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右田双鉄誕生祭の記事 (2)

whisp 2021/02/03 22:06

2021年右田双鉄お誕生日祝いショートストーリー 「正解の無い誕生日」(進行豹

こんばんわです! 進行豹でございます!

一日遅れでございますが、昨日は双鉄誕でございました!
めでたい!!!

パッチシナリオ(れいな)書いてて頭から抜けてて何の準備もなかったので、
アンケートとってみましたら
https://twitter.com/sin_kou_hyou/status/1356771355572592641?s=20

「圧倒的ハチロク」でございましたので、ハチロク双鉄でお誕生日お祝いしショートストーリー書きました!

書き始めたら思いもつかない方向にいってしまいましたけれども、これが今年の双鉄とハチロクのお誕生日でございます!

もしよろしければ!!!


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2021年右田双鉄お誕生日祝いショートストーリー
「正解の無い誕生日」 進行豹


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ここのところ、毎年でございますね。
2月の2日。双鉄さまのお誕生日に、真闇さまにも日々姫にも、お泊りの用事ができるのは。

「──うん。」

それだけ信じていただけている。
お二人にも大事な双鉄さまを、1レイルロオドのわたくしに、すっかり預けてくださるほどに。

「飾り付け、よし。クラッカア、よし。ケエキ、よし。プレゼント、よし」

だから、指さし確認します。
そのご期待に背かぬよう。
背かぬことで双鉄さまに──きっと、喜んでいただけますよう。

「お料理も──よし!」

この日のために、たくさん教えていただきました。
オオドブルは小エビのカクテル。
スウプはビシソワアズ。
サラダは水菜と鶏ささみ。
メインディッシュはロオストビイフ!

