第1回 銀河一わかりやすくするための文章指南~基礎編~

はじめに

インターネットには下手な小説が溢れている。
下手なばかりなら仕方がないが、読みにくいことが多くて読んでて腹が立つ。
なので自分の考える読みやすい文章の書き方をまとめてみた。
文章講座、と題するつもりだったのだが、フォントの中に講座の文字が無かった。
勢いのあるげっつくイカすフォントなので、指南に変更することにした次第。

読みやすい文章とは?
そのままの意味だ。
眼が滑らない。
スラスラと頭に入ってくる。
伝えたい対象に意味や内容が齟齬なく伝わる。
そういう文章は難しくても読み進めるのに苦労が少ない。当然例外はあるが。
小説を販売する場合はもちろん、無料で発表しているとしても、公開している以上想定された読み手は他者である。自分ではない。
今どき小説を読む人間なんていない。キチガイか病人か世間のことを知らず他者とかかわりを持ちたいくせに勇気がでない窃視症の青瓢箪だけだ。
そんな奇特でありがたい読者のために、少しでも読みやすくしてやる。
それは書き手にとって文章力云々の話ではなく、単なる気遣いの話でありコミュニケーション能力の問題だ。

とはいえ、格式の高い文章、というのも結構である。
読みやすさよりも文章の味を優先するのは大切なことだ。
私だって昔書いた山遊奇談とか少し前に書いたコウモリ娘の話なんかは、読みやすさよりも文芸的なものを目指して書いた。気取っている。だが、気取るのは悪いことじゃない。
それでも、読みやすい文章も書けた方がお得だよ。

私は読みやすい文章を書けているから大丈夫と思っているお前。
お前も読みにくい文章書いてるからな。気をつけろ、誰でも意識しないと自分にしか読みやすくない文章を書いてしまうんだぞ。

文法はちゃんと守る

文法、へっ、ちゃんちゃらおかしいぜ、形を崩してこその小説ってえもんだ。などとおっしゃる方もおられるだろう。
確かに私もそう思う。ルールを崩す、形を変える、面白い表現をする。大いに結構である。ただし、そもそも正しい文法で書けないやつに崩して書くだの捻った手法だのは出来ない。ストレートも満足に放れないやつが変化球に凝るな。

とはいえ、文法、とざっくりいうと何にどう気を付ければいいかわからぬわ、馬鹿。そうおっしゃられる賢明な方もおられよう。
そういうわけで、以下にこういう点を押えておくといいよ、というのをまとめておいた。

句読点はちゃんとつける

まじで。それだけでグッと読みやすくなるから。
でも、つけすぎては、いけない。
なぜなら、このように、昔の、RPGのような、文章に、なって、しまうからだ。
適度にな。ただ、ひらがなが連続する場合には読点を入れて単語を切り分けると読みやすいぞ。

文節に注意する

文節というのは、言葉の意味を壊さない範囲で文章を区切ったものだ。
文節の働きは主語・述語・修飾語・接続語・独立語の5つに分けられる。

主語
主語というのは何が、誰が、に当たる部分。

じゃあなんだ、シャドウバースはタダのエロメンコっていうのか?
僕たちは鬼滅大好き芸人です!

「が」「は」「も」等の助詞がくっついていることが多い。
なるべく主語は1文に1つにした方がいい。
ただし、

あの女の人はパイズリが上手い。

というように「は」が2つ以上出る文章もある。
この場合、「女の人は」「パイズリが」両方が主語になる(はず)。
細かい分類をすれば「女の人は」が主題になるんだったかな?
まあ、この辺りの分類はしなくていいと思う。

あの女の人はパイズリは上手い。

というように書いた場合、パイズリは、と言う部分には、ただし~という補足が入るように受け取られるので注意。

基本的に主語は入れた方がいい。
ただし、日本語の表現においては主語を省くことでわかりやすくする、というテクニックが存在する。

前の文章から主語が変わっていない場合は、同じものについて述べているので、英語のようにいちいち彼は言った、彼は驚いた、などと書く必要がないのである。


クンギッグは最低だ。のろまでハゲで3フレームの切り替えし技を持っていない。炎に弱く、雷に弱く、水にも弱い。強いところと言えば性欲くらいのものだろうか。誰からも好かれず、ひねもす自涜の行為に耽っている。

