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読み聞かせの記事 (7)

whisp 2020/05/23 22:47

【収録台本】まいてつ:ポーレット読み聞かせ『犬が言葉をなくしたおはなし』(進行豹

こんばんわです! 進行豹でございます!!!

あやかし郷愁譚の購入特典で
https://www.dlsite.com/maniax/promo/ayakashinostalgia

『まいてつ読み聞かせボイスドラマ』 全7話

が、18作品コンプリート特典としてついてくることになりました!!!

内訳は以下の通りです!

・日々姫 「長靴をはいたネコ」
・ポーレット 「犬が言葉をなくしたおはなし」
・れいな 「炭鉱の白犬」
・ふかみ 「うさぎのもちつき」
・凪 「清柾公(せいしょこ)さんの虎退治」
・真闇 「ネコ岳の猫」
・稀咲 「きつねのみそしる」



というわけで、台本紹介まいりましょう!!!

前回はひーちゃん「長靴をはいたネコ」をご紹介しましたので、
本日はポーちゃん! ポーレット! 市長で社長の雛衣ポーレットさんの、『犬が言葉をなくしたおはなし』をご紹介いたします!


実はこの台本、もう一本、とても短いお話も読み聞かせしてもらえちゃうお得作品でございますので、ぜひぜひお楽しみいただけましたらうれしいです!!


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;ポーレット、わんわんランジェリー抱き枕特典ボイスドラマ
;『ポーレットの読み聞かせ「犬が言葉をなくしたおはなし」』
;進行豹 v100_2016/12/24_v110_161226


;以下、セリフは全てポーレット
;タイトルコール

「雛衣ポーレット、わんわんランジェリー抱きまくら特典ボイスドラマ
『ポーレットの読み聞かせ「犬が言葉をなくしたおはなし」』」


;本編

「今日も一日、おつかれさまでした」

「あ……れいな、もう寝ちゃったんですね。
あのこ、すごく楽しみにしてたんですけど」

「あなたにわたしが読み聞かせするの――
『一緒にききたいですぅ』っていって」

「でも。今夜だけじゃないですからね。
次の夜――早く帰ってこれた夜に、
れいなにも一緒に読み聞かせてあげればいいし」

「それに……ほんとはちょっぴり、
嬉しい気持ちも、あるんです」

「だって、初めてじゃないですか。
あなたがわたしに、
読み聞かせをして欲しい、なんて、おねがいしてくれたのって」

「だから、記念すべき一回目だから。
わたしがあなたに、初めてしてあげる読み聞かせだから」

「最初だけは、あなただけに。
あなたのためだけに読みたいな、って、
ちょっとは、思ってたりしたんです」

「でも――
れいながとあなたが一緒ににこにこしてくれるのも、
すっごくすごく見てみたくて」

「だから、うふふ。
本当はどっちでも、わたし、ラッキーになれちゃったんですけど」

「それでですね、いろいろ、悩んだんです。
読み聞かせするお話」

「わたしが一番好きなのは、あっという終わっちゃうお話なんですよ。
だから、あんまり読み聞かせには向いてなくて」

「あ、でも。あっという間に終わっちゃうから、
本番の前の練習にいいかもしれませんね」

「それじゃあ、これは、練習ですから。
“あなたのための、はじめての読み聞かせ”には数えませんからね?」

「ちょっと、練習いってみます。
わたしが一番すきなお話。
フランクの、とってもとっても短い民話」

「『犬が片足をあげるわけ』」


;以下の『』で始まる部分は、読み聞かせ
;「」ではじまる部分は、その間の会話です

『昔は、犬も言葉を話せたもんだった。
これは、そのころのお話だ』

『オス犬たちが大宴会をやっていた。
みんな大いに飲んで食べ、トイレにいきたくなってしまった』

『近くに手頃な壁があった。
みんな、そこに一斉におしっこをした。
みんなが一斉におしっこをしたもんだから。
壁は崩れて、たくさんの犬が下敷きになった』

『それを悲しんだ犬の王様はいいつけた。
「これからは、壁が崩れて来てもいつでもささえられるよう。
おしっこのときは、必ず片足をあげなさい」』

『だから今でもオス犬は、おしっこのとき必ず片足をあげるのさ!』


「――って、いうお話です。
ね? 本当に短くて、読み聞かせ向きじゃないでしょう?」

「あと、フランクの民話って――わりと、
『めでたしめでたし』では終わらないんですよね。
そもそも『めでたしめでたし』みたいに、
お話を締めくくる専門のフランクの言葉って、ないし」

「ちょっと、感じが違うんですよね、多分。
わたしのパパ――日ノ本人のおとうさんがしてくれる読み聞かせって。
『おはなしはこれでおしまい、おやすみなさい』って感じでしたけど」