冷めても美味しくいただける、ご多忙な双鉄さまにぴたりお似合いのメニウです。

「……なのに。……それにいたしましても」

遅すぎます。
お誕生日を二人ですごすそのために、せっかくおやすみをあわせましたのに。

ポーレットさまからのお電話で、
「やっかいごとだ」とお出かけされて、そのまま、いままで……夜八時まで。


「……………………せめて、ご連絡のひとつもいただけましたら」
「すまん、遅くなった」
「双鉄さま!」

お迎えし、ひととき気分が華やいで。
けれどもすぐさましおれかけます。

「……双鉄さま、随分とお疲れのご様子ですが」

「いや──。いや。うん。正直にいえば、少し疲れてしまっている」

「で、ございましょうね。お顔の色が真っ白です。
お食事になさいますか? それともお風呂──あるいは、クマ焼酎でお体の内側をあたためられますか?」

「食事にしたい」

わたくしの肩越しちらりと、双鉄さまが食卓をご覧くださいます。

「たいへん旨そうなご馳走だ。僕のため──路子のためにも、用意してくれたものなのだよな」

「で、ございます」

こんな状況であるというのに、嬉しくなってしまいます。
路子さまのためご用意をした、オレンジジュウスとグラスとに、双鉄さまが気づいてくださったそのことに。

「ならばなおさら、祝の席を楽しみたい。……っ。楽しみたい、のだけれど──」

「双鉄さま?」

「──すまん。感情が乱れているのだ。鎮めて戻ろうとしたのだが、やりきれなさが収まらん」

ほうっと、深く。重い息。

「このままいれば、すず、お前にさえ八つ当たりをしてしまいかねない。
未熟極まり恥ずかしくあるが……それが、今の僕の正直なところだ。ゆえ」

「でしたら、ね? 双鉄さまがお嫌でなければ──」

離れようとする双鉄さまの袖口を、指先だけでつまみます。
双鉄様が動かれるのなら、すぐさまほどかれてしまう強さで。

「どうぞ一緒に。今宵は楽しまず過ごしましょう」

「……」

「双鉄さまとわたくしと──この先[十年二十年'ととせはたとせ]と、時を重ねて参るのですから……」

機能停止が訪れなければ──そんな無粋なひとことは、いまは奥底に沈めおきます。

「お祝いひといろでは無いことも、いつしか振り返り見るのなら、ふたりが重ねる時の絵巻の、よいアクセントになってくれるかと存じます」

「……。すず」

「あ」

ぎゅっと、ぎゅうっと。
双鉄さまが両腕で、わたくしを抱きしめてくださいます。

「双鉄さま……」

呼吸。体温。いつもより濃く香る体臭。
共感以上に、つたわってくるような気がいたします。

「……双鉄さまは、悲しんでいらっしゃるのですね」

「…………。かもしれん。悲しみと、いきどおりと──。申し訳無さも無論ある。もどかしさも。自分に対する情けなさも」

「はい」

「契約ごとが、うまくいかなかっただけなのだ。暗礁に乗りあげかけて、僕に舵取りを委ねられ──
けれど、期待に応えることが叶わなかった。いってしまえば──ただそれだけのことなのだ」

「はい」

「引き継ぎ前は、ふかみが担当の案件だった。ふかみにとって、御一夜鉄道ではじめての、大きな交渉ごとだった。
……順調に進捗しているはずだった。けれども、急に──」

「……」

「だからこそ──ふかみのためにも、なんとしてもまとめてやりたかった」

「左様でしたか……」

「──僕一人のことであれば、失敗してもやりなおせばいい。いつだってそうして来た。
けれど……ふかみのあの落ち込みようは…………」

それは、ふかみさまの問題。
一昔前の双鉄さまなら、そうと割り切ってらっしゃいました。

「だから、僕は──」

変化している。双鉄さまも──恐らくきっと、わたくしも。

「ね、双鉄さま」

正解などはわかりませぬ。
わからないなら、どうすればいいか──双鉄さまが、教えてくださったことをします。

「よろしければ、ね? おねだりをしていただけませんか」

「おねだり?」

「それを今年の、お誕生日のプレゼントに差し上げたいのです。
双鉄さまが厳しく叱ってほしいのでしたらわたくしは、厳しいハチロクをさしあげましょう。
双鉄さまが甘えたいなら、どんな双鉄さまだって、すずは甘やかにお包みしましょう。
……そうして、もしも。双鉄さまが、もしもお一人になられたいなら」

「であれば、すず」

「はい」

「願わくば、いつものお前のままでいてくれ。
僕にあわせるのではなく、お前のありたいお前でいてくれ。
今の僕にとっての最善を──間違えようとなんであろうと、僕にプレゼントしてほしい」

「かしこまりました。双鉄さま」

いつもどおりのわたくしは──いったいどのようなわたくしでしょう。
やはり、正解はわかりませぬ、が──

「でしたら──少し、失礼します」

(ひょいっ)

「!?」

れいなほどではありませんが、双鉄さまのおひとりくらいは簡単に抱きかかえられます。

食卓につけ、ナプキンをお首にまいて──今宵はお酒はよしましょう。
路子さま用のオレンジジュウスを、コップふたつになみなみつぎます。

「どうぞ、乾杯の音頭をお取り下さい。双鉄様」

「乾杯──なんのだ」

「もちろん、路子さまのお誕生日のお祝いの」

「っ!」

「双鉄さまのお誕生日は、そのあとで。
夫婦の床で、ふたりっきりで、双鉄さまを甘やかしながらお祝いしましょう」

「ああ」

一瞬目を閉じ、お口のなかで何かを小さくつぶやかれ。
そうして高らかに双鉄さまは、グラスをかかげてくださいます。

「ハチロク。路子の誕生祝いを用意してくれてありがとう」

「当然のことでございます。[双鉄様'マイマスター]」

「では、乾杯の音頭を取ろう」

「喜んでご唱和いたします」

真水のグラスを手にとって、双鉄さまにならって小さくかかげます。

「路子。お誕生日おめでとう。いつも見守ってくれていてありがとう。
おかげで僕は、今年もこの日を迎えることができた」

双鉄様です。いつもどおりの。

(あるいはご無理をもしかして、強いてしまっているのかもしれません……)

