時 自若 2022/10/29 20:04

今生のローダンセ 第1話

変更せよ。
変更せよ。
速やかに変更せよ。
メッセージは流れ出す。
「くそっ、なんだっていうんだ」
「まっ、そういうことはあるさ」
「あるかもしれないけども、何も今でなくてもいいんじゃないってやつよ」
「こういうのは、意外とそういう時に来る」
「最悪だな」
「しょうがない」
「すまない、割りきりに時間がかかる」
「ああ、それもしょうがない」
呼吸を整えて。
「なんか食べておけ、食べれるか?」
「ああ、じゃあ」
こういうときに、栄養バランスを考えてしまうのは嫌だなと思った。
「いや、それでいいさ、先を見通してのこと、自暴自棄になるやつが多いから、それが出来るだけで、違いが出てくるものだよ」
「あなたは、行かないの?」
「行かない、たぶんまだ準備の段階だし、そういう能力ではないから、行くだけ無駄だし、ここで踏み込まれたら、どちらにしろ堕ちるし…それならばその…なんだ、死に場所を選びたいというか、その…何て言えばいいか」
「わかったわ」
「…」
「一緒にいてくれてありがとう」


寒さで目が覚めた。
夢の中には君がいた。
(もう少し夢を見ていたかったな)
真っ暗な闇、体温が逃げないように、体を覆い直そうとしたら。
カツン
靴音
そして彼女が姿を現す。
「…こんなときに、なんて顔をすればいいのかわからないものだな」
「お久しぶりですね」
死が彼女を連れていった。
怒りと悲しみでいっぱいになり、今ここで一人いるような孤独と血生臭いことが仕事になった。
「ちょっと会いたかったものですから、色々とまあ、やらかして、見に来たんですが」
「死人でもないし、俺の妄想でもないんだな」
生きているし、風呂上がりのほわほわ感があった。
「さすがにどうなっているのかわからなくて、でも幸せにやっているのならば声をかけないつもりでしたが、なんでここに?」
「色々あった、あれから、色々…」
「誰かと結婚しているのかと思った」
「お前な…」
「勧められたりはしたでしょう?」
「した、が、ええっとお前も知っているように、俺らの流派の次代を担うであろう上のほうの家人がズボッと抜けた」
「女遊びで病気もらって、しかも自分の奥さんと子供にまで感染させたってやつですね」
「そう、それを奥さん側の親族と流派が重く見たんだ、それで年は同じぐらいだが、そううことをしてないやつである俺に話が来たというわけだな」
「ご家人株ですか」
「一定の発言力、それこそ、うちの父なんかは欲しかったらしいが、自分が現役の頃には売りに出されなかった、話事態がなかったらしいからな」
「まあ、よっぽどでなければ権力は離さないものですよ」
「ここで払えない額ではないがこの後困窮するぐらいの支払いをするか迷う所、そこまでは知ってるな」
「その後は…結局?」
「お前がいなくなった、それでもよくやってくれたと多少お金が渡された、それを足して、立場は手に入れたさ、そっからだよ、やはりうちのオヤジはお前のことをよろしく思ってなかった」
「まっ、そうでしょうね」


死んでくれた上にお金まで残してくれた。

「そう酒の席で口にしてしまってね、あれなら揉めたんだ」
「そうですか」
「お前の義実家はみんなぶちきれていた、今でも付き合いがあるんだ、できればこのまま義実家に顔を出さないか?喜ぶと思う」
「興味本意で自分がいなくなった場合を見に来ましたが、こんなにあなたがボロボロになっているとは思わなかったな」
「それは…趣味が悪いな」
「そうですかね、でも本当に趣味が悪いなら、たぶんこのままにしてしますよ、私には重すぎたから」
「なんだ?俺の愛がか?」
「愛は悪くなかった、出来れば今も抱いてもらいたいぐらい」
「…」
「あっ、もしかして…」
「大丈夫いける、いけるけどもさ、色んなことが渦巻いちゃってもうよくわからんわ」
「ラブホ行きます?」
「行く」
「ご飯も食べません?」
「食べる!」
「じゃあ、行きましょう」
手を繋いだが。
「あれ、最寄りのそういうところって…」
「待て調べるし…配車してもらわなきゃ」
「明日の予定は?」
「問題ない、仕事しすぎて、二年先まで終わらせている」
「どれだけなんですか」
「レジャーホテル直行のオートタクシーでいいかな」
「今、そんなのあるんですか」
「ホテルまでって運転手さんに言いづらいだろ、これならばオートだし、後だな、そういうプレイオプションもあるから、これも出来れば」
「詳しいですね」
「お前がいたとかにダウンロードしたの、更新し続けていたらこうなった、そっか、別れたあそこからそこまで経過してない状態か」
「私には夢みたいなもんですから」
「では忘れられない淫夢にしなければならないな」