「なにか、ちょっと心に残るものがあって、
その余韻を抱きしめたり考えたりしながら、眠る感じで」

「で、ママの――フランクのおはなしは。
『おもしろかったでしょ、ドヤ!』って感じで」

「なぁんにも残らないんですよ。からっぽ。
頭の中をぜぇんぶすっからかんにしちゃって、
それでストーンって眠るみたいな感じなのです」

「ウィット? っていうのかな。わたし、半分は日ノ本人だから、
あの独っ特! の感覚は、なかなかわからないんですけど」

「でも、読み聞かせおわってくれたとき、
あのママが、『おもしろかったでしょ。ドヤ!』って顔してくれるのも含めて、
ほんと、好きで」

「日ノ本のお話の読み聞かせ。
むしろ、わたしがあなたにしれもらいたいかな? っても思うから」

「だから、これから読みきかせするお話。
本番用の、あなたへの、初めてのお話も、
フランクのお話にしてみました」

「フランクの。これも――犬のお話」

「『犬が言葉をなくしたおはなし』」



『大昔、神様は人間に言葉を与えました、
人間は、一番の仲良しの犬に言葉を分け与えました』

『人間と犬とは、同じ言葉を使いながら、
仲良く、けれど別々にくらしていました。
人間には人間の王様がいて、犬には犬の王様がいました』

『犬の王様はミロワール王といいました。
ミロワールは、フランクの言葉で“鏡”という意味です』

『ミロワール王はその名のとおり、
とても公平に犬の国を治めました』

良いことをしたものには良いお返しを。悪いことをしたものには悪いお返しを。
それを続けているだけで、国はどんどん平和に、大きくなっていきました』

『いっぽう、人間たちの国は、
青の国と赤の国とにわかれてしまい、
しまいには、ケンカをするようになりました』

『人間たちは、犬の国にも使者を出し。
「青の国に味方してくれ」
「赤の国に味方してくれ」と、頼んできました』

『「このままでは、
青の国に味方した犬たちと、赤の国に味方した犬たちとが、
犬同士、ケンカをすることになってしまう」』

『争いが嫌いなミロワール王は、青の国と赤の国、両方の国に使者を出し、
「仲直りしてはどうでしょう」といってみましたが、
人間たちのケンカは、ますます激しくなるばかりでした』

『自分だけではどうにもできないと思ったミロワール王は、
知恵ものだと評判の二匹の犬を呼び寄せて、
会議を開くことにしました』

『太陽という意味の名前を持つソレイユがまずやってきました。
とても大きな、白い犬です』

『ソレイユはあいさつもそこそこに、
「ケンカばかりの人間たちをひとつこらしめて、やりましょう」
と言いました』

『「子犬のしつけと同じです。
咬みつく犬は、咬まれる痛みをまだ知らない犬。
一度ガブリとやってやれば、
してはいけないことなんだとわかるようになります」』

『「なるほど、それもひとつの考えだ」
王様は慎重に答えます』

『会議の始まる寸前になって、
小さな黒犬が飛び込んできました。
月という意味の名前を持つ、リュヌです』

『呼び寄せたソレイユとリュヌがそろいましたので
王様は、会議を開くことにしました』

『リュヌは王様にうながされてから、、
ゆっくりと口を開きます』

『「われわれ犬に、言葉をわけてくれたのは人間です。
その人間に、言葉が通じぬわけがありません。
ケンカで熱くなってる頭を冷やしてもらい、
それからまた話してみるのはいかがでしょう」』

『「なるほど、それもひとつの考えだ」
ミロワール王はじっくり考え、言いました』

『「犬同志が争いあって傷つくことを防ぐために、
人間と争いあって傷ついてしまっては仕方ない。
ここは、リュヌの考えをとろう」』

『王様の決めたことなら、絶対です。
ソレイユもすぐに従います』

『「それでは、どうやって人間に頭を冷やしてもらうかを決めましょう」
ミロワール王とソレイユとリュヌとで日が沈むまで話しましたが、
いい考えは思いつきません』

『「我々三匹では知恵がたりない。
人間のことをもっとよく知るものを呼び、
次の会議で決めるとしよう」』


『次の日は、
星という意味の名前を持つ、エトワルが会議に加わりました。
エトワルは、人間と一緒に旅をしたことがある犬でした』

『ソレイユはまた、王様の前に出るなり言いました。
「ケンカをしている頭を冷やすには、やはり水浴びがいいでしょう。
人間の王様たちを、水浴びに誘いましょう」』

『「なるほど、それもひとつの考えだ」
王様は慎重にいいました』

『リュヌはまた、王様に求められてから言いました。
「眠たいときには頭がカッカするものです。
人間の王様たちと一緒にぐっすり眠ったならば、必ず頭も冷えましょう。
誘うのであれば、お昼寝です」』

『「なるほど、それもひとつの意見だ」
王様は慎重にいいました』

『ミロワール王は、新しくきたエトワルに意見を聞きました。
ブチの柄をしたエトワルは、しっぽをふりふり答えます』

『「人間もぼくたちも、おいしいものでおなかいっぱいになったら、
おこった気持ちなんてなくなっちゃいます。
人間の王様たちを呼んで、お食事会をひらきましょう」』

『「なるほど、それもひとつの考えだ」
ミロワール王は、じっくり考え、いいました』

『「ケンカをしている者同士で、水浴びもお昼寝もむつかいだろう。
だが、お食事会ならできるかもしれぬ。
ここは、エトワルの考えをとろう」』

『王様の決めたことなら、絶対です。
ソレイユとリュヌも従います』

『「それでは、お食事の内容を決めましょう」
「どこでお食事会をするかも決めましょう」』


『ミロワール王とソレイユとリュヌとエトワルで、日が沈むまで話しましたが、
これという考えは思いつきません』

『「我々四匹では知恵がたりない。
人間のお食事会のことを知るものを呼び、
次の会議で決めるとしよう」』

『次の日は、
空という意味の名前を持つ、シエルが会議に呼ばれました。
シエルは人間と一緒に長くくらしことがある、年老いた犬でした』

『ソレイユはまた一番最初にやってきて、王様の前に出るなりいいました。
「肉を嫌いな犬はいません。スープが嫌いな犬もいません。
肉のスープを出したなら、まず人間も喜ぶでしょう」』

