時 自若 2022/10/30 20:55

今生のローダンセ 第2話 片手に番傘

寒いところにすっといた、俺の心を温めてください。
「ちょっとしばらく、こっちにいないか?」
「えっ?」
「いや、何て言えばいいのかな、その、回収される前提で、少しばかり一緒にいたいというか」
回収されて、経験として回収されたとしても。
「思い出だけは俺だけのものにしようと思いまして」
こういうところは変わってないようです。
「久しぶりのエッチは…その良かったです」
照れ照れでいうところに、彼はそう変わってないんだろうなが見えるのだが。
「わかった、しばらくこっちにいますが」
ボフッ
そこで体を預けて。
「浮気はできませんよ」
「しーまーせーん」
ちゃんと貞操は守っていたようです。
「ご家人株を買ったわけなんだが、ご家人株を売った理由が、女遊びで健康を損なっただからな…それを買った人間が、少なくとも俺の代で遊ぶわけには行かないよ」
「バカね」
「そう思うなら、キスして」
「はいはい」
グッテェース~
「どうせこっちの世界は俺の回収ともに、無関係になるわけだが、まあ、そこそこ義理を尽くしてから、去りたいものだしな」
「あなたがいなくなった場合、跡継ぎは」
「妹が婿か、弟かって感じだな」
「揉めそう?」
「どうだろう?理想は話して決めてほしいところはあるが、たぶんそこでもめたら、流派の方で言い渡すだろうな、うちのオヤジとしてはどっちでもいい、自分の家がそうなったからであって」
「あなたのことをあまり見てないのね」
「見てなかったんだなって、俺の苦労よりも、ご家人株に心踊っていて、あなた!ってオフクロに窘められていたのを見たときに、ああ、この人にとっては…とは思ったな」
「聞きにくいけども、私の生家は?」
「滅んだよ」
「そっか、滅んじゃったか」
「ああ、恨まれて、滅んだときにはざまあみろっていう感じで」
「うわ、うちの生家、何やったんだろう」
「恨まれるだけのことをした」
「そうなんだけども、そうなんだけどもさ、そうか…はぁ…」
「上手く飲み込めない?」
「飲み込めないな、悩みの種だったから」
「お金な、欲しがったよ、義実家の義姉さんがその話をしてくれた」
話聞いてて気分が悪かったことはない、塩をまけ、塩を!
「本当にあの人たちは、自分のことしか考えてないな」
「それこそ、出来のいい子供を狙って、上に行こうとしていたようだしな」
「そりゃあ、そういうことしかできないんだよ、自分じゃできないし」
「なるほどな、それで義実家に行ったか」
「あと養子の話は?」
「生家のものか?ああ、聞いた、だがあれは、見栄のために入れるって感じだな」
「意味わからないよね、いきなり入れると、なんか欲しがられたらしいけどもさ」
「それの話か」
生家の方でも養子の話は何件かありました。
「一件だけだったぞ、まともな話、後は妄想かな?」
「一件は?」
「ああ、それは…」
話を聞いたところ。
「それは…」
「行きたかったか?」
「少しね、そうか、それは養子必要だわ、家がめちゃくちゃになったか…」
「だな」
「私からすると養子の話としては、今のところが条件とか将来性がある、他は情は動かされる一件と、それ以外はバカの考えって感じで」
「まあ、そうだろうな、お前のことを考えてないものな」
「聞かされて驚いている」
「人間なんて言葉ではなんとでも言えるから、実際に選択したことが何かで、きちんと判断しなさい」
「そうね、付き合うなら大事にしてくれる人に決まりね」
「そうそう、それでいいんだよ…俺はちゃんと…できてる?」
「できてるわよ、本当は言いたいのだろうがグッと我慢しちゃうくせに」
「うっ…それはだな、男の意地というやつで」
「でも一回心許すと、赤ちゃんみたいになるし」
「そこはさ、バブバブしたいんでさ」
「そうね、おっぱいは美味しかったでちゅか?」
「おかわりを所望する」
「おい」
「なんだよ」
「あんだけしたらもう十分でしょうに」
