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不思議の記事 (10)

赤羽決亭@木東有稀 2020/10/30 04:51

フシギナパラダイス 2話 不思議な鳩 1/9

「え、嘘でしょ!?」

入学式で居眠りをしてしまうという醜態を晒した私。

その帰り道、なるちゃん、心矢、洋太の3人に、今日のことを確認した。

私がいつから教室にいたのか、眠っていたのか、その記憶がなかったからだ。

でも、私の言い分と3人の言い分は全く違っていた。

「本当よ、地震があったら忘れたりしないし、学校行くまでトラブルなんかなかったし、保健室に用事なんか何もなかったわ」

「そ、そんな…今朝頭ぶつけて記憶がないって…みんなが行けっていうから…」

「夢と現実がごっちゃになってるんじゃない?第一頭なんかぶつけてないじゃん、どうしたら、記憶がなくなるくらいの衝撃なんて普通受けないでしょ」

「そ…そんなこと言われても…」

でも、それだとつじつまが合わない。

だって、その話が本当なら私がなんでまだ昨日の夕方から朝まで…

いや夢の時間をプラスしたら、さっき目を覚ますまでの間の記憶がすっぽり抜けたままなのか、説明がつかないからだ。

だから私はムキになって、昨日の近道の話をしようとその場所へ向かった、でも…

「あれ…ない…」

今朝突然現れたあの道は、再び跡形もなくなくなっていた。

「おかしいな…間違いなくこの辺りに…心矢が言ってた道が…」

「ルイ、本当にどうしちゃったのさ?僕そんな道見つけてないよ?
こんなところ、どうやって通るのさ?」

「それにそこ、私が昨日みちこちゃんの故障であるはずのない道指してるって言ってた場所じゃない…それも忘れちゃったの?」

心矢となるちゃんが私にそう諭す。

そう反論して聞いてくれなかったのが、今朝の私の気持ちだったのに、今はすっかり逆転してしまってる…

わかってる、正しいのは皆、私がおかしい、でも

「でも、本当に通ったんだって!本当に覚えてない?神社あって、男の子と私がぶつかって…!」

「神社なんかこの辺ないでしょ?一番近くて商店街の向こうだよ?男の子だって見てないし…」

心矢は表情にこそ表さなかったけど、呆れているのか少しため息を吐いた。

「でも…本当に…」

「ないものはないんだからしょうがないだろ」

洋太のその一言は、腹立たしかったけど

それ以上私は何も言えなくなってしまった。

「じゃあ、僕らこっちだから」

「ルイちゃん、ちゃんと休んでね。」

「明日は居眠りすんなよ」

「もー、わかってるってば!」

私がそういうと、まるでそれが合図かのように、各々自分の帰り道へと散って行った。

でも…本当にあの夢…なんだったんだろう…

結局、顔にできた傷の理由もわからずじまいだし…まぁ…これ以上考えても無駄か…

色々考えながら、すぐ近くにあった一軒家の家に向かって歩くと、家の前で誰かが立っているのが見えた。

「あれ…お兄ちゃん…?」

高校の制服着て何してるんだろう…始業式明日だって言ってなかったっけ?