『「なるほど、それもひとつの考えだ」
王様は慎重に言いました。』

『ソレイユの次にエトワル。
エトワルの次には新しくくわわったシエルが会議にやってました。
会議がはじまる寸前には、リュヌも飛び込んできました』

『「さて、今日の会議の全員がそろった」
ミロワール王は、しっぽをぴいんと立てています』

『「青の国と赤の国とのケンカはひどくなる一方で、
いよいよ戦争になるかもしれん」』

『ミロワール王が言った、まさにそのとき。
いっせいに、みんなが顔をしかめます』

『ソレイユもリュヌもエトワルもシエルも。
それどころか、ミロワール王までも』

『「こっそりおならをしたのは誰だ」
王様が、静かに尋ねます。
けれど返事はありません。
お互いの顔を、ちらちらと盗み見るばかりです』

『「おならが出るのは仕方がない。
だが、大事な会議の最中に、こっそりするとはどういうことだ。
『失礼します』とひとこといって、外に出てすればいいだろう」』

『王様の声が、だんだん大きくなってきます。
みんなはしょんぼりうなだれます』

『「あらためて聞く。こっそりおならをしたのは誰だ」』

『けれども、誰も返事をしません。
王様の声はますます大きくなってきます』

『「もう一度だけ聞く。こっそりおならをしたのは誰だ!」』

『やっぱり、誰も返事をしません。
王様はすっかりカンカンになり、おおきな声で怒鳴ります』

『「誰も返事をしないのだったら、もう言葉などいらんだろう。
おならをしたのがいったい誰かわかるまで、言葉を人間に返してしまおう!」』

『王様の決めたことなら、絶対です。
そのときから、犬は言葉を話せなくなってしまいました。
言葉を話せなくなると、犬の国はあっという間になくなりました』

『犬たちはひどく嘆きかなしみ、言葉を返してもらおうと、
おならをしたのがいったいだれかを突き止めようと、
それからずっと、今日のこの日もがんばっています』

『もしも嘘だと思うなら、公園にいってごらんなさい。
見知らぬ犬と犬とがばったりであったときに、
何をするのか見てみなさい』

『「おならをしたのはお前か?」と、
「そっちこそおならをしんじゃないか?」と、
お尻のにおいを、必ずクンクン、かぎあっていますから!』



「はぁい! これでこのお話はおしまいです!」

「って、わたしいまちょっとしちゃってたかもしれませんね。
『ドヤっ!』っていう顔」

「こういうお話、大好きなんです。
まじめな顔して、ほんっとくだらないこといっちゃうみたいな」

「わたし――ねぇ? 残念なことに、
ウィットのセンスも、ユーモアセンスもあんまりないじゃないですか」

「れいななんて、それこそお箸が転がったって笑うのに――
わたしが、『あ、イケてる!?』って思うこといったりしても、
全然笑ってくれないんですよ?」

「こないだ、しょうが焼き作ろうと思って、
だけど、買い置きしてたつもりのしょうがが見つからなくって」

「それで、れいなに、
『生姜焼きにしようと思ってたんだけど、
しょうががないから、赤ワインのソースで焼くわね』
っていってみたいんです」

「ショウガがないから、しょうがない。
わたし、面白いかな? って思ったですけど、
でも、れいな、くすっとも笑ってくれなくて」

「笑ってるのは笑ってるんですけど、
いつもとおんなじニコニコで、
『赤ワインのソースにも、きっととってもおいしいすよぉ』って、
もう、ダジャレのこと気づいてくれてるのか、くれてないのかもわからなくって」

「わりと……れいなだけじゃなく、
みんな、そういう感じなんです。
――あなたもそうですよ?
わたしの精一杯のユーモアを、すごく、流すこと、多いです」

「だから、わたし、
『人を笑わせるセンスみたいなのがないんだなぁ』って、
しょんぼり思ったりもしてるんですけど」

「でも――お話を読んであげたら、
わたしでも、れいなに笑ってもらえるんです」

「れいな、ほんとに大喜びしてくれるんです。
このお話を読んでげたときも、そうでした」

「けらけらわらって、手足ばたばた動かして。
『おならをしたのはポーレットですかぁ?』って、
お尻の匂いをかぐまねまでして!」

「わたしは……ちっちゃかったころのわたしは、
そこまでの反応、ママにも、パパにもできなかったんですよね」

「感情表現。あんまり素直じゃないのかもです。
どこか一枚、壁をつくってるっていうか……」

「遠慮しちゃうっていうか、様子みちゃうっていうか――
笑わせるのが上手じゃないのも、たぶん、その辺の影響ですよね」

「それがむかしは、すごくコンプレックスだったんです。
思ったことをそのまま口から出しちゃいたい。
考えるまえに動いちゃいたい。
そんなことまで、思ったりして」

「でもね? 今は思わないんです。
だって、わたしが感情表現、不器用で――」

「いっつも礼儀正しくて、
礼儀の鎧で自分をまもって、
本当にわたしの近くには、れいなだけしか来てくれなくて」

「それでも、あなたは、わたしを愛してくれたから。
わたしのこの手を、あなたがとってくれたから」

「大逆転です。
端っこの駒をとって、黒かったのが、ぜぇんぶ真っ白になる感じです」

「そのくらい、嬉しかった。
衝撃的だった。
いままで嫌いだったところも全部、
『それでよかったんだ』って、思えるようになった」

「言葉もね? おつきあいとかしたら、
無理矢理にでも、変えたほうがいいのかなって、思ってんです。
タメぐち、でいいんですよね?
凪ちゃんとふかみちゃんの会話みたいな、ああいう感じの」

