シロフミ 2020/08/06 22:46

とある通学の風景

 ノクターンノベルズ掲載分より。
 動物との交尾義務と出産が義務づけられた学校の様子を垣間見るみたいなシチュエーション。なので直接的なR18成分は少なめ。


「えー、そうなんだ。大変だねぇ」
 混雑する通勤電車のなかで、ふと漏れ聞こえた会話が、すべての切欠だった。
 郊外の市を結ぶ私鉄の路線は、首都圏のそれと比べればだいぶ大人しいが、朝の通勤・通学の時間帯にはそれなりの混雑を見せる。その日も私は吊革に手をかけ、退屈な通勤時間を、買ったばかりの文庫本を眺めることで誤魔化していた。
「その、先輩たちみたいに上手くできるか、不安で……」
「あはは。だいじょうぶだいじょうぶ。すぐ慣れるってば」
 鈴を転がすような可愛らしい声。窮屈な姿勢で文庫本から顔をあげてみれば、座席の一角に集まる制服姿の少女達の姿が見えた。鮮やかな青と胸のリボンタイは、この路線でよく見かける進学校のものだ。
 およそ5名ほどの彼女たちは車両の端にある席に陣取って、なにやら話し込んでいる様子だった。
 その場所は優先席だったはずだ。こんな時間帯から混雑する車内で席を占領している少女達に、私は眉をひそめた。
 狭量とも思われるかも知れないが、近くには杖をついた老夫婦の姿もある。できるのなら席を譲るべきなのではないかと考えたのだった。老夫婦に気付いた様子もなくおしゃべりに花を咲かせる彼女たちに、一言言ってやるべきかどうか、私が迷いながら文庫本を閉じかけたところで、言葉を失った。
 優先席に座る少女達――どうみてもまだ、十代前半としか思えない彼女たちのおなかが、大きく重そうにせり出し、制服のブラウスをはち切れんばかりに押し上げ膨らませていたのだ。
「先輩って、今何ヶ月なんですか?」
「えーっと、8ヶ月くらい……かな?」
 緑のリボンタイをしたショートボブの少女に答えて、隣に座るロングヘアの少女が、そっと制服のベストの上から大きなおなかを撫でる。愛おしげに優しくそこに触れる少女の表情には、母親だけが持つことのできる我が子への慈しみが見て取れる。
「ふふ、最近よくおなか蹴飛ばすんだよねぇ。寝てても起きててもお構い無しだから大変だよ」
 ロングヘアの少女――先輩、と呼ばれた赤いリボンタイの彼女は、重そうなおなかを抱え、眠そうにふああ、と欠伸をしてみせる。
「ミキちゃんみたいに小さいと大変だよ? 今のうちから覚悟しとかないとねね」
「えへへ。私は来年ですから」
 言われて、ショートボブの少女は照れくさそうに顔を赤らめる。彼女のおなかもまた、隣のロングヘアの少女のもに比べるとかなり小さくはあるが、制服の上からでもしっかり目立つくらいには大きくなっていた。
 立て続けの驚愕に、私は天地がひっくり返るほどの衝撃を受けていた。
 確かに、最近は交際の低年齢化が進んでいると聞くが、まさか――自分の年齢の半分にも満たなそうな少女達が、堂々と通学の車内で妊娠のことを語り合うことも当たり前なのだろうか。自分の常識を疑いかねない事態に、私は車内を見回すが、少女達を気にしていないのか、周りの乗客たちは特に注目している様子もない。
「ミキちゃんは何ヶ月だっけ?」
「4か月です。……人間で言うと」
 ………………。
 ……今、なにかとんでもない台詞が聞こえた気がした。
 いや、まさか。ただの聞き間違いだろう。手のひらに嫌な汗を感じながら、私は努めてそう思うことにする。が、席の向かいで吊革につかまっていた、青いリボンタイの眼鏡の少女が、さらに耳を疑いたくなるような発言をしたのはその直後だった。
「……3年生の交配相手って、大型犬なんですよね?」