けれども。そうであるとして。
路子様のお誕生日をもしもお祝いしなければ、その傷の方がより深く、双鉄さまを苛まれるかと、わたくしは──

「ハチロク、なにをぼーっとしている。乾杯だ」

「あ!? もうしわけございません」

「晴れの日に詫びは無粋だ。唱和してくれ。路子と僕のお誕生日に──『乾杯』」

「『乾杯!』」

オレンジジュウスを一気に飲まれ、メインディッシュを──ロオストビイフを双鉄さまはお切りになられて──

「ハチロク、お前も、ほら」

バスケットから瀝青炭を、わたくしの皿にも取ってくれます。

「ありがとうございます、双鉄様」

「ならば食べよう。いただきます」

「いただきます」

「あむっ──ん──うん! うまい!!!」

「うふふっ、うれしうございます」


うれしい。とても。

正解はお前が決めろと──わたくしをご信頼くださって。
出した答えを大切に、真剣に扱ってくださって。

「ですから、ね? 双鉄様」

「うむ? なんだ、ハチロク」

「お誕生会のそのあとは。路子さまがおやすみになり、わたくしたちが、夫婦に戻ったそのあとは」

回路の向こう。タブレットの一番ふかいところ。
もしもわたくしにこころが存在しているのなら、その奥底から願います。

「双鉄さまのお誕生日を、あらためて。どうか、このすずにお祝いさせてくださいましね?」

「!」

お食事の手がとまります。
頼もしいほどの笑顔がくにゃりと、優しげな──悲しげなものにかわります。

「……ありがとう、すず。ぜひ、そうしてくれ」

「はい、双鉄さま」

正解なぞはわかりませぬ。
答えも与えていただけませぬ。

それでも双鉄さまが望まれるなら、すずはすずなりにお応えしましょう。

「今日のこの日が少しでも、貴方の喜びになりますように──全力で」


;おしまい

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whisp 2020/02/02 22:13

2020年 双鉄&路子お誕生日お祝いSS『双鉄様のお誕生日』(進行豹

2020年 双鉄&路子お誕生日お祝いSS『双鉄様のお誕生日』 進行豹

///

「どしたのハチロク?」

日々姫は無邪気にはしゃいでおります。
台所でごちそうをつくってらっしゃる、真闇様も同じくらいに浮き立たれているご様子でした。


いえ、お二人の立場でしたら、こころのそこからはしゃぎ、寿ぐ。そうしないほうがおかしいでしょう。
けれど、けれどもわたくしは――

「あ……ひょっとしてだけどハチロク。『資格』みたいなこと気にしちゃっとーと?」
「!!!?」

日々姫の言葉に驚かされて顔を跳ね上げたその瞬間、日々姫は逆にわずかにうつむいてしまいます。

「あー、やっぱりかー。やっぱりねー。
そぎゃんよね。そぎゃん、思わんわけがなかとよね」

「あ」

日々姫が、わたくしの気がかりを言い当てた。
それは、つまりは――おそらくは。

「日々姫も……同じことを思い悩んでいるのですか? 明るくふるまう、その裏側で」

「あ、ううん。私のは、現在形じゃなくって過去形」

「過去形」

ふっと、日々姫の目が和らぎます。
わたくしのことを見つめつつ――わたくしごしに遠い何かを……おそらく、過去を見つめます。

「あの頃は――にぃにが私のにぃにになってくれたばっかりの頃は、私、ちいちゃかったけん。
今ではとても……大人にはなかなか聞けんようなことも、ね? 素直に甘えて、聞けたんよ」」