それとも今から学校に?でも…部活とか委員会も今ないはずだけど…

しばらく家に近ずくでもなくその場で一歩も動かず様子を見守っていると

「あれ、ルイ、今帰り?」

兄の方が私の気配に気がついたのか、こちらの方を振り返った

「うん…お兄ちゃん…高校明日からじゃなかった?」

「あぁ、カレンダーに書き間違えたって…今朝言わなかったっけ?」

「あ、そうだったっけ…?」

やっぱり何も覚えてない…怪我したわけじゃないなら、なんで未だに私の記憶は戻ってこないんだろう…

居眠りでこんなに記憶すっぽり抜けるかな…

「ルイ?鍵空いたよ?入らないの?」

「あ、待って!」

兄にそう声をかけられて私は急いで中に入った。

なんか…疲れちゃったな…

こういう時、3階建ての一軒家って嫌になる。

しかもよりによって自分の部屋は3階。

めんどくさいし体力が削がれる。

かと言って、リビングのソファーで寝転がるのもなんかやだし…色々やらなきゃいけないことが目について、休むには適さない。

仕方がない…部屋行くか…私は重たい足を無理やり動かし、階段をのぼる

さっさと着替えよ、そんでもって、さっさとベット潜って今日は寝よう。なんにもやる気が起きない。

あーでもご飯……

まあ…それまでに起きればいいか…

でも気分じゃないなぁ…

ほんと…散々な1日だったなぁ…せっかく夢にまで見た入学式だったのに…

私はようやくたどり着いた自分の部屋の扉をガチャっと開きながら、そう心の中で呟いた。

ベットの方へ視線を送ると、視界に誰かが映った。

知らない子だ

「…」

「こんにちは〜!」

見知らぬ金髪で不思議な服を着た少年は、私の部屋で私を出迎えた。

笑顔で

「…」

私は無言で部屋を出てバタンと部屋を閉じた。

「…………………………誰?」

この家には今、私とお兄ちゃんしかいない。

さっきお兄ちゃんが鍵を開けたところを見たからそれは間違いない事実だ。

だから、私達より先にお客さんがいるはずがない。

疲れてて、幻でも見たのだろうか

私はもう一度扉を開ける

「はぁい☆」

「きゃああああああああああああああああああ!!!」

私は大きな悲鳴をあげて部屋を出る

誰かいる!!!知らない誰かが!!!!私の部屋に!!

あれ、だれ!?

見た目は…小学五年生くらい?男の子?

私に弟はいない、じゃあ親戚?私の知らない間に親戚増えてた?

でも、金髪ってことは外人!?外人の親戚なんかうちいたっけ!?それとも染めてるのかな?

やばい、親戚情報がわからなすぎて見当がつかない!!

「ルイ!?」

「はい!!」

私は名前を呼ばれて条件反射で返事をする。

下の階にいたお兄ちゃんが、私の悲鳴に心配したのか、急いで階段を登って着てそう声をかけた。

「どうしたの、大声出して」

「な…なんでも…あ、お兄ちゃん!うちに金髪の男の子…親戚にいる?」

「な…何急に…いないけど…親戚の子と聞くなんて珍しいね…本当にどうしたの?」

「…なんでもない」

「そ…そう?」

なんか納得がいかないような顔をしながら、お兄ちゃんはまた階段を降りて行った

なーんだ…やっぱり親戚に金髪の男の子なんかいないんじゃん…

…………

「じゃあ、やぱあれだれ!?」

だいたい、仮にあれが親戚だったとして、私の部屋にどうやって入ったのかなぞだ。

だって、ついさっきまで家には鍵がかかってて、密室だったのだから…

「まさか…幽霊…」

「幽霊じゃありません!!」

「きゃあああああああああああああああ!!!!」

私はまた悲鳴をあげる。

それは男の子が私に声をかけたことに対してではない。

その男の子が、壁をすり抜けて出て来たことと、空中を浮いていることに対してだ。

再び階段からドドドドという音がして「今度は何!?」とお兄ちゃんが私に声をかけた

「お、お兄ちゃん!!し…知らない男の子がうちに!!」

「…」

私はそう伝えるけれど、兄はキョトンとした顔を浮かべるだけだった

「この子!!今目の前で浮いてるあの男の子!!」

私は男の子にビシッとしてしっかりと伝わるように説明をした、ここまで言えば伝わるはず…なのに…

「…誰も…いないけど…」

と、呟いて、静かに階段を降りて行ってしまった。

どういうこと…?

こんなに目の前で、はっきり見えるのに…お兄ちゃんに見えない?

見えてるのは…私だけ?

ゆっくり振り返り、私は男の子をもう一度見る。

「君は…?」

すると男の子はにこりと笑って、

「お話…聞いていただけますか?」

そう言った。

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赤羽決亭@木東有稀 2020/10/24 23:48

【ノベル】フシギナパラダイス1話:〜不思議な道〜8/9

また復活されて暴れられても困るし…

止め刺さなきゃ…だよね…



私は、彼女の元まで歩みを進め、刃を彼女に向ける

今…槍を彼女に突き刺せば、全てが終わる…

なのに…私の手は震えていた。

恐怖で?

違う………

なんで震えてるのか…自分でもわからない…

でもなんか…戸惑っている?