「だけど、わたし、ヤなんです。
大好きで、尊敬してて、わたしを大事にしてくれるあなたに――
ああいう、乱暴みたいに聞こえる音で、
わたしの気持ちをつたえるの」

「『ちょっとそこのお醤油とってー』って、そういうの。
夫婦っぽいし、仲良さそうだし、近い感じするし、
素敵って、思う気持ちもやっぱりありますよ?」

「でもわたし、あなたのことが大好きだから。
大好きで、尊敬してて、感謝もしてるから」

「だから、同じことでもこういう風にいっちゃうんです。
『よかったら、お醤油をとってくれますか?』って。
それでいいんだって――いまのわたしは、思えるんです」

「だってあなたは知っているから。
わたしとあなたが、体で、こころで、結ばれてること」

「他の誰にどうみられても、だから、全然怖くない。
わたしは、わたしに自然なことばで、
わたしに綺麗って聞こえる音で、
あなたにこころを伝えるんです。絶対に」

「もちろん、これからもずっとずっと一緒で。
ふたりの関係がもっともっと深く、もっともっと近くなって」

「いまわたしがあなたにもってる、尊敬とか、憧れみたいな
気持ちがもしかして変わっていくのなら――」

「そのときはまた、
つかう言葉も変わっていくのかもしれないですけど」

「変わったとしても、絶対、絶対なくならないです。
あなたへのあこがれも、尊敬も」

「それはきっと、もっと深い気持ちにになるんです。
今のわたしが抱いてるのよりもっと豊かな、
いまのわたしには想像もできない、愛情に」

「だって、実際にそうなってますから。
あなたへの、わたしの気持ち」

「初めてあった幼い日にも、
淡い憧れと知りたい気持ちをはっきり感じて」

「それをわたし、『初恋かな?』って思ってて。
だけどあなたに再会して――
そうしたら、違ったんだって、わかったんです」

「『あんな気持ちは恋じゃない。
今抱いているこれこそが本当の恋ごころ。
だから、今、この瞬間が、わたしにとっての初恋だ』って」

「だからね? きっと――
この先も、何回も、そういう風に変化するって。深まっていくって。
わたし、思ってます」

「だからわたしは――
何回だって、あなたに初恋するんです」

「大好きです。愛してます。
モン・プランス――わたしの、王子様」

;ちゅ=リップ音
「ん……(ちゅっ)」

「ありがとうございます。あの日、わたしと出会ってくれて。
ちいさなわたしと、ちゃんとお話してくれて」

「再会したときも、わたしとまっすぐ向き合ってくれて。
市長とか、社長とか、エアクラ誘致反対派とか、そういうのじゃなく」

「初めて出会ったあのときと、少しも変わらないあなたのままで――
わたしを見てくれて、話してくれて、むきあってくれて、ありがとう」

「わたしの中の恋心を、
はずかしがって、一番深くにかくれちゃってたほんとの気持ちを――
見つけ出してくれて、ありがとう」

「好き、です。大好き。
わたしのこころの全部が、あなたのものです。
わたしのからだの全部が、あなたのものです」

「ふふっ、すごいですね。
ひょっとして、読み聞かせのせいなのかな?」

「こんなに近くで、おたがいの鼓動を感じながら――
ことばを、きもちを、ゆっくりつたえてるおかげなのかな?」

「こどものころだってわたし、
こんなに素直になれたことなかったのに。
おねだりだって、おそるおそるしかできなかったのに」

「なのに、今は――
あなたのことが欲しいって、
あなたにわたしを求めてほしいって――
わたし、少しもはずかしくなく、いえちゃってますから」

「うふふ、たくさんおしゃべりしたのも良かったんですね、きっと。
声が喉から出ていくときの、気持ちのハードル。
いまは、なくなっちゃってるんだって思います」

「だけど――ちょっと、
ちょっとだけ、おしゃべりしすぎちゃったみたいです」

「喉、少しだけガラってする感じがします。
あの……喉の、おくすり――
あなたに、わけて――ほしい、です」

;キス
「ん……ちゅっ――ちゅむっ――ちゅっ――
ちゅう――じゅるっ――(ごくっ)――ん……あ――ぷあっ」

「うふふ、ごちそうさまでした」

「こころも、あなたの腕のなかも、あったかいから、ねむたいです」

「このまま一緒に、ねむってください。
わたしを腕にだいたまま、わたしと一緒にねむってください」

「あなたのお顔――じーって見てから。えいっ!」

「あれれ……残念。
閉じたまぶたにも残像が、って、
お話だと見たりしますけど――まっくら」

「だけどきっと、夢の中でもあいますね?
あなたと、わたしなんだから」

「あえなかったら探しにいくから、、
わたしを、待っててくださいね?」

「それじゃあ、寝ましょう?
もう一回だけ――目を閉じたまま――キスをして」

;リップ音
「(ちゅっ!)」


「うふふっ――しあわせ」

「おやすみなさい」

;了

///////////////////////////////////


ポーちゃんはしっとりしてますね~!!!!