「幼いがゆえに、聞けたこと」

ああ、でしたらやはり、そうなのでしょう。
かつての日々姫。ちいさな日々姫も、いまのわたくしと同じ悩みを――

「『にぃにぃのお誕生日。ひーちゃんお祝いしてよかと?』って
『お誕生日で、2月2日でにぃにぃの日やけん。ひーちゃんお祝いしたかとよー』って」

「……左様、ですよね。だって、双鉄様のお誕生日は……」

「うん。路子ちゃん――小さな頃に亡くなっちゃった、にぃにの双子の妹さんの、お誕生日でもあるけんね」

「左様です。その上……そのうえ、路子さまは――」

言葉が止まってしまいます。
発声するよう出す指示に、けれども喉が――

「だからこそ。僕は祝ってほしい」

「にぃに!?」「双鉄様っ!?」

いつから、わたしたちの話をお聞きになられていたのでしょうか?
ふすまを開けて双鉄様は――ああ、穏やかな目で日々姫を見ます。

「日々姫には、遠い昔におんなじことを聞かれたな」

「うん」

双鉄様と、日々姫の時間。
わたくしが知らない、二人が積み重ねてきた時間。

そこにわたくしは、どうやったって触れ得ない……
当然のことに決まってますのに、回路にちりり、原因不明の負荷が生じてしまいます。

「そのとき、僕はなんと答えた?」

「『祝われる資格は僕にはないが、それでも、どうか祝ってほしい』って」

「そうだったか」

「って、にぃに、覚えてなかと!!?」

「祝ってほしいと絞り出したことは覚えている。けれど――」

双鉄様の微笑みに、雲がかかってしまいます。

「――あの当時は、本当に――無理くり絞り出しただけだったのだ。
今の僕が考えるなら、とても愚かしく傲慢なこととはわかるのだけれども……」

「『右田家の人が祝いたいといってくれるなら、それを受け入れるのも僕の責務だ』みたいな感じに?」

「っ!!?」

日々姫に今度は双鉄様が、驚かされたご様子です。
やっぱりね、と、日々姫は小さく笑います。
とても自然に、とても綺麗に――いつもより大人びてみえる横顔で。

「けど、ね? にぃに」
「だな」

言葉にならない――いえ、言葉にしない。言葉を発する必要もない、ふたりの会話。
双鉄様と日々姫の間に、共感めいたなにかがあると感じます。

共感ほどに便利ではなく、多くを伝えることも叶わず。
けれどもきっと共感よりも、深くて強い、静かな何かが。

「いまの僕には、当時の僕が頑なで哀れで愚かと感じる。
そう感じることができるほど――」

双鉄様が、ぐるりとあたりを見回します。
右田の家を。この居間を。懐かしそうに、愛おしそうに。

「……僕は、愛情を注いでもらった。
自分自身の存在価値を、ふたたび信じられるほど――
愛情を、信頼を寄せてもらって……僕は、右田の家族になった」

「うん」

「とっくのとうに許してもらえていた場所に――
ようやく僕は、自分の意思で、望んで立った」

「うんっ!!!」

ああ、なんと嬉しそうな頷きでしょう。
満面の笑みを浮かべる日々姫を、双鉄様はにこやかに見つめ――っ!!?

「双鉄、様?」

双鉄様が視線を移し、わたくしを見つめてくださいます。
雲を払った、あたたかなまなざしでわたくしを見て――
その手が伸びて――

「あ」

帽子の上からぽんぽんと、わたくしを撫ぜてくださいます。

「そうしてハチロクを僕たちの家族と迎えたあの日。
はにかむハチロクを見た瞬間に、理解したのだ」

「……何を、ご理解されたのでしょう?」

日々姫はもう、答えをわかっているのでしょうか?
共感めいたなにかが再び、双鉄様と日々姫を結んでいるのでしょうか?

日々姫はただ、笑顔でわたくしたちを見つめるばかりで――
なのに、とても不思議なことに。原因不明の回路の負荷を、今度は少しも感じません。

「僕に家族が増えるなら。路子にも――父さんにも、母さんにも――新しい家族が増えるのだと」

「!」

家族――家族。
レイルロオドであるわたくしが、いただけるはずもなかった絆。

わたくしが与えてしまった災いでさえ、断ち切ることなく繋がれている――

「やけんね、ハチロク! にぃにと路子ちゃんとのお誕生日を、私は全身全霊で、思いっきりにお祝いしたかと!!」

「――はい」

ぐちゃぐちゃに混乱しかけた思考をぐいと、日々姫の言葉が牽いてくれます。
ああ、左様です。考えるのは、悩むのは、いつでも、一人でもできることです。

ですからいまは、回路よりもっと深いところから――
タブレットの奥底から湧き出すようなこの感情に、ただただ素直に従いましょう。

「……」
「……」

日々姫と自然、視線が合います。頷きあいます。
声が、想いが重なります。


「にぃにぃ! お誕生日!!!! おめでとう!!!!!!」
「双鉄様!! お誕生日!!!! おめでとうございます!!!!!!」

あらら、ぴたりとはいきません。
けれど――けれども――破顔一笑!

双鉄様のお顔がしあわせにとろけます。

「うん! ありがとう!」


;おしまい

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