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ショートストーリーの記事 (69)

whisp 2022/08/09 22:38

【3分で読める】「汽子の塩コオヒイ」【レイルロオドのお話】

(あらすじ)

真剣な話の最中に、
汽子は突然マスターから、
「塩コーヒーを淹れてほしい」と頼まれます。

(登場レイルロオド紹介)



「汽子」(帝制鉄道院ホジ6005形6016専用レイルロオド)

<出身> 日ノ本 汽車製造会社製

<所属路線> 帝鉄→名護鉄に譲渡。名護鉄樺郡線(綺羅吉田駅→樺郡駅)

<能力・性格>  レトロ・モダンなハイカラお嬢。自分が1レイルロオドに過ぎず、
人間の役にたつために作られた”物”であることを重々承知しているプロフェッショナル。
かつで、蒸気動車が大量生産されていたころには多数の姉妹の一員として平々凡々にふるまっていたが、大廃線で姉妹たちが残らずいなくなってしまったのちには、
自分の外観や、日ノ本で唯一残った蒸気動車のレイルロオドという特別製ゆえ『人間がそうあることを望むようになった』ということを理解し、育ちのよい特別なお嬢様といった風情でふるまうようになり――もともとそうした素養が高かったこともあり、いつの間にか完全に身についてしまった。
性格面はそもそもガチのハイカラさんで、新しいもの・珍しいものが大好き。
何事にも固執せず大変さっぱりとしている。(飽きっぽいともいえる)。
また、慎み深さも生来のもので、石炭をそのまま食べるのははしたないと考え、
特製の石炭ミルでゴリゴリくだいて、コーヒーに混ぜて飲み干している。
性能的には世代落ち感が出てしまっているが、人気・集客力はいまだもって抜群の域にある、全国的に有名なレイルロオドの一体である。

【 シルバー会員 】プラン以上限定 支援額:500円

「汽子の塩コオヒイ」(作:進行豹

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whisp 2022/08/08 20:06

【3分で読める】「西瓜の名前」【レイルロオドのお話】



(あらすじ)

レイルロオド・サミットを終え、仲国に帰国した西瓜とマスター。
ふたりはきっとあるであろう次回の日ノ本視察に備え、
気になる点を、相談、修正していきます。

(登場レイルロオド紹介)



「西瓜」(仲国鉄路総公東富4 2000専用レイルロオド)

<出身> 仲国鉄路総公司

<所属路線> 仲国鉄路総公司 廣鉄集団回化機関区 枡陽運用区間

<能力・性格>  仲国国鉄の復権をかけた国家的事業に寄って開発された新型電気式ディーゼル機関車、東富4形の試作機レイルロオドとして誕生したため、極めて高性能。
仲国語、日ノ本語のバイリンガルで、両国の鉄道事情にも通じている。
今回のレイルロオドサミットに仲国国鉄のレイルロオド総代として派遣されてきたほどの実績と信頼とを積み重ねてもいる、品行方正なレイルロオド。
おおよそ欠点らしい欠点はなく、自分が万能型でかつ努力を惜しまないということを、非常にまっすぐ誇りにしている。
まさしく「ザ・優等生」。
過去には恋愛問題に苦しんでいたこともあったが、ハチロクたちが仲国視察をしたときにその問題を解消してくれたため、ハチロクに対して深い恩義を感じてもいる。
ので、今回は、仲国国鉄さらなる躍進のためのヒントを得てくると同時に、大恩ある朋友、レイルロオド・ハチロクのシャドーパートナーとして、サミットを成功裏に終わらせるサポートも務めようと、内心硬く決意している。
強いて弱点をあげるのならば、ユーモアに対する感覚の乏しさ。ギャグを余り理解できない。

【 シルバー会員 】プラン以上限定 支援額:500円

「西瓜の名前」(作:進行豹

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whisp 2022/03/26 23:24

20220326 れいな誕記念書き下ろしSS 『お誕生日と小さなウソと』 進行豹

2022/03/26 れいな誕生祭記念書き下ろしショートストーリー

『お誕生日と小さなウソと』 進行豹



////////////


「……わくわくしすぎて、眠れなかったのかなぁ」

前から一緒に準備していた、れいなのバースデー。
れいなは軽油しか飲めないけれど、パーティーを華やかにしたいからって、ふたりで一緒にケーキを焼いて、じゃがいものガレットをこしらえて。