台本だけでも、ねむたいときの、あったかくってちょっとしめったような空気感、ほのお感じいただけるのではないかと存じます!
それに、ポーレットの! 声が! 乗る!!!!

その魅力、きっとご期待以上かと存じますので、もしよろしければぜひぜひお聞きくださいましです!


次回はれいなのご紹介! こちらもどうぞご期待ください!

それでは!!!

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whisp 2020/05/21 22:17

【収録台本】まいてつ:日々姫読み聞かせ『長靴をはいたネコ』(進行豹

2020/05/25 追記

下記の記事を書いたときには
「まとめがいされる方の各作品」も割引キャンペーン中だったので、
「2手目」の総額が定価販売のときと変化しております。

定価販売時の2手目、17作品総額は18370円。
8割引きすると3674円となるとのことです!

よろしくお願いいたします!!



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こんばんわです! 進行豹でございます!!!

あやかし郷愁譚の購入特典で
https://www.dlsite.com/maniax/promo/ayakashinostalgia

『まいてつ読み聞かせボイスドラマ』 全7話

が、18作品コンプリート特典としてついてくることになりました!!!

内訳は以下の通りです!

・日々姫 「長靴をはいたネコ」
・ポーレット 「犬が言葉をなくしたおはなし」
・れいな 「炭鉱の白犬」
・ふかみ 「うさぎのもちつき」
・凪 「清柾公(せいしょこ)さんの虎退治」
・真闇 「ネコ岳の猫」
・稀咲 「きつねのみそしる」


これらどれも「読み聞かせ」いただいて大きな価値が生じるもの&すべて民話ベースのお話でございますので!
特典GETご検討の材料にしていただきたく、本日から1作品ずつ、その台本をまるっと公開していきたく思います!!!



「けど、全18作品コンプなんていくらかかるのか――」とご心配になる向きもあるかと存じますので、
わたくし、そちら計算してみます!!

【初手】
あやかし郷愁譚 ヤマネコ やこを購入し、「まとめ買い80%オフクーポンをゲットする」 →968円
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【2手目】
あやかし郷愁譚、他のシリーズ作品17本を全部カートにぶっこんで 「まとめ買い80%オフクーポン」を適用して購入する→ 12496*(1-0.8)=2499


つまり! 968+2499=3467円で全18本が! いまならそろい!!

その上でこちらの
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全特典がゲットできてしまうのです!!!

めちゃくちゃお得!!!!!!!!!

各種クーポンの発給がされてる方は、さらにお得にゲットできるかと思いますので、どぞどぞ、ご検討くださいましです!!!



というわけで、台本紹介まいりましょう!!!


本日のご紹介は! 日々姫! 『長靴をはいたネコ』でございます!!!


