whisp 2021/05/05 14:40

2021年えみ誕生日記念ショートストーリー「おたんじょうびはかしわのひ!」(作:進行豹

「んゆ? かあたんかあたん!
きょうえみのおたんじょうびなのにケーキじゃないの??」

「ふふっ、けえきは晩の楽しみじゃ。
今日はえみのお誕生日であると同時にこどもの日でもあるからの。
三時のおやつは、かしわもちにいたそうぞ」

「わーい! かしわ!! えみ、かしわだいすき!
いっただきまーーーす! あむっ!
…………???」

「いかがした? ちまがネコダマシをされたような顔をして」

「かしわなのにおにくじゃなーい! あまいの! あんこ!!
おいしいけど、かあたんまちがえちゃった?」

「ああ」

透が四足を食せぬがゆえ、我が家で肉といわば鶏。
かしわ鍋があまりに好きすぎて、去年のことこの日の記憶なぞ、消し飛んでしまっておるのじゃろう。

「鶏肉もたしかにかしわであるの。
が、この餅も確かにかしわ餅で間違いない。
ほれ、おもちを包んでおるこの葉っぱ」

「はっぱ! あれ!? これ、ぷらちっくじゃない! ほんものだー!」

「うむ。『柏の葉』という。
柏の葉でくるんであるゆえ、柏餅じゃ」

「そおなんだー。かしわのおにくがはいってるんじゃないんだね」

「じゃ。じゃがの? 柏の葉と、鶏のかしわ──黄鶏との間にも浅からぬ縁がある」

「なになに!? それって、どーゆーえん??」

「うむ。今の季節は新緑の柏の葉じゃが、秋になれば黄葉し、冬間近には茶色くなる。
その冬近くの柏の葉の色が、黄鶏の羽の色とそっくりなのじゃ」

「そおなんだ! それってどんないろ!? えみ、みてみたーい!!!」

「む……。ああ、確か村長が庭で放し飼いにしておるの。見たいといえば見せてくれるであろ」

「わーい! いってきまーす!!!」

「な!? 少し待つのじゃ! どこかにでかけておるかもしれぬし、
電話をして約束をとりつけてからにせねば」

「そうなの? じゃ、はやくしてして、でんわ!」

「うむ」

……少しばかりせっかちで粗忽であわてんぼうじゃが、ともかく元気に育ってくれた。
新しい年齢でもどうかますます、健やかに育ってほしいものじゃ。

「──約束を取り付けたぞ。いますぐお邪魔してかまわぬそうじゃ」

「わーい! そんちょうさんとこでかしわみる!!」

「うむ!」

「それでね! よるはね! バースデーケーキとかしわなべ!!」

「うむ!?」

……健やかに。
そして願わくば。

もう少しだけ──しとやかに。

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