なんで…

躊躇するギリなんかない、あのまま放って置いたら、生徒全員被害に遭ってた。

それに、彼女は保健室の先生に見えてなかった、つまり他の人に見えなかった可能性がある。
そうじゃなくても、おかしな技を使っていた。

信じられないけどもしそんな存在がいるとしたら、人間じゃない…幽霊か何かかもしれない。

人じゃないどころか、生きてすらいないのだとしたら、それこそ躊躇する必要なんかないはずなのに…

どうして…?

私が結局何もできずに、彼女のそばに突っ立っていると、何かを悟ったのかふふっと笑って


「どうしたの…とどめ…刺さなくてもいいの?」

と息絶え絶えにそう呟いた。


「い…言われなくても!今からやるよ!!」

ムキになってそう答えるも、手の震えは治らない。

やっぱり、怪しい力を使っているとはいえ、人の形をしているから、

人の命を奪うことに躊躇してるの?

躊躇してたら…また…隙をつかれて…さっきみたいな…

わかってる…わかってるのに…



「アハハハハハハハ!!」



さっきの小さな笑いとは違い、彼女は何かが破裂したかのように、大声で笑い出す。

ぐったりしているはずの彼女からそんな笑い声が出てきたことに驚いて、私は目を丸くする。

「本当に…甘いわね…こんな未熟者に負けるなんて…せめて誰か道ずれに…」

その言葉と同時にさっきまでと同様、何か黒い光を作り上げた。

一瞬私は身を固めたけど、顔を向けている方向が私の方じゃない気がした

ふと校舎の方を見る、

さっきまで、不思議なくらい、外に誰も避難しに来なかったのに、
なぜか今になって、1人の女の子だけが外に出てきていた。

疑問や戸惑いの言葉を口にする暇すらなかった。

だって横たわってるそれが、その子に向けて大きな光の玉を投げたからだ。

本気で道ずれにする気だ。

私は考えるより先に足を動かした。

今更とどめを刺したって間に合わない、躊躇した自分を責めてる時間もない。

とにかくあの子を助けないと

「危ない!」

その声に反応した女の子、でもあまりのことに驚いて一瞬固まってしまった。

私はなんとか助けようと必死で、走った勢いでそのまま女の子に飛びかかり、押し倒し、

直後、意識が遠のいていった。

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赤羽決亭@木東有稀 2020/10/20 02:23

【ノベル】フシギナパラダイス1話:〜不思議な道〜7/9

都合よく武器がこのタイミングで現れたってことは、きっとこれを使ってあれを倒せってことだろうか?

この状況で武器が手に入ること自体はとても助かるけど、槍の使い方なんて全くわからない

でも

「いや、どうせまだ力の使い方はわかるまい!
やることは変わらない!」


彼女もまた何か武器を取り出し、私に向かってきた。
相手は戦う気満々だ。

私は慌てて、槍を拾い、両手で自分の体の前に構えると、
キンっと金属がぶつかる音が聞こえた

「…っ」


結構、ずしりと重たい衝撃を感じる。

向こうの武器は私飲もっている槍ごと切り込もうと、力を緩めない。
十字の状態で交差して、均衡の状態をしばらく保った。

と言うか、その攻撃を受けないようにガードするので必死だった。

だって、どうすればいいのか分かんなかったんだから。

私と違って、向こうは武器の扱いにも慣れている上に力も強い

「ふ、どんなに強がっても、力が手に入っても、初心者はせいぜいこの程度ね」

自覚あることろに、改めてそうやって言われるとイラッとくる。
とは言え事実は事実、力勝負じゃ負ける。

「押してダメなら…」

私はわざと力を緩めて、攻撃を受けないように脇にそれる
彼女は必死すぎてそのことまで頭が回らなかったのか、力を入れたままだったので
前にそのまま倒れる

その隙を狙って、攻撃すればと背後に回り今度は私が彼女にむかって攻撃するけど
初めて扱う武器を思い通りに使えるわけもなく、予定していた場所と全く違うところに刃を振り下ろしてしまう。