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;以下、セリフは全て日々姫
;タイトルコール

「右田日々姫、白猫ランジェリー抱きまくら特典ボイスドラマ
『日々姫の読み聞かせ「長靴をはいたネコ」』」


;本編

「にぃに、もって来た。
これこれ、この本」

「えへへー、懐かしいでしょ?
にぃににも、読んでもらったことあるもんね」

「やけん、わたしとっても嬉しかと。
にぃにに、読み聞かせば、おねだりしてもらえて」

「『やっとにぃにに恩返しできる!』って、
そういうふうにも、感じ取るけん」

「やけん、ね? この本しか思いつかんかったと。
『長靴をはいたネコ』」

「にぃにぃに読み聞かせばするけんね。
絶対、失敗できんけん――
私、こいば、もう一回読み返したんよ」

「そうしたら、この本。
結構、難しい感じとかもたくさんあって――
あのころのちいちゃか私ひとりじゃ、
絶対に読めんかった本って、思って」

「それでも、にぃにぃに、ねぇねぇに、
おねだりをしても読んでもらったの――
今読むと、理由が、すごくわかる気がして」

「やけん、結構はずかしいけど。
ばってん、にぃにには、私のこと、
もっともっと、知ってほしかけん」

「今の私も、あのころの私も――
にぃにぃと出会う前の、
とってもとっても寂しかこだった、私のことも」

「やけん、読むね?
へたっぴいかもしれんけど――」

「にぃにぃのために。
寂しかこだった私のために、私、読むけん」


「――『長靴をはいたネコ』」


;以下の『』で始まる部分は、読み聞かせ
;「」ではじまる部分は、その間の会話です


『貧しい粉屋が、貧乏なまま、死にました』

『残されたのは、三人の息子と、
粉をひくための水車小屋と、
引いた粉を運ぶためのロバと、
粉を狙うネズミを退治するためのネコだけでした』


『長男は、水車小屋をもらいました。
次男は、ロバをもらいました。
末っ子には、ネコしか残りませんでした』

『長男は水車小屋で粉をひき、毎日のパンを稼ぎました。
しかし自分の分だけで精一杯。
末っ子は、一人でいきていくようにと追い払われてしまいました』


『次男はロバで荷物を運び、毎日のパンを稼ぎました。
しかし自分の分だけで精一杯。
末っ子は、一人でいきていくようにと追い払われてしまいました』

『兄さんたちから追い払われた末っ子は、とほうにくれてしまいました。
「ネコをもらってもパンも買えない。僕はどうやって食べていこう」』

『末っ子が思い悩んでいると、
ネコがひょこひょこやってきました。
「ご主人様にはわたしの他に、何も財産がないのですか?」』

『「着ている服と、冬の服。
はいている靴と、長靴ひとつ。
それから袋。ちいさいのと大きいのがひとつずつ」』

『「長靴だったらちょうどいい。私に譲ってくださいな。
おまけに袋もつけてくれたら、
このネコがなかなか役にたつところ、きっとご覧にいれましょう」』

『「どのみちこのままじゃ餓え死にだ。
長靴と袋をネコにあげるよ。
大きな袋と小さな袋、どっちが欲しい?」』

『「私が入れる大きさがあれば十分です」
「それなら小さな袋でいいね。
僕は餓え死しないよう、なにか仕事を探してくるよ」』

『「パン屋が人手を探しています。
餓え死にしないですんだなら、
来週の今日の[月'つき]の[出'で]に、またこの小屋の前であいましょう」』

『末っ子と別れたネコは、長靴をカポカポ鳴らして、
大きな野原までやってきます』

『「今日はすばらしいお天気だ。
うかれたウサギが、遊びに出るにちがいない」』

『ネコはふくろを大きく広げて、
オオバコとハハコグサ、それからアザミのやわらかいところを、
摘んで中へといれました』

『ネコはそのまま姿を隠し、
のんびり待っておりますと、
クンクン鼻を鳴らしたうさぎが、袋の中に入ります』

『「はい、ご苦労さん」
袋の口をしめて捕まえ、
ネコはウサギの入った袋をかつぎます』

『「ウサギだったらちょうどいい」
ネコは長靴をカポカポ鳴らして、
大通りをまっすぐまっすぐ、王様のお城までやってきます』

『「[衛兵'えいへい]、衛兵、王様に取次を願い出る。
私は長靴をはいたネコ。カラバ[公爵'こうしゃく]様のお使いだ」』

『衛兵は困ってしまいます。
ただのネコなら追い払いますが、
長靴をはいたネコの相手をするのは初めてです』

『公爵様のお使いということですし、
衛兵は、王様にどうするべきかをお尋ねしました』

『「長靴をはいたネコとは珍しい。
カラバ公爵なる人物は、面白い使者を仕立てたものだ」
面会を許してもらえたネコは、王様の前でかしこまります』。

『「王様、初めてお目にかかります。
私は長靴をはいたネコ。
こちらは、カラバ公爵様からの贈り物です」』

『「やわらかそうな野ウサギだ。受け取ろう。
カラバ公爵殿に、御礼申し伝えてくれ」
「必ずお伝え申し上げます」』

『次の日にはうずらを掴まえ、
その次の日にはつぐみを捕まえ、