一人称の小説の場合、主語が書いていない場合は主人公の動作として読み取られる。


僕は先に進むことにした。
しばらく行くと道は二手に分かれていた。考えてから右手に進んだ。しかし、やっぱり左手側に行った方がよかったか、などと考えているとゾヌが足に纏わりついてきた。驚いて足を振り上げる。触手と粘液で出来た毛のあるそれは暗闇の中に消えた。

述語
述語と言うのは、動きや状態を表す。どんなだ・どうする。主語に対応している語。
文章の最後にもってくることが多い。

ゼットンは一兆度の炎球を吐く
なせばなる、ザブングルは男の子

また、主語と述語がねじれてしまっていると、理解しにくい文章になってしまう。

今月実装された新しいキャラは、見た目も可愛く性能も優れており、ユーザーにおおむね好評で、売り上げの増加を期待している。

ぱっと見なんとなく理解できてしまうかもしれないが、主語である「新しいキャラ」は述語である「期待している」にかかっていない。これでは、新しいキャラが売り上げの増加を期待しているととれてしまう。

そういう場合は
今月実装された新しいキャラは、見た目も可愛く性能も優れており、ユーザーにおおむね好評で、運営は売り上げの増加を期待している。

というように、期待している主体をつけたしてやるとわかりやすくなる。
あるいは、
今月実装された新しいキャラは、見た目も可愛く性能も優れており、ユーザーにおおむね好評で、売り上げは増加するだろう
このように変えてしまってもわかりやすいだろう。

思いつくままに書いてしまうとこのように主語と述語がねじれてしまうので、注意した方がよい。


修飾語
ほかの文を詳しく説明する文節。
愚にして戯なる民どもに我が高邁なる御霊など、理解不能!
ザムディンは最強の呪文。

修飾によってより正確に、あるいは大げさに描写することが出来る。修飾語は1語に対し複数用いることが出来るが、過度にやりすぎるとうるさくて読みにくいので、必要最低限にするといい。

接続語
前後の文を繋ぐ働きをする文節。
サイヤ人のしてきたことは良くなかった。だから滅びた。
やつは強い。だが俺たちの方が強い!

接続語をしっかりと使うことによって、特定の語を強調したり、意味を補足したりもでき、伝わりやすいので連続した文章を書く時には積極的に使おう。
ただし、あまり多すぎると邪魔なのでほどほどに。
また、「しかし・だが・ところが」等の逆説が連続した場合、読み手が混乱するので可能な限りしないよう心がけよう。


独立語
他の文節と直接関係のない文節。
まあ、ニャルラトホテプじゃないわ、ナイヤーラトテップよ。
おお、勇者イチモツよ、死んでしまうとは情けない、

接頭語や感嘆詞などはこれに分類される。

このように文節を分けて考えることで、文章を分解して考えることができる。
それにより、修飾語が多すぎる、主語が抜けている、わかりにくい、などの問題に気づきやすくなる。

また、文節を組み替えることで意味を強調することができる。

僕は世界の中心で愛を叫ぶ。

世界の中心で愛を叫ぶのは僕だ。

ほとんど同じような単語を使っているが、後者の方は、僕、という部分が強調されている。基本的に強調したい単語は後に持ってくる。

彼は書くものは素晴らしいが性格は悪い。

彼は性格は悪いが書くものは素晴らしい。

上は美点を打ち消し性格が悪いことを強調しているため下げる文章だが、下は汚点を打ち消し書くものが素晴らしいことを強調しているため持ち上げる文章になる。昔このようなことを言われたが褒められたようでうれしかった。