あっと声を漏らす間も無く、体制を整えた敵はチャンスとばかりに私に攻撃を向ける。
間一髪でそれをなんとかして避ける。

「よく今のよけられたわね、さっきよりもすばしっこい。」

敵はそう声を漏らす。
そう、実は槍を手に持ってから、普段より体が軽いのだ

動きやすいと言う意味ではもちろん、動くは少し早くなって、力も少しだけ強くなった。
武器を手に入れた以外にも戦うために身体能力が上がっている感じはある。

だから、止めどない攻撃を交わすことならなんとかできた。

ただ、それは武器をする前よりも少し能力が上がった…と言うだけの話。
武器の使い方の知識は圧倒的に足りないし、そのための体の動かし方も知らない。
あいつに叶う力も到底足りない。

やっぱり武器があるだけで勝てるほど、世の中は甘くないか…。

むやみに振り回すだけじゃ、切り傷一つつけられない。

それでも、結局のところ今私が対抗するために持ってる武器はこれしかない。
まずは一発でも当てて、

反撃を防御してカキンッという武器がぶつかる高い音が何度か響く。

なかなかに好戦的な相手の攻撃を防ぐので精一杯、攻撃するチャンスは致命的な傷を負ってないのは奇跡…いや、もしかしたら手加減してくれてるのかもしれない

でも、それですら今の自分では勝てない

「結局その程度…大したことないな!」

「きゃっ!」

私は彼女の攻撃をもろに受けて体が壁に衝突し、その衝撃で槍を落としてしまった。

早く拾わないと…

しかしそんな暇を与えてはくれなかった、チャンスとばかりに私と槍の間に
謎の黒い光線を出してくる。

そうだ、こいつは武器で攻撃するだけじゃない、怪しげな技も使うんだ。

武器を出してから、技を使わなかったのは、手心を加えてくれてた?

まずい、だとしたらあの槍を拾って戦闘態勢に入れたとしても、勝てない可能性がある。

自分にも、そういう攻撃とか技が出せればよかったんだけど…いや、武器が突然現れるなんて奇跡が起きたくらいなんだし、使えないことはないのかもしれない…でも、使い方がわからない。

その前になんとかしないといけないのに…

彼女が何かを喋りながらこちらに向かって歩いてくる、ダメージを受けて私が動けないうちに、とどめでもさすつもりだろうか…

今ここで諦めたら、誰も何もできない、

だって、大人に頼んだところで、彼女を、彼女がやっている行動を、誰も見ることができない。

見えない未知ものへの解決はほぼほぼ無理、

「これでようやく、自分の仕事に戻れる…対して力もないくせに、手間をかけさせないでちょうだい」

そして向こうは武器を振り下ろした。

あぁ…せっかく武器が手に入ったのに…ここまでか…

覚悟を決めて強く目をつむり、痛みに耐える準備を始めた。

でも…

『光熱閃!!』

誰かの…多分さっきの声が何かを言った。

その声が何かを考えるよりも早く

「バチッ!」という大きな音と「あぁあああ!!」という、彼女の大きな悲鳴が聞こえた。

「え…」

私は、それに驚き目をパチっと開いた。

そこにあったのは、予想していなかった光景だった。

さっきまで好戦的だった彼女は、大きな傷を負って、仰向けに地面に倒れていて、その奥には…いつの間にか光っていた槍があった。

「いつの間に光って…というか…なんで光って…」

いや、そんなことを考えてる場合じゃない。
止めを刺すなら今しかない。


私は槍を再び手に取り、仰向けに倒れている彼女に近づいた。

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赤羽決亭@木東有稀 2020/10/17 16:19

【ノベル】フシギナパラダイス1話:〜不思議な道〜6/9

目次

前 ← 1話 5/8 次 一話 7/8

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*作品の無断転載・盗作×

*二次創作・紹介などは「作品名」記載いただければOKです!