 今度は間違いなく、聞き間違いなどではなかった。
 思わず驚がくに叫びかけた悲鳴を、ぎりぎりのところで押しとどめる。
 ロングヘアの少女――『先輩』は、くすりと微笑んで、そっとおなかを撫でる。
「うん。私のペアリングの相手はシルバって言うんだけど、グレートデンの子でね。体高80センチくらいかな……普段はちょっと寂しがりなんだけど……交配の時はすっごい激しくて、全然離してくれないんだよね。ホントにもう、子宮破けちゃうかと思ったよ」
 昨日の試験難しくてさ、というような口ぶりで、『先輩』はスカートの上から足の付け根をそっと押さえこむ。少女達からあはは、と小さな笑い声が響いた。
「あ、この前の実習の時の写真、あるけど見る?」
「あ、見せてくださいっ」
 『先輩』の少女が、鞄から携帯を取り出す。数回のボタン操作で呼び出された写真が目に飛び込んできた。
 いや、白状しよう。私はそれに視線を釘づけにされていた。文庫本の端から覗き込んだその写真は、小さな携帯のフレームの中、肌も露わに写り込んでいるのは、確かにその携帯の持ち主と同じ顔をした少女だった。
 身体の発達はまだ十分とは言えず、未成熟な部分も多くみられたが――どこか、世話焼きの先輩といったおっとりした気配は影を潜め、代わりに似ても似つかないほどに淫らに、蕩けた“女”の表情で、シーツの上に組み伏せられている。
 そして少女の背後から、力強く圧し掛かるように腰を打ちつけているのは、巨大な獣。
 少女と同じかそれよりも大きな体躯をもった、大型犬だった。少女の言葉を信じれば、グレートデンという犬種なのだろう。灰色の毛皮をした犬が、大きく舌を垂らし、涎をこぼしながら荒い息を吐いて、逞しい後ろ脚を踏ん張り、思い切り雄の滾りを叩きつけている。
 少女はその雄犬と、身体を捻って愛おしそうにキスを交わし、大きく口を開けて嬌声を上げているのだった。
 結合部分が生々しく映っていたわけではないが、力強く腰を振りたてるグレートデンと、あどけない少女の、二人の生殖器がしっかりと繋がっていること。まさに今、滾るマグマの噴出のように迸っているであろうその生命の源を、胎奥深くで受け止める悦びに顔をほころばせている。脚の間にはどろどろと白い粘液が垂れこぼれ、床にまで飛び散っていた。
「わぁ……」
 妊娠の事実をあけすけに話している彼女たちにとっても、流石にこの写真は衝撃的なものらしい。
 しかし顔を赤らめながらも、他の少女達は顔を追った手指の隙間から、興味に目を輝かせて携帯の中を覗き込んでいた。
 私の衝撃と言えば――その比ではない。獣○、という行為そのものは知識としてなかった訳ではないが、まさか、どう見ても義務教育を終えていないように見える少女達が、進んでそんな行為に臨んでいるなどとは、想像もしていなかったから。そして何よりも。少女達の胎内に芽生え、今まさに育っている生命が、ヒトのものではないのではないかという発想に至ってしまったからだ。
 そして事実、それは正しいようだった。
「サエちゃんは初めてなんだっけ?」
「はい……ちゃんと元気な赤ちゃん産んであげられるか、ちょっと怖いです……」
 『先輩』に話を向けられたのは、少し離れた場所に立っていた三つ編みの少女。こちらも青のリボンタイをしているところからして、眼鏡の少女と同じ学年だろう。彼女はまだ見たところ、特に目立った様子はないが、問われてそっと腹部をかばうようなしぐさをしたところから見ても、他の少女と同じように妊娠しているのだろうと思われた。