品詞について

日本語には「動詞・形容詞・形容動詞・名詞・副詞・連体詞・接続詞・感動詞・助詞・助動詞」の10種類が存在するが、分類については文節よりも重要ではないためここでは省略する。
読みやすい文章を書くポイントとしては、接続詞、助詞、助動詞が重要だと思われる。

接続詞
接続語でも述べたが、前後の文の関係をわかりやすくするための品詞。
接続詞を挿入することにより、文章をわかりやすくすることができる。1つの出来事に関する文章や、息の長い文章を書く時には積極的に使いたい。
種類が多く長くなるが一覧をまとめると。


  • 順説 
    • 用法 前の文章が後の文章の原因や理由を示す際に用いる
    • 接続詞の例 そのため だから ゆえに したがって すると しかるに
      • 例文 人類は愚かすぎる。そのために、粛清しなければならない。
  • 逆説 
    • 用法 前の文から予想されるものとは逆の結果になることを示す際に用いる
    • 接続詞の例 しかし が だが ところが にもかかわらず あるいは
      • 例文 我々ジオン軍は連邦軍に比べて30分の1の国力しか持たない。にもかかわらず、今日まで戦い抜いてこられたのはなぜか⁈
  • 並列 
    • 用法 前後の事柄を並べる際に用いる
    • 接続詞の例 また および かつ なおかつ 同様に
      • 例文 クルタ族は四ツ谷に宣戦した。また、乃木坂にも魔の手を伸ばした。
  • 列挙 
    • 用法 事柄を並べる時に順番を付ける際に用いる
    • 接続詞の例 ひとつは 最初に 最後に
      • 例文 最初に、闇と光が溶けあった混沌というものが存在した。
  • 添加
    • 用法 前の文に後の文で述べられることを付け加える際に用いる
    • 接続詞の例 加えて さらに かてて加えて ばかりか おまけに しかも
      • 例文 彼はもはや疲労困憊の状態だった。加えて、身体には無数の傷を負っていた。
  • 対比
    • 用法 前後の事柄を比較する際に用いる
    • 接続詞の例 反対に 一方 他方では 
      • 例文 白魔導士は回復魔法に長けている。一方、黒魔導士は攻撃魔法に長けている。
  • 選択
    • 用法 前後の事柄を選択する際に用いる
    • 接続詞の例 または あるいは もしくは 
      • 例文 クトゥルフ、あるいは、クルウルウ、ないしは、ク・リトルリトルと呼ばれる存在。
  • 説明
    • 用法 前の文を説明する際に用いる
    • 接続詞の例 なぜなら なぜかといえば
      • 例文 彼は弱い。なぜなら、心に鋼を宿していないからだ。
  • 要点 
    • 用法 前の事柄に対する要点を述べる際に用いる
    • 接続詞の例 そのためには それには
      • 例文 敵の拠点を制圧する。そのためには、補給路を断つ必要がある。
  • 補足 
    • 用法 前の文を補足する際に用いる
    • 接続詞の例 なお 実は ちなみに ただし 尤も
      • 例文 たかし君は時速200キロメートルで歩行したことになります。なお、乗り物には乗っていないと思われる。
  • 言換
    • 用法 前の事柄について言い換える際に用いる
    • 接続詞の例 つまりは すなわち 要するに 平たく言うと 簡潔に述べれば
      • 例文 二眼(じがん)天にあり、一向地に着かず。大足二足(たいそくにそく)小足(しょうそく)八足、右行左行(うぎょうさぎょう)して遊び者の精にてあるぞとよ。すなわち蟹である。
  • 例示 
    • 用法 前の事柄について例を示す際に用いる
    • 接続詞の例 たとえば いわば
      • 例文 俺の自己紹介を始める前にちょっと聞いてくれ。たとえば、ここに蛇使いのおじさんがいたとする。
  • 注目 
    • 用法 前の事柄の中から注目する部分を示す際に用いる
    • 接続詞の例 中でも とりわけ なかんずく
      • 例文 彼の身体には6本の腕が生えていた。なかんずく、背中から伸長した2本は凶悪なまでに発達している。
  • 転換
    • 用法 前の事柄から話題を変える際に用いる
    • 接続詞の例 では さて ところで それでは
      • 例文 怪盗ゴリラ丸のやろうには毎度おどろかされるぜ。ところで、浦賀沖に黒船が来たって話だぜ。
  • 結論
    • 用法 前の事柄について結論を述べる際に用いる 
    • 接続詞の例 このように ともあれ いずれにせよ
      • 例文 チーズは鼠たちに前で木っ端みじんに分解されてしまった。このように、欲をかくとろくな結果にならないのである。
  • 対比 
    • 用法 2つの対立する事柄について述べる際に用いる
    • 接続詞の例 確かに しかしながら
      • 例文 拡散弾を用いれば裸ノーダメージは簡単だ。しかしながら、剣士で達成した方が再生数が伸びる。
  • 対照 
    • 用法 2つの対照的な事柄について述べる際に用いる
    • 接続詞の例 一方では 他方では 
      • 例文 農村では麦や、ブドウが栽培されている。一方、町では不義や無道が行われている。

