フリーセンテンス 2022/12/17 00:00

苗床聖女の受胎獄痴 暗黒の襲撃編6

「お、お願いッ、こ、殺さないでッッ! いいい命だけはッ、いのちだけは助けてッッ、たすけてええぇぇぇえぇえぇえぇぇ・・・・・・」
ティリエルは命乞いをした。美しい顔を恐怖でぐちゃぐちゃにしながら、自分を取り囲む暗黒生物たちに向かって、無様にも命乞いをしたのだ。その姿に、救世の聖女と謳われたかつての姿は微塵もなかった。
 そんな彼女に向かって、一匹の暗黒生物が前に進み出た。巨大で、醜悪な容姿をした、全身が膿爛れた狼の奇形種のような個体だった。その個体が、ティリエルに向かって「人語」の響きを帯びた声を発したのだった。
「オ、オマエ、ハ・・・・・・コロ、サナイ・・・・・・」
「え・・・・・・」
その予想もしなかった言葉を聞いて、一瞬、ティリエルの表情に生色が蘇った。助かるかもしれない、と思ったからだ。
 しかし、希望はすぐに絶望へと転じることになる。
 巨大で醜悪な姿形をした狼の奇形種のような個体がティリエルに向かって再度言ったのだ。
「オマ、エハ、コロサナイ・・・・・・イカ、シテ、イカシ、テ、イカシテイカシテイカシツヅケテ、「罪」ヲ、ツグナワセテヤル・・・・・・」
それは強い憎悪と怒りに満ちた言葉だった。そう、ティリエルを包囲した暗黒生物たちは怒っていたのだ。この暗黒の大地にて、人間たちが、弱い仲間たちにおこなってきた残虐非道な所業の数々に激怒していたのだった。ゆえに、暗黒生物たちは決意していたのだった。
コノオンナニ、「罪」ヲツグナワセルテヤル、と。
「あ、ああっ・・・・・・」
暗黒生物たちの強すぎる敵意と怒りをまともに受けて、ティリエルの意識が遠のいていった。身体から力が抜け落ち、その場に崩れるように倒れ込んでしまった時、彼女の意識はもはやなかった。
「「罪」ニハ、「罰」ヲ・・・・・・」
「「罪」ニハ、「罰」ヲ・・・・・・」
「「罪」ニハ、「罰」ヲ・・・・・・」
同じ言葉を繰り返しながら、意識を失ったティリエルの身体を、巨大で醜悪な姿形をした狼のような奇形種が回収した。大きな口で咥えて。そして、彼らは踵を返し、夜の闇へと引き上げていった。自分たちの「巣」へと戻るために。
 これより先、ティリエルの身に待ち受ける運命は、今宵の闇よりも深い「絶望」であろうとは、この時はまだ、知る由もないのであった。


お読みくださって、本当にありがとうございます(´ω`)

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