「大丈夫だいじょうぶ。サエちゃんだってちゃんと女の子なんだから。ペアリングの子だってキモチよくさせてあげられたんだから、自信もって! 一番乗りおめでとう。サエちゃんがみんなのお手本になってあげなきゃね」
「は、はい」
 緊張の面持ちで答える少女。
 どうやら、自分の身体がきちんと赤ちゃんを育てられるかということを疑問に思っているらしい。
 言葉の端々から想像するに、どうもサエと呼ばれた少女は、ごく最近“女の子”に……初潮を迎えたばかりらしい。
「赤ちゃん、産むときって……怖くないんですか? その、痛いとか……苦しいとか……」
「あはは。うーん。人によるかなあ。……大丈夫だよ。サエちゃんの赤ちゃん、ダックスフントでしょ? 初産講習も受けてればそんなに辛くないから」
 『先輩』は豊富な経験に裏打ちされた自信を見せるかのように、ひっひふー、と聞き覚えのある呼吸法を真似してみせる。
「それにねサエちゃん、赤ちゃんだって、ママのことを苦しめようってしてるわけじゃないんだから、そのことを忘れないであげてね。ママが不安になってると、赤ちゃんまで悲しくなっちゃうよ」
「……わかり、ました」
 こくんと力強くうなずく『先輩』に、サエの不安もだいぶほぐれたらしい。
「でも、産まれてくるのが全部で10匹超えちゃうとねぇ……最初のうちはいいけど、最後のほうはもう産まれるたびに頭が真っ白になちっゃうからね……大変は大変、かな」
「あー、先輩、サエちゃんをおどかさないでくださいよぉ」
 ごめーん、と『先輩』がおどけてみせ、少女達からまた笑みがこぼれる。
 私の背中はすでに汗でじっとりと湿っていた。
 ……夢でも見ているのだろうか? いくらなんでも、こんなことはあり得ない。空転する頭をよそに、少女達はなおも話を続けている。
「……写真って言えば、イツキのもあるよ? この前撮ったの」
「え!? いつの間にそんなの……!?」
 サエに驚いた声を上げたのは、最初に話をしていた眼鏡の少女。冷静に見えた彼女だが、その話題に一気にあわて始めていた。
「ちゃんと聞いたよ。撮ってもいい? って。イツキ、大丈夫って言ってたじゃない」
「そ、そんなの言ってないよッ」
「覚えてないだけじゃない? イっちゃん夢中だったっぽいから」
 ぱかりと開けられた携帯の中に、イツキと呼ばれた少女のあられもない姿が写っていた。
 本人に気付かれないようにしたせいか、アングルはやや複雑。ほぼ素裸で仰向けになって、大きく足を広げている彼女は、大きく眼鏡が顔からずれているのにも気づいていない。
 白い肌の少女の下腹部に覆いかぶさっているのは、体長40センチほどの小型犬だ。
 可愛らしい、おやつのCMにでも出てきそうな子犬。室内犬としても目立つ愛玩種だ。しかし見かけとは裏腹に、彼も立派に成熟した雄であることを誇るように、股間には体格に似合わないほどの大きなペニスをぶら下げている。
 ぬらぬらと光るペニスが、今まさに、赤く破瓜の血を示すぬめり蜜をこぼす少女の膣口へと入りこもうとしている瞬間だった。
「わーーっ!? い、いつのまにこんなのッ!? や、ヤダ、見ないでよぅっ」
「……今日の給食、プリンおごってくれたらいいよ」
「ちょ!? そんなこと……」
「うふふ。私にも見せて?」
「先輩ーーーっ!?」
 携帯の中の画面が切り替わる。
 次の一枚は、赤黒くてらてらと光り、不気味に節くれだった犬の肉竿が、少女の秘部へとがっちりとはまりこんでいる写真だった。すでに何度も何度も少女の胎内へと押し込まれては引き抜かれているのだろう。溢れる蜜液は犬の腰使いによって泡立ち、充血した粘膜からは、白く濁った精液と、破瓜の血を混じってほんのりと赤く泡立った蜜が混じり合いながら溢れ落ちている。