「チュパチュパし足りないぞ、ママのおっぱいはエッチだから、口に含んだあと、チロチロ嘗めていくといいんだぞ」
「相変わらずエッチなことを言う」
「言葉攻めって大事だよね」
「えっ、まさかそういうので」
「ふっ、ようやく気がついたか、エッチな妄想を促す表現の力、見せてやるぜ」
「勉強をしてきた成果をそこに出さなくてもいいんじゃないかな」
「種付けは通年っぽく見えるが季語だぞ」
「それは人のものではないでしょうが」
「いけるって、人はエロを求めているわけだから、今からやれば、そのうち家元、宗家になれちゃうぞ」
ふっふっ、おはようございます、今日もいい子ですね。
どうしました、ピクピクさせてしまって、そんなにこれがいいのですか?
でもまだ好きなところ触ってないでしょう。
ツン
あら、お尻が浮きましたね、緊張してます、もうダメですね、悪い子ですよ。
「そういうのっていいよね」
「あなたは私にそういうのを求めているかもしれないけども、私は…」
「わかる、みなまで申すな、俺もな、苦手ではないんだがな、攻めるよりも攻められたい、でもな、そうはいいつも肌に這わせる舌は止められない…おっ、今よくなかったか」
「そのうちエロ小説書きそう」
「お前との日記はエロ小説みたいなもんだからな」
「!」
「まあ、そういうのは他の人間に見せるものではないから」
「ちょっと待て、つけてるの?え?えっ?」
「世の中には必要悪という言葉があって」
「バカじゃないの」
「俺の死と共にこの世から消える仕組みだ」
「コレーの手帳、そういう使い方しちゃうものなの」
「そうだな、しちゃったな、たぶん子供とかいる方の世界の俺は、育児記録とかもきちんとつけていると思うが」
マメなのは確かである。
たびたび出てくるコレーの手帳は、俗にいう魔術書をカバーに使ったものである。
「昔は紙が貴重品だったからっていうのもあるし、その魔術書の力を借りたいとかいう意味もある感じなんだけども、あなたのは…」
「デートした時に買ったやつだ」
「まだ持ってたんですか?」
「持ってたよ、ボロボロになったら交換するかなって思ったけども、さすがにお前が選んだものだな、今でもきれいに使えるから、ずっと…使うことにしてやったぜ」
「あなたとデートした帰りって妙に掘り出しものと出会うのよね」
次にいったらお店が閉店したり、移転したりなど。
片手に番傘の表紙が今の彼の手帳でもある。
「相合傘もあったんだけども、それをあなたが使うには、可愛すぎるかなって思ったのよね」
「お揃いにしようよってあの時いいましたが…」
「そうね、結局あなたがそれも買って、よかったら使ってて…まだ持ってるわよ」
チラッと持ち物を見せる。
「ほほう、やはり俺のこと忘れられないんですね」
「何回もいうけども、そっちがもしかしたら危ないかもって思って見に行ったら、誰もフォローしてないのが悪いんだからね、フォローしてたら…そのまま帰ってたわよ」
「ふっふっふっ」
「何よ」
「こういうやり取りが本当に楽しいんだよな、すまんな」
「謝るなよ、そんなんでさ」
「そうか?」
「そうだよ」
「後でそっちからキスしてくれたら、許す」
「それは…」
「俺は正直、もういいんじゃないかなってぐらいやって来たし、このぐらいのわがままはいいかなって」
「わかったわよ」
「おお、そうか…じゃあ、まずは腹ごしらえからか」
「何食べたい?」
「そうだな、一緒に作るのも久しぶりだしな、簡単なものでいいから、暖かいもの食べようか」
手を繋いだ。

これは、ただ生きていただけじゃ素直に繋げなかった手だ。

「離す気はないぞ」

男は昔と同じように自分の意思を伝える。

「フラッとどっか行かないように繋いでおいて…」

こんなこと、女は昔は言わなかった、いや、言えなかった。

それだけのことと、時が過ぎ去り、ようやく、軽口を叩けるようになったのだった。

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