フリーセンテンス 2022/12/15 00:00

苗床聖女の受胎獄痴 暗黒の襲撃編4

「さあ、みんな、もっと奥へ進むわよ! 魔物たちに人間の強さを思い知らせるために、そして人類に一〇〇年の安寧をもたらすために! 魔物たちを討って討って討ちまくるのよ!」
「「おおおーッッ!」」
かくして討伐部隊は、さらに奥へと、暗黒生物たちが多く潜む「闇の領域」の奥深くへと歩を進めてゆくのであった。
 この時、血に酔った彼らは慎重さを欠いていた。戦った暗黒生物たちがあまりにも弱かったため、彼らの強さを見誤っていたからでもある。まさか、リプロ川近辺に棲息している暗黒生物たちが、生まれた時から力の弱い「未成熟」な個体ばかりの集合体であるとは思いもしなかったはずだ。
 ゆえに、この時、むやみやたらに奥へと進むのではなく、砦なりを築いてそこを拠点にして探りを入れるように暗黒生物たちの駆除を進めていくべきだったのだ。そうすれば、なにか危機が生じた際、砦に逃げ込むことで籠城もできるし、人界側からの支援や救援を受けることも容易かったはずだ。
 しかし、初戦で暗黒生物たちに大勝したことで、ティリエルに率いられた討伐部隊は慢心しており、そうはしなかった。そして、悪いことに、侵攻したその先々でも、弱い未成熟な群体とばかり遭遇してしまったため、彼らは勘違いしてしまったのだった。「俺たちは強い、強い!」と。彼らは、進む先々で蛮勇を振るい、全能感に満ちた剣で数多の暗黒生物たちを葬り続けた。それも必要以上に残虐に、残酷に。そして、いつしか簡単には引き下がれないような深い場所にまで達してしまったのだった。「闇の領域」が牙を剥いたのは、まさにその時だった。
 レスター暦六四〇年七月二八日」の深夜、野営をしていた討伐部隊の陣地を暗黒生物の群れが襲った。怒り狂った数千匹の暗黒生物たちが、醜悪な身体に凶悪な力をみなぎらせて油断していた討伐部隊を四方八方から襲ってきたのである。
 すでに承知の通り、独自の進化を遂げた「闇の領域」は、それ自体が一個の生命体として機能しており、弱い個体も強い個体もまとめてひとつの「生物」なのである。ゆえに、ティリエル率いる討伐部隊がおこなってきた虐殺行為は、彼らの激しい怒りを買わずにはいられなかった。討伐部隊は瞬く間に大混乱に陥った。


お読みくださって、本当にありがとうございます(´ω`)

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