2021年右田双鉄お誕生日祝いショートストーリー 「正解の無い誕生日」(進行豹
こんばんわです! 進行豹でございます!
一日遅れでございますが、昨日は双鉄誕でございました!
めでたい!!!
パッチシナリオ(れいな)書いてて頭から抜けてて何の準備もなかったので、
アンケートとってみましたら
https://twitter.com/sin_kou_hyou/status/1356771355572592641?s=20
「圧倒的ハチロク」でございましたので、ハチロク双鉄でお誕生日お祝いしショートストーリー書きました!
書き始めたら思いもつかない方向にいってしまいましたけれども、これが今年の双鉄とハチロクのお誕生日でございます!
もしよろしければ!!!
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2021年右田双鉄お誕生日祝いショートストーリー
「正解の無い誕生日」 進行豹
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ここのところ、毎年でございますね。
2月の2日。双鉄さまのお誕生日に、真闇さまにも日々姫にも、お泊りの用事ができるのは。
「──うん。」
それだけ信じていただけている。
お二人にも大事な双鉄さまを、1レイルロオドのわたくしに、すっかり預けてくださるほどに。
「飾り付け、よし。クラッカア、よし。ケエキ、よし。プレゼント、よし」
だから、指さし確認します。
そのご期待に背かぬよう。
背かぬことで双鉄さまに──きっと、喜んでいただけますよう。
「お料理も──よし!」
この日のために、たくさん教えていただきました。
オオドブルは小エビのカクテル。
スウプはビシソワアズ。
サラダは水菜と鶏ささみ。
メインディッシュはロオストビイフ!
冷めても美味しくいただける、ご多忙な双鉄さまにぴたりお似合いのメニウです。
「……なのに。……それにいたしましても」
遅すぎます。
お誕生日を二人ですごすそのために、せっかくおやすみをあわせましたのに。
ポーレットさまからのお電話で、
「やっかいごとだ」とお出かけされて、そのまま、いままで……夜八時まで。
「……………………せめて、ご連絡のひとつもいただけましたら」
「すまん、遅くなった」
「双鉄さま!」
お迎えし、ひととき気分が華やいで。
けれどもすぐさましおれかけます。
「……双鉄さま、随分とお疲れのご様子ですが」
「いや──。いや。うん。正直にいえば、少し疲れてしまっている」
「で、ございましょうね。お顔の色が真っ白です。
お食事になさいますか? それともお風呂──あるいは、クマ焼酎でお体の内側をあたためられますか?」
「食事にしたい」
わたくしの肩越しちらりと、双鉄さまが食卓をご覧くださいます。
「たいへん旨そうなご馳走だ。僕のため──路子のためにも、用意してくれたものなのだよな」
「で、ございます」
こんな状況であるというのに、嬉しくなってしまいます。
路子さまのためご用意をした、オレンジジュウスとグラスとに、双鉄さまが気づいてくださったそのことに。
「ならばなおさら、祝の席を楽しみたい。……っ。楽しみたい、のだけれど──」
「双鉄さま?」
「──すまん。感情が乱れているのだ。鎮めて戻ろうとしたのだが、やりきれなさが収まらん」
ほうっと、深く。重い息。
「このままいれば、すず、お前にさえ八つ当たりをしてしまいかねない。
未熟極まり恥ずかしくあるが……それが、今の僕の正直なところだ。ゆえ」
「でしたら、ね? 双鉄さまがお嫌でなければ──」
離れようとする双鉄さまの袖口を、指先だけでつまみます。
双鉄様が動かれるのなら、すぐさまほどかれてしまう強さで。
「どうぞ一緒に。今宵は楽しまず過ごしましょう」
「……」
「双鉄さまとわたくしと──この先[十年二十年'ととせはたとせ]と、時を重ねて参るのですから……」
機能停止が訪れなければ──そんな無粋なひとことは、いまは奥底に沈めおきます。
「お祝いひといろでは無いことも、いつしか振り返り見るのなら、ふたりが重ねる時の絵巻の、よいアクセントになってくれるかと存じます」
「……。すず」
「あ」
ぎゅっと、ぎゅうっと。
双鉄さまが両腕で、わたくしを抱きしめてくださいます。
「双鉄さま……」
呼吸。体温。いつもより濃く香る体臭。
共感以上に、つたわってくるような気がいたします。
「……双鉄さまは、悲しんでいらっしゃるのですね」
「…………。かもしれん。悲しみと、いきどおりと──。申し訳無さも無論ある。もどかしさも。自分に対する情けなさも」
「はい」
「契約ごとが、うまくいかなかっただけなのだ。暗礁に乗りあげかけて、僕に舵取りを委ねられ──
