時 自若 2022/10/31 09:45

今生のローダンセ 第3話 薔薇病

第3話ウサギの睾丸野郎または薔薇病

「久しぶりにその言葉聞かされたわ」
彼が知己に会って話を聞いてきた後にこうもらした。
「ああ、あの病気の特長を捉えた罵りというか」
ウサギの睾丸にその原因はいるし、進行が進むと薔薇のようなものが肌に出る。
「若い娘さんと遊んで、自身だけではなく、妻子に、それこそ母子感染させてしまい、次代を担うことを期待されていた若者たちがごっそりいなくなる、いや、いなくなるだけならばまだか…」
その後を継ぐ人たちや残った人たちが大変だった。
「ウサギの睾丸野郎っていうのは、誰かがいい始めたら定着した、俺には直接というよりかは陰口だがな、でもそれをいい回っているやつがいるのは、聞かされていいものではないよ」
「そりゃあそうね」
「うちのオヤジは、上にコンプレックス持ってたからな」
「その話は移動しながら聞くわ、いつまでもここじゃあ、寒いでしょう」
「ああ」
「どっかお店に…あっ、この辺大分変わっちゃって…」
「まだあの時行ってた店もあるし、新しいところもできてるが、新しいところは、俺も行ったことが…」
「良ければ新しいところ行く?」
「ああ、そうするか」
腕に手を絡ませてくれる。
(今日もokですよね)
掌に指で合図を送る。
ちょっと驚いた後に、返事が来た。
(今夜も頑張る!)
ゆっくり話ができそうなお店に入る。
「あっ、座席広いわね」
「最近こういうタイプのお店が多くなった、この地域は昔からのお店はこう…狭い感じの、あれはあれで嫌いではないのだけども」
「そうね、それはそれでいいものよね」
暖かいものを頼む。
「本当に何から話せばいいのか、話は長くて、俺はあまり上手ではない」
「それでもいいから話してちょうだいよ」
「ああ、とりあえず、俺がいる流派は宗家に生まれる以外の最高峰が、今いる立場だな、ただここにいるには金がいる」
「それを払ったんでしょ」
「お前への見舞金が一部使われている、それがお前に対して後ろめたいことの一つだ」
「でも誰かが言ったんでしょ?」
「ああ、義父の奥さんだな」
第一婦人に当たります、良家から嫁いできて、家での立場もトップ。
義父とは適当に仲はいい、実子あり。
「今はうちの母の茶飲み友達しているんだがな」
「ああ、そうなんだ」
「俺にそのご家人株を金銭的なものを払えば譲渡、流派内での立ち位置を確保できる話は、普通に来るのならばそれは栄転だし、喜ばしいことだが、求められているのは苦労だ、かぶった泥を取り除くことだな」
「どのぐらい綺麗になった」
「まあまあ、お前がいなくなってから他にやることがなくて、イライラしたら怪異とか切ってたら、もう俺がやんなくても大丈夫だろうなぐらいは回ってるよ」
「苦労したのね」
「お前がいないことに比べたら、うん、本当に帰ってきてくれて良かった」
彼女は死んだかと思った、見送ったと思ったが、先日じゃ~ん!と言わんばかりに帰ってきた。
死者ではない、死者でもいいが、死者ではないのである。
「道術の適性があったので、生と死が存在しなくなる周期があるみたい、それが始めておこってああなった、肉体と精神が分離したってことで死んだように見えたというか、肉体が止まったが正解かしら」
「ある意味魔法使いが到達したいところではあるが」
「嫌だわ、面倒な、私はこんなもの望んじゃいないし、時間も遡れるっぽいから、あなたの顔を見たら帰るつもりだったのよ」
「それがつい出てきちゃったってか、愛されているな、俺」
「そ、そんなんじゃないから、なんで幸せに生きてないのよ」
「幸せを感じたのはお前といるときで、いなくなった後、本当にひどく虚しくてな、荒事もそうだし、溝さらいやってた、最近はそれも一段落して、もう一回見直すかなって、あの小屋にいたんだが、まあ、再会したじゃん、俺のしばらくそのように使ってないティンコさん、むずむずしたね、まだ行けるみたいじゃない、じゃ行くゾッて」
「あのね」
「で、どうでした?」
「気持ち良かったです、これなら満足なの」
「ちょっとな」
「ちょっとって」
「ちょっとって言うしかないでしょうに、日中は話聞いたりして、必要なことを集めることにしたんだから」
「情報ぐらいは持っていけるし、そりゃあ必要な、使える経験を持っていたら、後で楽よ」
「でしょ、だからそれをやりつつ、夜はお楽しみ生活に、なんか新婚旅行みたいだね、婚前旅行みたいなのは結構したけども、衣装は好きなの選んでいいよ」
「なんで結婚式の話になるのよ」
「(俺が)挙げたいじゃないですか、(俺が)神の前で誓いたいじゃないですか」
「そうね…」
「本当に一緒にいたときしがらみ多かったんだな、今みたいな乗り気な反応してくれなかったし」
「何しても揉める、言われる、そんな感じだったからね、気に入らない存在なのよ」
「なんでさ?」
「まあ、いろんな面から、最終的には身罷の大家の養女になったのもダメみたいだったし」
「それは…」
「何が生家が求める、私が生きてほしい理想かわからないけども、あるときからそれは人間の扱いではないものに変わった、それを抵抗したらまあ、もっとひどくなったんだけどもね」
「それは業とか?」
「確かに呪いのような業はあったんだけども、私には100%来なかったのよね」
血筋につくとされていた、身罷の大家ならばそういうのに詳しいと思った、それにあそこならばそういう人間を受け入れるだろう。
「でもどのぐらいかわからないけども、だんだん変質はしていったよね」
「今はぷっつりと切れている、それこそ死を持って切れているのかはわからないけども、気配がない、まるで向こうからは見えないような、本当はそこも調べたいところではあるんだけども、おかしいじゃない?」
あんなに苦労させられたのに。
「まあ、後、あの時言ってなかった情報のひとつに、あれが生霊混ざってたとかなのよ」
「えっ?それは」
「おそらく私の身内ではないだろうかと、まあ、義実家にいたときに…」
痛いとしばらく来ないからこれで。
ハンマーを渡された。
「やれない?やれないならこっちで散らしておくけども、また来るから」
「それは私がやるとどうなるんですか?」
「どうなるかは、打ち破った後でないとわからない」


