配信 - 鎌倉殿の13人 - NHK
【作】三谷幸喜
【音楽】エバン・コール
【出演】小栗旬、新垣結衣、菅田将暉、小池栄子、片岡愛之助/坂東彌十郎、宮沢りえ、大泉洋、西田敏行 ほか
(C)NHK
鎌倉殿の13人
頼朝が死ぬ
源頼朝の手腕の元、かろうじて束ねられていた鎌倉。
頼朝の死を前に、皆が皆、得てしまった権力と立場を手に動き出す…
頼朝まだ生きてた!
前回のラストで死んだとばかり思ってしまっていました。
いやー不謹慎不謹慎。
愛し信頼する家族である、北条政子と義時との別れは前回終わっている、あれで良いと思っていましたが、さらにしっかりとした別れの言葉を交わせるのかー
とちょっと期待していたのですが。
権力とったるでー!なドタバタ群像喜劇の果てに、あまりに切なく痛々しい別れでした。
主人を振り捨て、鎌倉が暴れ始める
一代で日本を掌握した稀代の英傑、武士の棟梁。
もはや誰も止められない権力者が、死を前にして。
誰もが得てしまった権力をなくさず、もっともっと権力を求めて。
眠るままの頼朝に侍るのは、政子一人。
現実ではもっと色々な人が居たでしょうが、"頼朝個人"のために全てを捧げたのは、助からなくても最期まで供に居ようとしたのは、やはり政子だけだったのでしょう。
疲れ切った政子の乱れ髪が、美しく、悲しい。
暴風に呑まれる北条家
頼朝の死から生まれた暴風に、実衣ちゃんも、全成も、時政も呑まれてしまった。
ただそれは欲だけでなく、野望と責任感と、愛に呑まれてしまったように思います。
実衣は全成を愛し、政子姉を尊敬していた。
なのに全て否定された、また貶められ取り残された。
全成は、自分の不足を知り、恥じ、だからこそ愛してくれた実衣に、北条家に、報いたかった。
なのに結局北条家が壊れる鍵になってしまった。
時政は家族を愛した、家族だけ守れるなら、一番だった。
だからりくの言葉に乗り、家族からちょっとはみ出した頼朝よりもりくの為、北条家の繁栄の為に流れた。
政子が実衣を否定したのは、まずタイミングがダメダメでしたが(笑、勢いに乗せられた形で出来るものでない、重責を愛する妹にはさせられない、そういった愛が殆どだったと思います。
それでも、身も心も切り続ける重責が余人に出来る筈がないという誇り、妹が出来る筈がないという気持ちに、侮りがないとは言えないのです。
実衣はずっと、侮られ置いていかれ金魚の糞で、ずっとずっとそんな自分を超えたかったのに、最大の理解者だと思っていた姉に、拒絶された。
どちらが悪いといえば、間違いなく実衣の方が間違っていているでしょう。
ただ、家族の絆はそんなことではなくて、野望と責任感と、愛が強いからこそ、この猛る暴風に呑まれてしまった。
傷つけあって憎しみあって、
伊豆の仲良し家族は、もう、戻らない。
今まで多くの地獄の中でも癒しだった、実衣全成夫婦も、北条家の団欒も…
ああもう、新しい地獄が釜を開けたよ!
辛いわ!
ことあらば権力慎重に走るりくさんと比企は、もう仲良しなんじゃねーかな(笑
人間、佐殿
臨終出家で、知らず髷を落とす頼朝。
髷の中には、捨てたと言った小仏が。
寂しくて、罪と宿願に苛まれて、弱くて、それでも。
「これは何ですか?」
政子との出会いで発した言葉は、とてもとても優しくて。
宿願と大望を果たして、罪への恐怖を脱ぎ落として、やっとただの人間になった頼朝が望んだのは、安心する"家庭"だった。
政子に、足立殿に見せた、素のままの佐殿は、屈託無く笑う優しい人だったのだと思うのです。
そしてまた、明日へ。
次の鎌倉殿は、源頼家に。
誰も為し得てこられず、前例もない新しい時代に進むのは、まだ何も成していない若者と、政治を始めたばかりの田舎武士ばかり。
それでも今あるものだけで、先へ進まなければならない…
頼家の正室や跡取りがどうなるか、朝廷がどう出るか、不安も山積みですよねー。
愛する頼朝の死から離れ、やっとそんなゴタゴタを、少なくとも次の段階までのゴタゴタを治めた義時。
ここで隠居するつもりだったと言うのが、私心なく、また人の気持ち分かんない奴だなぁ(笑
そーゆートコだぞ!(笑
ただ、最後に(のつもりで)、政子に甘えたのかもしれません。
権力闘争に慣れちゃったけど、心はずっと痛いままですものね……。
ただ頼朝に一緒に居たかった政子が、それを許せる筈もなく、家族と分かたれた孤独に耐えられる筈もなく。
頼朝が捨てられなかった小仏が、政子から義時へ。
ああ、ああ。
救いって、権力って、幸せって何なのだろうなぁ……
託す政子と託される義時の痛々しい横顔を見ながら、そう考えてしまいました。
頼朝を愛した2人が、頼朝が築いたものを引き継いで、守って、共犯となっていくのか。
頼朝が愛した家族が、傷つき壊れながら、地獄を歩いていくのか。
叶わない夢と、愛した人の遺した願いは、呪いと一緒だ。