けれど、期待に応えることが叶わなかった。いってしまえば──ただそれだけのことなのだ」
「はい」
「引き継ぎ前は、ふかみが担当の案件だった。ふかみにとって、御一夜鉄道ではじめての、大きな交渉ごとだった。
……順調に進捗しているはずだった。けれども、急に──」
「……」
「だからこそ──ふかみのためにも、なんとしてもまとめてやりたかった」
「左様でしたか……」
「──僕一人のことであれば、失敗してもやりなおせばいい。いつだってそうして来た。
けれど……ふかみのあの落ち込みようは…………」
それは、ふかみさまの問題。
一昔前の双鉄さまなら、そうと割り切ってらっしゃいました。
「だから、僕は──」
変化している。双鉄さまも──恐らくきっと、わたくしも。
「ね、双鉄さま」
正解などはわかりませぬ。
わからないなら、どうすればいいか──双鉄さまが、教えてくださったことをします。
「よろしければ、ね? おねだりをしていただけませんか」
「おねだり?」
「それを今年の、お誕生日のプレゼントに差し上げたいのです。
双鉄さまが厳しく叱ってほしいのでしたらわたくしは、厳しいハチロクをさしあげましょう。
双鉄さまが甘えたいなら、どんな双鉄さまだって、すずは甘やかにお包みしましょう。
……そうして、もしも。双鉄さまが、もしもお一人になられたいなら」
「であれば、すず」
「はい」
「願わくば、いつものお前のままでいてくれ。
僕にあわせるのではなく、お前のありたいお前でいてくれ。
今の僕にとっての最善を──間違えようとなんであろうと、僕にプレゼントしてほしい」
「かしこまりました。双鉄さま」
いつもどおりのわたくしは──いったいどのようなわたくしでしょう。
やはり、正解はわかりませぬ、が──
「でしたら──少し、失礼します」
(ひょいっ)
「!?」
れいなほどではありませんが、双鉄さまのおひとりくらいは簡単に抱きかかえられます。
食卓につけ、ナプキンをお首にまいて──今宵はお酒はよしましょう。
路子さま用のオレンジジュウスを、コップふたつになみなみつぎます。
「どうぞ、乾杯の音頭をお取り下さい。双鉄様」
「乾杯──なんのだ」
「もちろん、路子さまのお誕生日のお祝いの」
「っ!」
「双鉄さまのお誕生日は、そのあとで。
夫婦の床で、ふたりっきりで、双鉄さまを甘やかしながらお祝いしましょう」
「ああ」
一瞬目を閉じ、お口のなかで何かを小さくつぶやかれ。
そうして高らかに双鉄さまは、グラスをかかげてくださいます。
「ハチロク。路子の誕生祝いを用意してくれてありがとう」
「当然のことでございます。[双鉄様'マイマスター]」
「では、乾杯の音頭を取ろう」
「喜んでご唱和いたします」
真水のグラスを手にとって、双鉄さまにならって小さくかかげます。
「路子。お誕生日おめでとう。いつも見守ってくれていてありがとう。
おかげで僕は、今年もこの日を迎えることができた」
双鉄様です。いつもどおりの。
(あるいはご無理をもしかして、強いてしまっているのかもしれません……)
けれども。そうであるとして。
路子様のお誕生日をもしもお祝いしなければ、その傷の方がより深く、双鉄さまを苛まれるかと、わたくしは──
「ハチロク、なにをぼーっとしている。乾杯だ」
「あ!? もうしわけございません」
「晴れの日に詫びは無粋だ。唱和してくれ。路子と僕のお誕生日に──『乾杯』」
「『乾杯!』」
オレンジジュウスを一気に飲まれ、メインディッシュを──ロオストビイフを双鉄さまはお切りになられて──
「ハチロク、お前も、ほら」
バスケットから瀝青炭を、わたくしの皿にも取ってくれます。
「ありがとうございます、双鉄様」
「ならば食べよう。いただきます」
「いただきます」
「あむっ──ん──うん! うまい!!!」
「うふふっ、うれしうございます」
うれしい。とても。
正解はお前が決めろと──わたくしをご信頼くださって。
出した答えを大切に、真剣に扱ってくださって。
「ですから、ね? 双鉄様」
「うむ? なんだ、ハチロク」
「お誕生会のそのあとは。路子さまがおやすみになり、わたくしたちが、夫婦に戻ったそのあとは」
回路の向こう。タブレットの一番ふかいところ。
もしもわたくしにこころが存在しているのなら、その奥底から願います。
「双鉄さまのお誕生日を、あらためて。どうか、このすずにお祝いさせてくださいましね?」
「!」
お食事の手がとまります。
頼もしいほどの笑顔がくにゃりと、優しげな──悲しげなものにかわります。
「……ありがとう、すず。ぜひ、そうしてくれ」
「はい、双鉄さま」
正解なぞはわかりませぬ。
答えも与えていただけませぬ。
それでも双鉄さまが望まれるなら、すずはすずなりにお応えしましょう。
「今日のこの日が少しでも、貴方の喜びになりますように──全力で」
;おしまい