「……くぅ、くぅ……くぅ、くぅ……」

寝息、深い。規則正しい。

──ブイヤベースにも火をいれて。
バゲットと一緒にテーブルの上に綺麗にならべて。

あとはもう、声をあわせて「いただきまぁす」って言えたなら、バースデーパーティーが始まったのに……

「まぁでも、食べ始めてから寝落ちちゃうよりは、ね」

だって、全部が手つかずだから。
れいなが起きれば、そこから楽しいパーティーを、なにひとつ欠かすことなく始められちゃう。

始められちゃう……はずなんだけど……

(チ、チ、チ、チ)

少しレトロなデザインの時計の針は止まらない。

23時51分。
あと9分しか、れいなのバースデーは残っていない。


「……くぅ、くぅ……くぅ、くぅ……」


──起こすべきか。寝かせておいてあげるべきか。
こういう決断、わたしはなかなか下せない。

どっちの選択にだってきっと、れいなは感謝してくれるけど……
どっちの選択にだって絶対に、小さな後悔もつきまとってくる。

「笑顔だけで、しあわせだけで、お祝いしたい一日だから」

だから、決断しなくちゃいけない。

わたしは、れいなを──





「ふぁ……あ……ふにゃあ……」


れいなが目覚める。
真正面にわたしを見つけて、寝ぼけ顔を安心したようにとろけさせ。

「ふあっ!!!?」

それから瞳がまん丸になる。

テーブルに並ぶ料理をみつめ、もう一度わたしに視線を戻して──
それからゆっくり、おそるおそるに時計を見つめて……

「よかったぁ、れいなのお誕生日に間に合いましたねぇ」

「うん、れいな」

ニ回だけ、時計の針を一時間ずつ戻したけれど。
明日の乗務は、わたし、ちょっぴり寝不足だけど。

この決断に、後悔はない。

「お誕生日、おめでとう!!!」

「わぁい、ポーレット、ありがとうございまぁす!」

だって、れいなの笑顔が咲いているから。
小さな両手でうれしげに、スキットルからグラスに軽油を注いでるから。

「「かんぱぁい!!」」


;おしまい

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whisp 2022/03/08 06:49

20220308ハチロクお誕生日記念書き下ろしSS 『くすり指の上の海』 進行豹

2022/03/08 ハチロクお誕生日記念描き下ろしショートストーリー


『くすり指の上の海』 進行豹


///

 
「ハチロク、お誕生日おめでとう」

「! ありがとうございます、双鉄さま」

はっと小さく息を呑み。
少し緊張した顔を、ゆるゆる笑顔に溶かしていく。

「万が一にもありえないこととはわかっておりましたが――ずうっと言ってくださらないのですもの」

ぷっと膨れる。
今日のハチロクは、いつもよりずっと表情豊かだ。

「わたくし、双鉄さまがお忘れなのかもと。もしもお忘れでないのなら、なにか怒らせてしまったのかしらと、随分気を揉んでおりました」

「気を揉んでいたとは思えぬ乗務ぶりだったが」

「そこはそれ、わたくしもレイルロオドでございますから」

「実に見事だ。けれど、今この瞬間だけは、すず」

軍手を外し、妻の名を呼ぶ。
8620の運転台の中では恐らく、はじめて取る行動だ。

「レイルロオドであることよりも、僕の妻であることを優先してくれ」

「はい! 双鉄さま、だんなさま。けれども、今は――」

「問題ない。運転停車中だ」

わずかな戸惑いの表情が、ははぁ、と悪戯げなものになる。

「ダイアを確認した瞬間から、違和を覚えてはおりました。
みかん鉄道のレイルロオドに確認しても、穏やかな沈黙の共感が返されるばかりで」

穏やかな沈黙の共感、か。
共感が文字通りの”共感”であり、文字や音声による情報伝達を越えるものであるのだなぁと、いまさらながらしみじみ感じる。

「いつもの乗務の、けれど普段にはない運転停車。
ご丁寧に、機関士とレイルロオドは休憩時間とするようにとの注記までついて。