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私は校庭に出て、辺りを見回し
ケホケホと咳をする

やっぱり、私の勘違いなんかじゃない
曇ってる原因の一つは確かに砂埃だ

でも、その中に火薬の匂いが混じってる
これは爆発が起きたことを意味している
つまり、聞こえてる私が正しいはず

だとしたらやっぱりなんとかしないと
少なくともこの爆発音は私にしか聞こえない

心矢とすれ違った後、何人かの生徒とすれ違った
でも、みんな地震のことは話しても、今のことは話さない

つまり中の生徒や先生は、火薬の匂いに気がついてない
このもやも砂埃だと思ってる

その奥には…さっき保健室から見えたよりもはっきりと人影が見えた。


危険に気がつけないのは、目に見えない危険は不幸だと思う。
だって気がつく危険は対応のしようがあっても、目に見えない危険は対応する機会もないまま、知らないままに最悪な事態になってしまう

防ぐためには、、、私がなんとかしないと、、、
状況理解している私が

でも、何か策があるわけじゃない
ここまできたはいいけど、あの人をどうやって止めればいいのかは
正直皆目検討つかない

でも…なんとかしないと…
とりあえず…気を失わせればどうにかなるかな…
なんか武器は…

「みぃつけた」

背後から声が聞こえる
慌てて振り返ると、そこには黒いフードを被った女の人がいた

「…っ」

言葉を発しようとした
でも、口にしたい疑問があまりにも多すぎて声にならない

相手はフードを深く被っていたので顔は見えない…
でも、なんとなく…楽しそうな表情を浮かべているように感じた
それがあまりにも不気味で、一歩後ずさる

「見れば見るほどそっくりね…
なるほど…あなたで間違いなさそうね
今代の*****は」

「え…」

大事なところが聞き取れなかった…

今代の…なに?
間違いないって…?
そっくりって…誰に?

でも、その答えを考えるよりも早く、何かが顔の横を通り過ぎた
私はそれに驚いて、小さく悲鳴をあげて尻餅をつく

「な…なに?」

「覚醒は…まだみたいね、これは好都合。
今のうちにやってしまえば、手間もかからない」


そういうと、フードを被ったその人の手のひらに大きな黒い球体が現れ、
それを私めがけて投げてくる

運よくそれを避けることはできたけど、
ズンッという大きな音と振動と共に、その場所は大きくくぼんだ、

そこでようやく、自分が狙われていることに気がつく。
事の重大さに気がついた私は、彼女の攻撃を避けながら、なんとか距離をとり、とっさに物陰に隠れた
なんとかうまく隠れることはできたけど、私を見失ったにもかかわらず、彼女は慌てない。


「あらあら、うまいこと逃げるわね…
鬼ごっこ?それともかくれんぼのつもりかしら?
私もその手の遊びは得意よ、おとなしく出ていらっしゃい」

優しい声音でそう問いかけた。

あんなことができる相手…私一人見つけるくらい、かくれんぼしてる子供より簡単に見つけられるとでもいうように
実際そうなんだろうけど…。

「まぁ、無理に探すこともないわね。
どうせこの建物の中のどこかにいるんでしょ?
攻撃をあなたに当てなくても、息の根を止める方法は…」

「どうしてそこま…っ!」

私は反射的に彼女の問いに反論してしまった。
しまったと思って急いで口を塞いだけど、もう遅い、声は発してしまった。
こちらに近づいて来る気配がある、もう居場所はバレたということだろう。

でも、むやみやたらにした攻撃が校舎にあたってしまうよりは幾分かマシだ。

…私に間違いない…

彼女はそう言った。
肝心なところは聞こえなかったけど、探してる人物がいて…それが私だったということはわかる。
でも、私には探される心当たりがない。

せめて、なんで自分がそうなのかわかれば…

「理由は?こんなことする理由は何?」

「知ってどうするの?死にゆくあなたに教えても無意味じゃない」

「…私「が」狙いなの?だったらむやみに攻撃するのはやめて」

「…」

私がそう答えると、彼女は少しだけ沈黙して
でもしばらくすると、クスクスと笑いだした。

「自己犠牲のつもり?美しいわね。
だけど、そんなことで攻撃はやめないわよ」

「どうして?」

「あなただけじゃないもの、用事があるのは…
それに…寂しいじゃない。」

「さみしい?」

それが、こんなことをする理由?
でも…それにしては、目的が漠然としすぎている。
今の状況を文章にすると『寂しいから、攻撃をしている』と言うことになる。

間違ってはいない…確かに誰かを傷つけることは、時にさみしさを埋めることがあるのかもしれない。
でも、さみしいは理由になり得ても、目的にはならない。
攻撃をして誰かを傷つけることは行動、行動を起こすためには、目的が必要…
『寂しいから、〇〇のために攻撃をしている』となって、初めて一連の騒動に理由がつく
その〇〇…つまり目的の部分がすっぽり抜けている。

彼女は探してる人がいて…でも、それだと寂しいと言う理由に繋がらない、矛盾。
つまり、こんなことをする理由は、寂しいと言う理由につながる行動が…

「…あなたにわかる?暗闇の中、誰にも気付かれず、相手にされないで存在し続けるのは…とても辛いのよ」


暗闇?