多くの文章にはこれらが使われている。多分、無意識に使用している人も多いと思うので、これらの接続詞を適度に用いれば読みやすくなる、ということだけは覚えよう。

助詞
助詞というのは「て・に・を・は・が・も・と・の・ても・こそ」等のそれだけでは文節を作れない付属語のこと。
しかし、これらが正しく使われていない文章と言うのは、非常に意味が伝わりづらい。

明日のセンター試験なので自信の持てる一言ください。

これを直すとすれば、

明日はセンター試験なので自信の持てる一言をください。

自信の持てる、に関しては自信が持てる、自信を持てる、等の言いかえが出来るが、どれでもいいと思われる。一般的には自信が持てるとするのが無難かも。

また、

君はどこかのつまらない娘を恋して

これは実は正しい。
キミに恋して、でも正しい。後者の方が伝わりやすいとは思う。難しいね。


助動詞
用語や体言などに意味を添える付属語。
「れる・られる・させる・ない・ようだ・そうだ・らしい・みたいな・です」等。
特に「れる・られる・させる」というような行為者ではなく行為を受ける対象が主語になっている受動態は間違えやすい。
エロ小説では動作のやり取りが多いため、濡れ場などでは特に気を付けたい。

「ような・みたいな」は主に比喩表現で使われる。直喩というやつだ。
便利だがあまり使いすぎると気になるので隠喩と混ぜるといい。

補則 文章ルールについて

3点リーダやダッシュは偶数個にするとか「!」や「?」の後にはスペースを空けるとかそういうルールのことだ。
これらは大概出版の際のルールであり、文法とは関係がない。
バカらしいことではあるが、特にこだわりが無ければ守った方がいい。なぜなら、出版のルール、というのもまた、読みやすさを重視して設けられたものだからである。

ただし、書く媒体によって使い分けることは大事だ。
ゲームシナリオと小説と音声作品の台本とで全然違うのでその媒体に合った書き方を覚えると読みやすくなるし、どうすると読みにくいかがわかる。
仕事で受ける場合は文字数とか書式とかちゃんと確認しような。

ひらいた方が読みやすい漢字

ひらく、というのはひらがなに直すという意味である。
「可成り、為に、様に、然るに、訳にも、事に」等、漢字は存在するが他の読み方があったり、頻出したりする単語はひらがなで書いた方が読みやすい。一般の書籍や新聞などを見て、どういった漢字がひらがなに直されているか、を意識しよう。

いや、長いな

思っていた以上に長くなりそうなので第一回目はここまで。
もし、この事柄について教えて欲しいというのがあれば記事のコメントかTwitterのDMか質問箱までくれ。

文章の校正も出来るので気軽に相談してね。3000字とか超えると金取るけど流石に。

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第2回 銀河一わかりやすくするための文章講座~応用編~

第3回 銀河一わかりやすくするための文章講座~語彙編~

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