次の次の次の日にはまた野ウサギを捕まえて、
一週間、毎日毎日、ネコは王様に贈り物をしました。』

『「野生の美味を、生け捕りにしてお贈りくださる。
カラバ公爵殿は、狩猟を得意とされているのか?」』

『「カラバ公爵様のご領地は、見回りに一週間かかります。
そのあいだの食べ物をまかなうために、狩りもお上手になりました」』

『「なんと、それほどに広い領地を持つのか。
カラバ公爵にお会いしたい。ご都合はいつがよろしいか」』

『「今はご領地の見回り中です。
戻られましたら、必ずお伝えいたします」』



「――ここね、ここ。
私、ここ、すっごく覚えとったし、勉強になったと」

「プレゼント、お誕生日とか、クリスマスとか、
そういうときだけじゃ、きっとあんまり意味がないって――
ちっちゃいながらに、私、すっごく思ったとよ」

「思ったっていうか……感動した?
そのころは、言葉にはならなかったけど――
『目からウロコが落ちた』って感じで」

「やけん。わたしもしようって思って――
にぃにが覚えとるかしれえんけど――
実際、そぎゃんとしとったと」

「こどもやったけん、もののプレゼントはできんかったから――
まいにち、『いいこと』のプレゼント」

「唐揚げばおいしかときは、
わたしも食べたかったばってん、
『おなかいっぱいでもうはいらんけん』って、
にぃにに食べてもらったり」

「にぃにぃがおめめ、パシパシってしとるときには、
『目ば閉じて?』って、ねぇねぇのお手伝いしとったとおりに、
まぶたの上を、あったかーくしてやさしくおしたり」」

「あげられるものも、お手伝いできることもなかときは、
その日のにぃにぃのいっとう素敵だったとこ、お絵描きしたり」

「そういういいこと、一日にたった一つでも――
毎日毎日、こっそり、私つづけとったと」

「ふふっ、今こうして、にぃにぃのとなりで寝とるけん!
毎日毎日プレゼントの効果、きっと、絶大だったとねー」

「この読み聞かせも、いうたらにぃにへのプレゼント、かな?
続きも、大事に読むけんね」



『王様とわかれお城を出ると、ネコは末っ子に会いにいきました。
末っ子は、パン屋の仕事になじみ始めているようでした』

『「ご主人様ご主人様。
あなたはパン屋と公爵と、どちらの仕事をやりたいですか?」』

『「やれるのだったら公爵がいい。
僕にできるかわからないけど」』

『「それはやってみてから考えましょう。
パン屋のしごとの、次のおやすみはいつですか?」
「あしただけれど」』

『「さて忙しい!」
末っ子の返事をきいて、
ネコはふたたび、外へ飛び出していきました』

『お城とは反対の方角へ、長靴カポカポ歩いて歩いて、
知らないところまでやってきます。
そこでは痩せた農民が、麦をつくっておりました』

『「私は長靴をはいたネコ。カラバ公爵様のお使いだ。
このあたりを今おさめているのはいったい誰だ?」』

『公爵様のお使いに、失礼な返事はできません。農民は、頭を下げて答えます。
「このあたりを今おさめているのは、人食いのオーガにございます」』

『「それでは聞くが、カラバ公爵様と人食いオーガ、
どちらにここをおさめて欲しい?」
「人食いオーガはごめんです。カラバ公爵ならありがたい」
「人食いオーガがごめんなら、なぜ追い払ってしまわない?」』

『「人食いオーガは、変身の術が自慢です。
熊になったり、ライオンになったり。あれには誰もかなわない」』

『「カラバ公爵様ならかなう。
だから、これよりここはカラバ公爵様のご領地だ。
誰かに尋ねられたのならば、そう答えなさい」
「わかりました。これからここは、カラバ公爵様のご領地です」』


『行く先行く先で、人に合うたびそのやりとりを繰り返し、
やがてネコは、古いお城につきました』

『「どうやらここが、人食いオーガのお城だな。
衛兵のひとりもいやしない。きっと端から食べたんだろうな」』

『ネコは勝手にお城に入り、大声で人食いオーガを呼び出します。
「私は長靴をはいたネコ。カラバ公爵様のお使いだ」』

『人食いオーガが中からのっそり出てきます。
ぎょろりとした目に鋭い牙。大口をあけて答えます。
「長靴をはいたネコがなんの用だ」』

『「カラバ公爵様のご用だ。
お前のものだった領地はすでに、カラバ公爵様のものとなった。
逃げ出すことをゆるすから、荷物をまとめて出ていくがいい」』

『「なにをぬかすかこのネコめ!!」
怒り狂ったった人食いオーガは、立派なライオンに化けました。
「長靴ごとぺろりと食べてやる」』

『怖がるどころか、ネコは安心した様子。
「ごじまんの変身の術がその程度ならちょうどいい。
象に化けるカラバ公爵の相手ではない」』

『「象だと?」
ライオンでは象にかないません。
人食いオーガは困ってしまい、ぴたりと動きを止めました』


『オーガを気にするふうもなく、ネコは安心しきっています。
「小さなものに化けられたなら怖かった。
この袋に入る生き物よりも小さなものには、カラバ公爵様は化けられないから」』