ホテルにつくと。
「部屋はどういうのでもいいか?」
「はい、いいんじゃないですか?」
お部屋はなんでもいいを選択し。
「食事は配膳口に入れてもらうと、はい、じゃあ、行くよ」
(会ってから急に生き生きしだしたな)
カチャ
鍵をかけると。
「会いに来てくれてうれしいかった」
「触ることに躊躇ありませんね」
「あるか、そんなもん…でこれからするでいいよな」
「そうですね、ついでに終わった後、あなたの今までも夢に変えますよ」
「どういうことだ」
「経験はそのままに過去のあなたに合体させる感じですね」
「そんなことも出来るのか」
「ええ、でもそれが嫌なら」
「まさか、お前のいない人生に意味はたぶんないし」
「なんですか?探したりしたんですか?」
「した、なあ、チュウしてもいいか?」
「いいですよ」
そこでキスをするが、彼女の体はピクッと動いてしまう。
「相変わらず弱いな」
男は舌なめずりした。
「誰がそうしたと思ってるんです?」
「俺だな、腰が砕けるほど反応が良かったもので、ついついといつやつだ」
「お風呂では手加減してくださいよ」
「わかってる、本番はベットの上で、もう…ちょっと激しくなるけども」
「そうはさせませんよ」
「えっ?何?何発かお口でしてくれるの?」
「…しなくはないですよ」
脱衣場は広く取られている。
「座るところがあれば良かったのですが…」
「あったら、そこでやるからじゃないかな(名推理)」
「元気な」
「この辺は元気な方がいいの!あっ、洗濯物ある?ここ洗濯乾燥機あるから」
「そのまま入れちゃダメですよ、さっきまで野外にいたんですから」
もう…といいながら世話を焼いてくれる。
この辺でもしかしたら、本人ではなく、何かが形作っている死神かではないか、その疑問もなくなった。
(それならばそれでもいいのかもしれない、人生の最高の終わりだ)
コロン
「あっ、やっぱり石が、こういうのはちゃんとやりませんと」
「ああ、俺がやるから、先にお風呂に入ってくれないか?」
「わかりました」
後ろで衣服を脱ぐ音がすると、耳を集中させたくなる。
シャワーの音が聞こえ、男は急いで洗濯物の準備を終わらせて、あとに続こうと声をかけた。
「俺も中に入っていいかな?」
「どうぞ」
湯船の中に移動していく彼女を背に体を洗い始めた。
「背中は洗いますか?」
「ああ、お願いする」
モコモコの泡で洗いはじめて、はい、これでおしまいの辺りに。
ギュ
そして背中にムニっとする感触。
「本当に抱いてくれるんだ」
「それは俺が言う台詞じゃないのか?」
「正直、ここに来るのもちょっとドキドキした、あの後結婚して、家族いて、幸せにくらすものとばかり思っていたから、なんであんな寒いところにいたんです?」
「精神を集中させるのと休めるためだな、人が多いところではもう落ち着かないんだ」
「それは…」
「あの後忘れるように剣に打ち込んだときに、孤高の剣とか、虎刃ともいうんだが、そう呼ばれた方も隠居することになったんだ、その剣は古式でな、それこそ罰するためのものど、その役割も一部引き継いだのよ」
あとおっぱい気持ちいい、もしかして乳首立ってます?固い部分が当たるのですが?
「そうでしたか」
「お前と会わなかったら、たぶんそっちに行ってた、行く確率はとても高かったから気にする必要はないんだ、洗い流したいし、湯船に一緒に入りたい」
「あっ、すいません」
泡は排水溝に流れていく…
「本物なんだな」
「そうですよ、偽物だと思いました?」
「俺の心は弱いから、その姿をされたら…弱いな」
「でも本物か偽物かわかりますよね」
「たぶん、でも偽物でもいいやになっていたかもしれない、今もその気持ちは…」
「抱き終わったら、あなたを回収して、私と暮らした時まで戻ります、記憶はゆっくりと融けることになるでしょう」
「出来れば、だ…残したい」
「何故に?」
「それが俺だからだ、この経験があれば葛藤も少なくなるだろうし、すまんが向こうに戻ったらまたいつものように俺とだな」
彼女の方からキスをする。
「なんかいつもより積極的だな」
「積極的じゃなかったら、ここまで来ませんよ」
「そうだけどもさ、もっと一緒の時にチュチュしてくれなかったの?」
「勘弁してくださいよ、次の日お仕事じゃないですか」
「それで遠慮してたの?」
「れ、連休の時はその…」
連休の思い出を浮かべ直す。
「あっ、それで朝まで抱いても怒らなかったのか、普段はダーメ、今日はここまでですよって止めていたから、ガス抜きに中だしたっぷりさせてくれていたと思っていた」
「はっはっはっ、何のことかな」
「俺のこと好き?」
「さて、どうでしょうかね」
「この辺が本物でしか出せないクオリティだな」
「しかし…」
「なんだ?」
「大分お怪我もなされたようで…」
「ああ、でもこれは仕事と言うよりは手習いでの傷なんで」
「どれほどしごかれたんですか」
「受け損なうと危ないものだよ、けど先人たちの技は受け取らなければならない、そして出来れば伝えたかったものだが…ああそうだ、俺は一人だが、場合によってはお前と子供をたくさん作り、お父さんやっている世界はなかったのか?」
「それはノーコメントで」
「…あったんか、俺がお前の卵に精子をくっ付けれたそんな世界が、出来れば参考のため聞かせてもらいたいものだな」
「え~」
「そこは後で封印しても構わないし、たぶん俺は言わないことを満足できる」
「う~ん」
「そうか…それも言えないか…」
「義父が隠居して、そこからあなたと娘婿さんと三人でよく笑いながら、飲んだりしてますよ」
「そうか…って、娘婿…」
そこで色々と考えて…
「関係良好なら娘とも上手くいっているだろうし、ええ」
「まあ、逆にあなたが先にお亡くなりになり、娘夫婦と私が暮らしている世界もありましたが」
「つまり未来は無限大ってことだな!」
「そう…ですね」
「そうか、そう思えば、俺と一緒に暮らしていたことに後悔はあったか」
「それは一度もなかった、たぶんなかったからでしょうね、今の人生になってしまったあなたの顔を見に来たの」
「そっか」
「早くベットに行きましょうよ」
「おお、そうだな」
「今日は寝かせませんよ」
「キスしながら、お互いの大事なところクチュクチュ勝負したら、すぐにギブアップしちゃうのにそんなこといっちゃうの」
「ま、負けるわけないじゃないですか」

ローダンセ、花言葉は変わらぬ思い。

『食えないの神には祈らない』から、
『今生のローダンセ』は始まる。

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