ふと疑問が湧いた。

話を聞く限り、突然さっき生まれた存在ではなさそうだ
なら、彼女は普段どこにいるのか、そもそも彼女の存在は何なのか、

気がつかれない?相手にされない?なぜ?見えてない?用事があるのは私だけじゃない?
そして…寂しい…

そこまで考えて、ふと彼女の存在の正体と…最悪なシナリオが浮かんだ。

と、同時に彼女は私の目の前に現れてセリフの続きを呟いた。

「ねえ、いいでしょ?これだけ大勢いれば、寂しいことはなくなるわ」

そして、手の中に何か黒い光の玉を作り出し、攻撃の準備を始めた
彼女は私だけじゃなく、この校舎にいる全ての人間の命を奪うつもりだ。

「そんなこと…絶対だめ!」

「何をいっても無駄、力を持たないあなたに私は止められないわ」

そして、彼女は攻撃をする

その様子が、スローモーションのように、ゆっくり動いているように見えた。

彼女のいう通り、なすすべのないことを悟った私は目を瞑った。


『今です』

ふと、耳に誰かの声が聞こえた。

その直後、何かが光って、あたりを白い光が包んだ。


「な、なんだこの光は!?」

フードを被った彼女は、あまりにも明るい子の光に腕で顔を隠す
この光で身動きが取れないらしい

ということは、彼女の攻撃というわけではなさそう…
じゃあこれは…

私はふと保健室でのことを思い出し、スカートのポケットに入れた勾玉を取り出した
やっぱりあの時と同じ…また緑色に光っている。

「もしかして、何か関係があるってこと?」

なんて考えていると、その勾玉は次第に形を変えていった。

それが形になっていくと同時に、あたりの白い光はだんだんと収まり、
さっきまで暗かった校庭は、今朝同様快晴の明るさに戻っていた

そして、目の前には槍が現れた

それをみた彼女は


「なに…覚醒しただと!?」

ひどく取り乱した様子だった。



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赤羽決亭@木東有稀 2020/10/16 18:55

【ノベル】フシギナパラダイス1話:〜不思議な道〜5/9

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*作品の無断転載・盗作×

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「じゃあ先生、入学式の準備で職員室行くけど…何かあったら呼んでね」

「はい、ありがとうございます。」

そういうと先生は保健室を出て行った。
出血コブなし、でも体調不良ってわけじゃないし大丈夫そうだけど…
保健室じゃ精密な検査できないから、少し寝てなさいという指示があったので
お言葉に甘えてベットで横になることにした。

はぁ、まだ1日始まったばっかりなのに…どっと疲れた…
体感時間はなんかもっと長かったような気がする。
…まぁ、昨日の夕方から記憶が繋がってるんだから当然か

私は他にやることもないので、今朝の出来事を振り返る。

…やっぱ私の考えすぎだったのかな
冷静に考えたらそうだよね、道も神社も突然現れない。
私の記憶がおかしかっただけなんだよね…
これ以上変なこと言って、みんな困らせても行けないし…忘れよ。
あ、でもその前に…

私はポケットの中を弄る。
そこには透明の勾玉があった、さっき神社で会った少年の忘れ物。
あそこの神社が元からあったものなら、あそこに行けば会えるかな…
その時に返せばいいか。

…今頃みんな何してるのかな…クラスに入って、席の確認終わったくらいかな…
まぁ、それは後でいけばわかることだからいいけど…

あ、いけない…なんかだんだん眠たくなってきた。

そういえば、私自分の記憶では丸一日寝てないことになるんだよね。
寝たんだろうけど、寝た記憶がないって意味で。
…先生も、式の時間には呼びに来てくれるって言ってたし、
寝てもいいって言ってたし…入学式でどうせ校長先生の話で眠たくなるし…