『「勝ったぞ! オレはもっと小さく化けられる」
人食いオーガは喜びいさんでハツカネズミに化けました。
「はい、ご苦労さん」』

『ハツカネズミを頭から食べ、ネコは長靴カポカポいわせ、
いま来た道を戻ります』

『「人食いオーガはカラバ公爵様がやっつけた。
お城にいって確かめてこい。
確かめてきたら明日のお昼に、お祝いの[宴'うたげ]を開くのだ」』

『来た道々で、会う人会う人にそういいつけて、
ネコはようやく、末っ子のもとに戻ります』

『「ここから西にいったところに橋があります。
明日のお昼に、その橋を、王様の馬車がわたります」』

『「王様の馬車のひづめの音が聞こえたら、
失礼することがないように、
橋の下で、川の水で、体を洗ってくれませんか?」』

『「どうしてだい?」
「カラバ公爵になりたかったら、そうしてください。
パン屋でくらしていたいのならば、しなくていいです」
「ネコがいうなら、そうするよ」』


『次の日です。朝からネコはお城に行きます。
王様の馬車の先頭にたって、案内します』

『知らない土地に来た王様は、
「この当たりは誰の領地か」と訪ねます。
会う人会う人「カラバ公爵のご領地です」と答えます』

『「なるほどカラバ公爵殿は、
これほどのご領地をもっておるのか」』」

『感心しきりの王様を、ネコは橋へと案内し、
ついた途端に、しっぽをぴいんと逆立てます。
「なにかおかしい。私が様子を見てきます」』

『橋の下、川では約束したとおり、末っ子が水浴びをしています。
ネコは早口で訪ねます』

『「ご主人ご主人、服を失くして領地を得るのと、
服はそのまま、領地もなしと、いったいどちらがいいですか」』

『「服は失くしても領地が欲しい」
「それならあと少しの我慢です」』

『そういって、ネコは末っ子の服を川に沈めてしまいます。
驚いた末っ子が声をあげると、ネコも大声で叫びます』

『「大変だ! カラバ公爵様が族に襲われてしまったようだ!
服も馬車も、なにもかもを持って行かれてしまったぞ!!』

『声を聞きつけた王様は、おつきのものに命令し、
上等の服と気付けの酒とを届けさせました』

『驚く末っ子に、ネコはこっそりささやきかけます。
「おめでとうございます。
これでご主人は、カラバ公爵になれました」』

『ネコの言うままに服をきて、
馬車に乗り込み、お城につけば、大歓迎の宴です』

『大喜びの王様を、王様のお城に送り届けて、
カラバ公爵になった末っ子は、ネコを撫で撫で、聞きました』

『「僕はお前の主人になって、カラバ公爵になった。
父さんもお前の主人だったのに、どうして公爵にならなかったの?』

『「とても簡単なことです、ご主人」
前足を舐め、顔を洗って、ネコはのんびり、答えます』

『「前のご主人は、私に長靴をくれなかったんです」』


「――おしまい!」

「あーーー、長かお話!
読むの、結構緊張したけん、
なんかどーっと、力ば抜ける感じするぅ」

「あー……だらーっとしてにぃににぺっとりくっつくの、
しあわせよねー、気持ちよかとねー」

「こんなしあわせば味わえるのも、
『長靴をはいたネコ』のおかげと」

「……ちっちゃかったころは、さみしかったけん。
こんおはなし――
わたし、自分が末っ子のつもりで、きいとったと」

「一番最初にこんおはなしを読んでくれたんは
ねぇねぇだったけん――もしかしたら、
ねぇねぇもそのつもりだったのかも」

「『ひーちゃん、がんばれ』って。
『自分のお城ば手に入れて、きっと幸せになれるから』って」

「――ねぇねぇは、一番上のこやけんね。
水車小屋……右田の蔵とずっと一緒にいる他、ないけん」

「そう考えたら、水車小屋ばもらった一番目のおにいさんも、
ロバばもらった二番目のおにいさんも、
逆に……縛られてしまったんかも」

「あー、今気づいた。
そっか、長靴をはいたネコって――
ネコって、自由の象徴とね、きっと」

「自由があっても、そこから動かなきゃ飢えて死ぬだけ。
やけん、ネコには長靴ばはかせてあげねば、いけん」

「こぎゃんとハッキリ言葉になっとったわけじゃないけど、
こぎゃんふうには、ほんとにいま、考え、まとまった感じとやけど」

「ばってん――ちいちゃかころの私も、
なーんとなくは、そこんところば、わかっとったとよ。たぶん」

「だって私、『おえかきちょうがわたしのネコさん』って、
それはハッキリ、思うとったもん」

「『ネコさんにはながぐつあげなきゃ、きっとダメ』って、
おさないなりに、強く思って」

「やけん、長靴。失くさんように――描き続けたと」

「一枚お絵描きするごとに、きっと私のネコさんは、
長靴をはいた一歩を、歩いてくれるってふうに思って」

「そぎゃんとしたらネコさんが、
きっと私を、カラバ公爵にしてくれるって、思って」

「そうしたら、ふふっ。
ネコさん、私には王子様ばつれてきてくれたと!」

「だいすき。にぃに。王子様。
にぃにが、私の王子様」

「嬉しかったと。にぃにが私の絵ば褒めてくれたとき。
あの日の夜には、くまくまとずーっとおしゃべりばして」

「それで、ネコさん――お絵描きちょうにも、
一生懸命、にぃにぃの、王子様の絵ば、がんばって描いて」

「描いて、描いて。わたしのネコさん、
本当にすごかネコさんだったとねー」

「だって……今の私、まがりなりにも市長さんでしょお。
いうたら、オヒトヨ公爵様やけん」

「あー、でも。そしたら、ちょっと、不安かも」

「だって、こんお話――
このご本に書いてあるバージョンの、
『長靴をはいたネコ』」

「『それからみんなは、ずっと幸せに暮らしました』
って、そぎゃんたぐいのこと、まるっきり書いてないでしょう」

「ネコが、『長靴をはかせてくれなかったから』っていうだけで
――あ」

「そっか、うん。だからなんだ。」
だから、『ずっと幸せに』は、暮らさないんだ」

「……翻訳、これ、正確なのかなぁ。
原書だと、どぎゃんふうに、お話ば終わるのかなぁ」

「少しだけ気になるばってん――
別に、知らんままでも、かまわんと」

「だって、私の『長靴をはいたネコ』はこれだから」

「ねぇねぇが私に読み聞かせてくれて、
にぃにぃが私に読み聞かせてくれて」

「それでいま、私がにぃにぃに読み聞かせてる、これだから」

「お話が終わりになったって、長靴を脱がないネコが、
『ずっと幸せに』はならないみんなが、出て来るお話だから」

「やけん。私も、私のネコもずうっと、
これから先も、長靴ばはいて、歩くとよ」

「ばってん、一人旅じゃなかとよ?
にぃにの隣で、にぃにと一緒に歩くけん!」

;隣で、以降、大あくび
「ずっと、ずうっと、旅のおわりまで、にぃにの隣で――
ふ……あ……ふぁあ~~っ」

「あー、いっつもよりたくさんおしゃべりしたとね。
ちょっとつかれて――すっごく眠かと」

「あかりとか、わたし落とすけん。
にぃには先に、目、閉じちゃってよかとよー」

「…………」

;リップ音
「(ちゅっ!)」

「えへへっ、おやすみのキス。
読み聞かせの終わりにしたら、なんか、よかかなぁって、思って」

「そしたらにぃに! おやすみなさい。
ゆっくり眠って、元気に起きて!」


「明日も一緒に、歩こうね!」



;終


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ひーちゃんかわいい!!!

これがボイスで読み聞かせ! でございますので、破壊力、ご想像いただけるかと存じます!

もしよろしければぜひぜひです!!!!

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