尾上屋台 2017/09/25 14:24

「プリンセス・プリンシパル」

・アニメ公式


今期ここまでのアニメで、高い評価ながらも「今期一番」と言い切れなかったのは、なんといってもこの作品があったからですね。
このプリンセス・プリンシパル、今期はもちろんのこと、ここ数年でも一番の作品でした。

大体もう、世界観がツボなんですよね。
スチームパンクに加えて、東西ドイツを思わせる二つに分けられたロンドンの壁、そしてスパイものって感じで。
スチームパンク、ヴィクトリア朝ってことで、ビジュアル的にもいい。

で、作風がハードボイルドなんですよ。
僕の作品、特に小説見てもらえればわかるように、ハードボイルド大好きですからねえ。
タフな男がハードボイルドやるのも王道っぽくていいんですけど、女の子がハードボイルドやるのがいいんですよ(笑)。
たまにそういう要素のある作品見ると大興奮って感じなんですが、この作品はモロにそれって感じで、いやあ、もう、ホントに。

で、そういった作品ゆえに、貧困や格差、人の痛みなんかをテーマにした話も多いわけです。
登場人物のつらい過去、みたいな感じじゃなく、物語の背景として、当たり前の様に描かれてる。
それ自体がポイントじゃないんですよ。
話を展開していく上で、当たり前のものとして描かれてるわけで。
つらい境遇や過去をメインに描くって作品が、特に漫画やアニメでは多いわけですけど、そんなものは当たり前、大前提として描いたものは、その先を描くことができますよね。

まあそういう作品だけが優れてるという意味じゃなく、大人になると(笑)、そういうものも見たくなるんですよね。
例えば僕も含めて大抵皆、痛みを抱えて生きてるわけじゃないですか。
なのでその人の痛みそのものをわかりやすく描いてって形で共感、慰みにするのもいいんですけど、そういうものを抱えてなお先に行こうとする、痛みを前提や背景とした作品ってのは、結末が悲劇的になるにせよ、ちょっと希望が持てたりするんですよね。
そういう人がなお、その物語で感じる痛みってのは、それだけで重層的になるって部分もありますし。
多少の複雑性を持たせることで、解釈に幅を持たせることができるって利点もありますね。
全部説明しちゃってる作品というのは、どこか軽い。

こういう部分を描きつつも、世界観良い、アクション良い、女の子たちかわいいとくれば、そりゃ面白いと感じますわね。
どれもまた、すごく丁寧に描かれてるんですよ。
どうやら当初24話構成だったものが、1クール分の放送で12話編成になったっぽいんですけど、前半だけとかダイジェストっぽくピックアップって流し方じゃなく、あえて時系列を前後させて放送したってのも、実に憎い演出です。
こういうとこまで、本当に芸が細かい。

思わぬところで、とんでもない傑作に出会いました。
今は自分の中で世界観構築されてるんでいい勉強になったって感じですけど、もっと若い時に見たら、絶対影響受けまくってたと思います(笑)。
まだあまり出してないですけど、ウチの作品でもスチームパンク要素あるんですよ。
こういう作品見ちゃうと、早く出さなきゃなあと思います。

ともあれ「プリンセス・プリンシパル」、ホントに傑作でした。
これ、描かれなかった部分を描いた完全版とか、最終回の後もいくらでも話続けられそうなんで、二期目をやってほしいですねえ。
それ見ぬまでは、絶対に死ねないなって感じですよ(笑)。

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