少しだけ仮眠取ろうかな。

私はふわぁ…とあくびをすると、1分も経たないうちにスヤスヤと眠りに落ちた。

辺りは真っ暗になった。
当然だ、目を閉じているのだから。
体がなんだかとてもふわふわして…浮いている気分。
当然だ、ふかふかのベッドの上で気持ちよく眠っているんだから。

でも…このチリーンという音はなんだろう。
学校のチャイムではないような…
あぁ、でもこれも当然か…だって寝てるってことは夢なんだもん。

しばらくすると、どこからともなく声が聞こえてきた。
男性の声だ。

「ー、ーこ!」

必死に誰かの名前を呼んでいる…
知らない名前だけど…どうやら私のことらしい。

その声に、私はうっすら目を開ける。


誰だろうと必死に目を凝らすけど、視界がぼやけてよく見えない。
よくわからないけど…多分この声は…男の人。
成人前って感じかな…わかんないけど。

「ーで………ーーーたのに、ーーー、かってーーーー」

必死に何か言ってる、それだけはわかる。
でも、うまく聞き取ることはできなかった。
気がつくと、さっきまではふわふわと心地よかった体が、
ドーンと重くなり、指一本動かすのにすごく苦労した。

なんでだろうと、ゆっくりなんとか指を動かして、自分の体に触れた時
濡れていることに気がついた。

水?

…違う

…これは多分血だ。

なるほど…状況はわかった…
多分、今私は死にそうなんだろう。
だからこんなに体が重くていうこと聞かないんだ。

「ーーー」

相変わらず、相手は何かを言ってる。
でも、もう声を発する力もなくて…
次第にまた辺りは暗くなり、男性の声は聞こえなくなった。

それと同時に、さっきまでの重さはなくなり、
体が軽くなって自由も聞くようになった
どうやら、私は死んだらしい。

こんな夢を見るなんて…よっぽど疲れが溜まってるのか…
頭を打ったことで、体にストレスがかかっていたのか…
どっちにしろ、こんな夢を見るほど疲れてる自分の体をいたわったほうがよさそうだ。

しばらくそうしていると、
またチリーンという音が聞こえてきた。


ふと、音のする方向を見ると、そこには人影があった。
顔どころか姿も見えないけど…
彼女に対して懐かしさというか…親近感というか…既視感というか…
会うのは初めてなのに…とても不思議な感覚だった。

私はあなたは誰かと聞こうとした。
でも私は自分が声をかける前に、向こうから話しかけてきた。

「…もうすぐ」

「え?」

「…時は…きた。」

「…時って…なんの?」

「すぐに…わかるわ…」

そういうと、辺りはだんだん明るくなってその光とともにその人影は消えていく

「待って!」

その声も虚しく、相手には届かない…
そして…目が覚めた。

「…」

私は保健室の天井を見つめた。
夢?なんて聞かなくても、今のが夢であることは自覚できていた。
夢以外の何物でもあるはずがないのだから。

「変な夢だった。」

私は上半身を起こして時計を見ると、結構いい時間になっていることに気がついた。
もうあと少ししないうちに入学式が始まる。
先生まだきてないけど、そろそろ教室に行こうかな…
一応職員室に行って先生に声をかけて…

そんなことを頭で考えていると、突然ポケットが緑色に光り始めた。

「うわっ!な、なにこれ!?」

携帯?懐中電灯?そんな光るもの、私ポケットの中に入れてたっけ?
私は慌ててその光をなんとかしようとした。

ポケットから取り出した光っているそれは、
携帯でも懐中電灯でもなく、まさかの勾玉だった。

「え、これ、あの男の子のやつ…もしかして、これ光るおもちゃとかだったのかな?
どうしよう…もしかして壊しちゃった?大変!」

どのみちこのままにしておけないし、光を止めないと
そう思ってスイッチを探す、でもそんなものはどこにもない。
あたふたして数秒後…その勾玉から、すうっと光が消えた。

「…なんだったんだろう…」

とりあえずホッとしたのもつかの間。
今度は突然、ドーンという大きな音とともに学校が揺れた。
保健室内にある機材や棚、薬品などが賑やかにカタカタと音を鳴らして揺れている。
私はベッドからちょうど降りようとしていたところだったので、
体制を崩さないようベッドの手すりにつかまっていた。