 犬のペニスの根元は見たことがないくらい大きく膨らみ、それがぐりぐりと少女の秘所に押し込まれようとしている。こんなにもあどけない少女が、犬のペニスによって処女を奪われ、それどころか、犬の子種をたっぷりと、その未成熟な胎内へ注ぎこまれている光景だった。
「だって、イツキ、私にも気づかないでキモチ良さそうに悲鳴上げてるんだもの。あんなに何度もイっちゃって、せーし、いっぱい出してもらったら、予行演習でも妊娠してなきゃ嘘だと思う」
「も、もぅ!! 怒るよッ!?」
「うふふ。明日くらいに確認なんだっけ? ちゃんとおクスリが効いて、元気な子、いっぱい妊娠してるといいわね」
「ぅ……は、はい」
 頭を撫でられ、眼鏡の少女もそれ以上怒れずに、大人しく従う。
「んー、ねえ先輩、だったら私の悩みも聞いてくださいよぉ」
「なあに? ミキちゃん」
「そのですね、べつになにが悪いって言ううんじゃないんですけど、最近みんな悪阻がひどくて、欠席ばかりなんですけど……そのせいで、わたし今日も当番じゃないのに犬舎の子たち全員のの処理してあげなくちゃいけないんですよ? 明日からテストもあるのに……」
「……2年生って、妊娠中もペアリング、お休みにならないんですか?」
「色々あってね……」
 『ミキ』は、とほほと言わんばかりの表情で、ショートボブの髪をぷるぷると振って、そっと小さなおなかを撫でる。『先輩』に比べればだいぶ控えめな、しかしそれでも制服の上からでも十分に目立つおなか。彼女自身の言によれば、柴犬の仔犬がそこには育っているはずだった。
「なんかね、おなかに赤ちゃんいるのに、キモチ良くなっちゃうなんて……なんだか、赤ちゃんに申し訳なくてですね……」
「でも、それは……他の子も一緒だと思います」
「そうそう。ミキちゃんもう四か月だったかしら。それくらいになると、パパのおちんちんにこつこつって子宮つついてもらうと、赤ちゃんも喜んで一緒に動いてくれるの、わかるでしょう?」
 『先輩』に言われ、その時の胎動を思い出すかのように、『ミキ』が目を閉じる。
「だから、ママが気持ち良くなってる事、ちゃんと赤ちゃんにも教えてあげるといいよ。怖いことでも悪いことでもないんだから」
「……はぁい」
 私が呆気にとられている間、そんなやりとりとと主に、車内アナウンスが次の到着駅を告げる。少女達は重そうなおなかを抱え、次々に席を立った。
「あ、降りなきゃ」
「また胸おっきくなっちゃって……ブラ変えなきゃ。今月もうおこづかいないのになあ」
「授乳パッドも用意した方がいいよ? 乳首、すっごく敏感になるから」
「ねえ、先輩の予定日、よかったら見学に行ってもいいですか?」
「あ、私もっ」
「うふふ、いいけど、一緒に産気づいたりしないでよ? 良くあるんだからね。クラスメイトとかで立ち会って、まだ予定日じゃないのに産まれそうになっちゃう子」
 ゆっくりとホームに入った電車が停止し、乗車口を開ける。発車のベルが鳴り響く中、少女達は連れ立って電車を降りていった。
 私は思わず、自分が通勤途中であることも忘れ、その後を追いかけようとしていた。
 が、降車と同時に乗り込んできた乗客たちに阻まれ、思うように前に進めなくなる。
「痛ってえな、どこ見てんだよ」
 ホームから乗り込んできた乗客が声を荒げる。
 脚をふまれたと怒鳴る彼に、慌てて頭を下げているうちに、気付けばドアが閉まっていた。
 人ごみの向こうに――白いブラウスとリボンタイの少女達が、ちらりと見えたような気がした。


(了)

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