「って言われたんだ」
「俺が反射的に切る以外で止めてたのもそれか、言ってくれればいいが、生霊だとそれすらも餌か」
「そうなんだよね、一応魔除けの印を模写することで避けてはいたけども」

やがて元へ帰る。

その意味を込めた丸、いや、これは星である。

星の図案は、☆の形が多いだろうが、日本古来の星は○であった。
「それで書いていくと黒く変わっていくんだよね」
ああ、来てるのか…いや、いるのか。
「それを義姉さんに燃やしてもらったんだ」
そういったものを浄化する炎を管理している。
「姉さんはそういう家の生まれらしい」
「ああ、ピュティスの」
ピュティスは妖精ピュティス。
「そういえば何回か会ったことは会ったわね」
「…すごく言いづらいんだが」
「何?」
「お前がいなくなったあと、見合いの話が何件か来た。そのうちの一つがお姉さんでな」
「あっ、いいんじゃないの?」
「お前な」
話がグイグイ来たのが五件はありました、そうじゃないのはたくさんです。
「話はそこそこ進む相手だったから、っていうか、向こうからはいい印象は持たれてはない」
「そういう意味では戻れるのならばこの世界から必要なものをがっつり持っていった方がいいんじゃないかと、俺は…思う」
「ご家人の筆頭は誰なの?」
「一応は俺だ、持ち回りだがな」
みんな同時期に着任したので、二年に一回交代することになりましたが、それども一番払ったというか。
「そこも父がな」
「本当にあなたのお父さんは」
「先輩からも話は聞いたが、抜けた人たちの親の世代だな、あそこがオヤジをあまりよくは思っていなかったらしい、そしてオヤジも上についてはあまりよく思ってはいなかったそうなので、おそらくご家人株の話はなかった、譲渡事態もその時代はなかったとされるが」
それでも先輩は人間関係を教えてくれた。
「あくまで私の主観だが、もしも譲渡が起きていたら、先輩はこの位置、私はここで先輩より上にもなるが、それでも上がれることはないだろうな」
先輩の先輩が彼の父である。
譲渡の話が持ち上がるとしたら、数的に上から五人か六人ぐらいがいいところで、彼の父は二桁番、先輩がギリギリ一桁というところだ。
「これは自分の結婚相手の家族、そちらの一族が後ろ楯があると順位が高くなるんだな、今回の場合は」
まず親から譲られる門弟がごっそり上からいなくなった。
「娘と子供に母子感染させるは、遊んだ相手から高額な費用を請求させるはってことで、重く見たので、譲渡させる条件が実子ではなく人柄でってことになったんだ、少なくともこの段階で不貞を働いているやつがまず減る」
そこで×をつけていった名前に少々驚いたりもした。
「驚いたか?」
「ええ、まあ、少し」
「普段はここまではな、でもな、監査はちゃんと仕事しているよ、泣かされた女性が駆け込んできたとか、恨みかいまくってるとか」
「怖いですな」
「そうだな、お前には縁がない話だ、それでお前だ、単純に問題がないから選ばれたが大きいが、金銭的な問題が譲渡には絡むから…他のところはそれを問題なく支払えるだろうから話が来たところもある」
次男三男辺りにつける称号としては悪くない買い物だそうだ。
「だからまあ、お前のところがああいう理由で前以て払えるのならば、推薦もあったし、ご家人として同期ではあるが、筆頭はまずお前だろうな」
「推薦?」
「知らんのか?前に…」
とある達人が見学に訪れた。
が名前があまり知られてないものだから、先生の知り合いのおっさんだろうぐらいなもんで、だらけているものもいる。
「すいません、今すぐ」
「良い、こういうときこそ、どういう人間か見えるもんだから」
先生と達人はそのまま世間話の花が開いた。
「それでトイレに行ったとき、廊下でお前が素振りをしていたそうなんだが」
「ああ、あの時の、技のアドバイスをしてもらいました」
「そう、それでお前はその後、教えてもらったやり方で強盗叩きのめしたからな、その時教えてもらってありがとうございましたの手紙を先生経由で送っただろう、あれだよ」
不祥事だね、いっそのこと潰してしまった方がいいんじゃないかい?
腕のないものには冷たい人だったが。
「ふむ、でもまあ、この子がいるのならば悪くはないね、この子をご家人に入れるのならば私は応援するよ」


「ってな」
「ええ、そんな話が!」
「少なくともお前は、その後も、墨硯(すみすずり)先生が亡くなるまで、理想的な生徒であったのだよ」

この記事が良かったらチップを贈って支援しましょう!

チップを贈るにはユーザー登録が必要です。チップについてはこちら

月別アーカイブ

限定特典から探す

記事を検索