「な、なに今の…地震?」

保健室内は幸いタンスが倒れることはなかったけど、
薬品や小物は倒れて散らばっていた。
結構大きな地震だった…震度いくつくらいだろう。
…余震もあるかもしれないし、ここにとどまっていても仕方ない。
避難指示は出るだろうけど、逃げる準備を…

バーン。

地震の後の行動について必死に考えていると、また大きな音が聞こえた。
でも、今度は揺れがない。
しかも音がさっきと違う…地震…というより、なんか爆発音みたいな…

でも…なんで爆発音なんか聞こえるんだろう、こんな平和な日本で…爆弾なんか…
私は保健室の窓から校庭のの様子を見た


砂埃だろうか、、、それとも霧だろうか、、、、
さっきまであんなに晴れていたはずなのに、あたりは薄暗くなっている上に
曇っていて何も見えない

いや、よく見ると中央あたりに人影が見える
なんか聞こえ続ける爆発音と連動しているようにみえる、
もしかして、あの人が、、、?

「あなた、大丈夫!?今の地震で怪我してない?」

いろいろ考えを巡らせていると、保健室の先生は慌てた様子で私を心配してくれた
とてもありがたいことだけど、今はそれどころではない

「せ、先生、警察を呼んでください!」

「ど、どうしたの急に」

「さっきのは地震じゃありません、校庭にいる人が爆だっんか何かdれ攻撃を!」

私は必死だった、なんとか先生に緊急事態を伝えないとと、、、
でも、先生はポカンとした表情を浮かべた

「、、、どうしたの?、、、もしかして、夢の話?」

「違います!校庭見てください!人がいるんです!」

先生はピンとこない顔だったので、私は窓まで引っ張って人影が見える方を指差して伝えた、でも先生はそれを見ても困惑を浮かべるだけだった

「うーん、、、酷い砂埃だから、私には見えないけど、、、なんかの影じゃない?」

「本当なんです!この爆発音の原因はぜったい、、、」

「爆発音?そんなの聞こえないけど」

「、、、え?」

そのセリフを聞いて今度は私が固まった
聞こえない?聞こえないってどう言うこと?

そんなに小さな爆発音じゃない、普通に聞こえる、耳を塞いでも振動でわかるくらいには、、、

なのに、、、なんで、、、

「、、、頭打ったのよね?、、、やっぱ念のためお医者様に、あ、ちょっと!?」

気づけば私は、保健室を飛び出していた

聞こえないなんて、、、ありえない

でも、じゃあなんで?

先生には聞こえないの?
それとも、、、


「あれ?ルイ、どこいくのさ!」

廊下を走っていると、心矢に呼び止められる
私は勢いを止められず、彼の目の前を通り過ぎてから体に急ブレーキをかけて顔を向ける

「心矢?どうしてここに?」

「様子どうかなと思って、保健室行こうとしてたんだよ、その様子なら大丈夫そうだね」

「うん、おかげさまで、、、心矢だけ?」

「そう、二人ともさっきから見当たらなくてさ、僕でごめんね」

「別にそれはいいけど、、、」

あ、そうだ、心矢に聞いてみれば解決じゃん
この爆発音が心矢にきこえるなら、先生が聞こえないだけ、、、
他の人に訴えれば、誰かが、、、大人が対応してくれるはず

「ねえ心矢!その地震の後から爆発音聞こえるよね?」

半ば同調圧力をあたえて聞く

これで心矢にも聞こえてれば、一緒に説得を、、、

「なに言ってるの?そんなの聞こえないよ?」

残念な事に、やっぱり聞こえるのは私だけ、、、
じゃあ、これは幻聴?
だったら気にすることはない、、、放っておけばいつか止まる。
少なくとも現実に何かおこおることはない、おかしいのは頭をぶつけた影響

でも、、、なんでだろう
すごい胸騒ぎがする、、、なんでかはわかんないけど、、、
放って置いてはいけない、、、そんな気が

「心矢、ありがとう、先戻ってて」

「どこいくのさ」

「ちょっと」

私はもう一度校庭に向かって走り出した、ちゃんと自分の目でなにが起きているのか確かめるために

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