しかもこの場所、この時刻。」

すずの目が、側方窓から外を見る。
夕陽が鮮やかに染める世界を。

「双鉄さまのご差配ですね?」

「お願いしたら、みなが応えてくれたのだ」

御一夜鉄道、みかん鉄道。
両社のたくさんの人たちが、こころよく調整に応じてくれた。

「つまり、この時間は、みなからすずへの誕生日プレゼントでもある」

「皆様から……ポーレット様や、宗方様や……」

声を出さずに、唇が動く。
――確かにだ。

天候ばかりは、調整のしようも無いことゆえに。
この夕焼けをプレゼントしてくれたのは、きっと彼女であるのだろう。

「そうして、これは僕からだ」

「まぁ!」

とても小さなプレゼントの箱。
すすで汚れてしまったのはいかにも申し訳ないが――

「とてもうれしうございます! ね、双鉄さま、だんなさま。わたくし、これを」

「いま開けてくれ。そうしなければ、意味が薄れる」

「かしこまりました。いま、すぐに」

すずも手袋を外しいそいそ、リボンを、包装を解きはじめる。
その指が、外箱を開け、ケースを開いて――

「まぁ! まぁ! まぁ! なんと美しい指輪でしょうか!」

「3月の誕生石の指輪だ。石の名を、アクアマリンという」

「アクアマリン……お名前もとても綺麗ですね」

「意味もいいぞ」

「どのような意味でございましょうか?」

「ラテム語で、アクアは水。そして、マリンは海」

「水と、海」

つぶやいて、うっとりとケースの中のアクアマリンを眺め。
その目がハッと、僕を見、窓の外を見る。

「双鉄さま、だんなさま、わたくし、この指輪を」

「ああ、つけてくれ。夕陽が沈み切るそのまえに」

すずが左手の手袋も外す。
簡素なプラチナの結婚指輪。それと並べて、アクアマリンの指輪を重ね付けする。

「……」

そうして、そっと、夕陽にかざす。

「――ああ」

声が。聞こえる。すずの声が。
そこに重なる明るい声も、たしかに僕の鼓膜に響く。

「トップ・オブ・ザ・ワアルド」

すずの指の上、海が煌めく。
世界一の夕陽に照らされて、オレンジ色に染まった海が。


「………………ありがとうございます、双鉄さま」

やがてゆっくり、すずが振り向く。
祈りを捧げるように組んだ両手の中心に、アクアマリンを輝かせ。

「夕焼け時には、どこでも。わたくし」

「うむ」

一歩を近づく必要もない。
すずも同時に歩みよってきてくれるゆえ。


「すず、お誕生日おめでとう」


;おしまい

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whisp 2022/01/04 13:36

2022年年賀小話 『七度四分のお正月』 進行豹

2022年年賀小話 
『七度四分のお正月』 進行豹


///

「双鉄さま、双鉄さま! おかえりなさいませ。すぐにお迎えできなくてすみません!」

袂のせいで、階段をしずしずとしか下りられない。なんともどがしいことでしょう。

「日々姫に晴れ着を着付けてもらっておりましたの……で」

ふすまをあけた眼の前に、けれど双鉄さまのお姿はなく。

「……いいな。新しい晴れ着か。きらびやかで、お前にとても良く似合っている」

お声。低いところから――!

「双鉄さま!? いったいどうなされたのですか?」

「いや、なに。大事はない。少し発熱しただけだ」

「発熱!? 大事ではないですか!!」

「微熱だ。37.4℃。なれぬ雪国への出張で、少し体が驚いてしまっただけのことかと思う」

「あああ、なんということでしょう。とにもかくにもおやすみ――は、もうされておられますね」

いけません。
緊急時にこそ落ち着くことが第一です。
慌てずまずはひとつ大きく深呼吸して――

「すううう。はあああああ」

――うん。落ち着きました。
では、なすべきことを考えましょう。
双鉄様はお熱を――ああ、左様です!

「お熱には絞り手ぬぐいが一番ですよね、わたくしすぐに用意してまいります」

「それは助かる、ありがt」

「絞り手ぬぐいでございます! それから、水分補給のためのおみかん。ああ! 加湿。加湿も必須でございますね。
石油ストオブに火をつけて……うん。いま鉄瓶に水を足してまいります」

「ああ、うむ。ハチロク」

「大丈夫です、双鉄様。清美機関士が大昔お風邪を召されたときのこと、わたくしきちんと覚えております。
双鉄様のお風邪にも、きっと役立つ看病を果たしてみせましょうとも」

「う……む」

「水を足して参りました! っと、お部屋、すでに温まってきておりますね。
なによりのことですが、お体、汗をかいてらっしゃるのではないですか?」

「いや、ハチロク――すず」

「お体を拭くには新しい手ぬぐいが必要ですね。と、申しますかお着替えも」

「すず! 頼む」

「!!?」

「落ち着いて。僕の話を聞いてくれ」

「あ……あ、はい」

いやだ。わたくし。
落ち着こう落ち着こうと思っていたのに、完全に舞い上がってしまっておりました。
清美機関士にも大昔、同じお叱りを受けたこと――いまさらながら思い出します。

「今の僕に何より必要なのは安静だ。静かに休むそのことだ。
だから、すず。あれこれと世話を焼いてくれることは嬉しいのだが――」

「はい。かしこまりました。わたくし、おやすみの邪魔をしないよう、すぐにお外に」

「いや」

がっしりと。布団の中から伸びた手が、わたくしの足首を捕まえます。

「双鉄さま?」

「あ、いや――いや――すまん、すず。いっていい」

「いえ。双鉄さま、わたくしをお引き止めになられようとしてくださった……のですよね?」

「うむ。あー……その、だな。素直にいえば、僕はすずに、そばにいてほしいと思うのだ」

「はい!」

「だが、安静の邪魔をしないよう側にいてほしいということは、何もするなというに等しいと思い直した。
せっかくのすずの正月休みを、晴れ着姿を、そのように無駄な時間につきあわせるなど」

「いえ! いえ――双鉄様」

するり、と帯紐を解いてしまいます。
きちんと脱ぐには日々姫の手助けが必要ですが、必ずやわかってくれるはずです。

「わたくしの晴れ着の役割でしたら、すでに見事に果たされました。
『似合っている』と、お褒めいただいたあの瞬間に」

「……うむ」

「その上でわたくしが静かにお側にいることが、
双鉄さまのお休みの助けになるのでしたら。それほど有意義な時間は他にありませぬ。
わたくし、すずは。双鉄様の妻ですので」

「そうか。なら、甘えよう」

――安心してくださったのでしょう。
双鉄さまのお顔がほっとゆるみます。
まぶたが静かに降ろされれば、まつげの長さがふと目につきます。

「なんでもいい。目につくものを順番に。
お前の声で、低く落ち着いたその声で、僕に静かに聞かせてほしい。
それこそが、僕にとってはなによりの子守唄になる」

「かしこまりました。双鉄さま。だんなさま」

声。わたくしの声。
普段どおり、と意識をすれば、なんだか上ずってしまいそうです。

「お布団があり、わたくしの大事な双鉄さまが、その上でお休みになっておられます。
お布団のわきには……ああ、おかわいそうに、よほどご気分がすぐれなかったのでしょうね。
双鉄さまらしくもなく、背広が脱ぎ捨てられてしまっています」

と、と、と、と軽やかで静かな足音。
日々姫がそっと、様子を覗きにきてくれます。

「背広のわきには、旅荷。双鉄さまのご愛用のトランクと、見慣れぬ紙袋もございます。
中身はきっとお土産でしょうね。
ああ――うふふっ、石炭も覗いておりますね?
津輕の石炭でございましょうか? わたくし、楽しみでございます」

しーっと合図を送ってそののち、双鉄さまを指差せば、日々姫もすぐに察してくれます。
あっというまに晴れ着をきれいに、わたくしから剥がしてしまいます。

「双鉄様の枕元には、ちりがみ、ゴミ箱。なんとご準備がよろしいことでございましょうか。
こんなときにこそ、わたくしを頼って、使っていただけましたなら、それもうれしいことですのに」

日々姫が再びと、と、と、と静かに階段を上がっていきます。
その間にわたくしもお寝間に着替えて――あら

「双鉄さまは……よほどお疲れだったのでしょうね。眠りに落ちてしまわれました。
ですので、おやすみを妨げないよう――」

そっと、そうっと、布団をめくって、お隣に……

「いまわたくしの真横には、大好きな双鉄さまの寝顔があります。
ですので当然、妻として――」

(ちゅっ)

そうっと軽く口付けて、
わたくしもこの唇と、そうしてまぶたをやすませましょう。

「おやすみなさい、双鉄さま。明日の朝には、お熱、下がられますように――」


;おしまい

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