時 自若 2022/11/03 07:33

今生のローダンセ 第7話「勝ってはいけない」

「この辺来るのは久しぶりだわ」
「そうなのか」
「前は確か、そう…」

お使いであった。
「新しい鉱物用の鍼の見本とその説明を届けてほしい」
「わかりました」
その時も二回は来たことがある。
少し辺鄙だ、スーパーやコンビニがまとまっているところから足を伸ばした先に、依頼された屋敷があり、そこでのお届けはスムーズに行われた。
緊張したので、終わったらなんかお腹が空いてきた、なにか食べるものをとコンビニ側に向かって歩きだしたときに。
「おや、君は」
知り合いのお偉いさんである。
「君のテリトリーはここではなかったと思ったが」
「お使い帰りです」
「それは大変だね」
その話中に。
「お兄さん、お姉さん、景気良さそうね、私と勝負しない?」
その娘がお兄さん、お姉さんと呼ぶほど何歳か離れたぐらいの容姿をした若い娘だった。
「ああいいよ」
すぐにお偉いさんが受けた。
「君もいいだろう?」
巻き込まれた。
「いいですが」
「じゃあ、決まりね」
「カードでいいかな」
「いいね!」
若い娘さんはノリが良かったのでご機嫌になったようだ。
(この勝負勝ってはいけないよ)
お偉いさんはぼそっと呟くが、トーンとしては仕事時のものなので、接待プレイの始まりである。
「僕が20」
次は私で、最後に勝負を仕掛けてきた娘さんというわけなんだけども。
「私も20かな」
「これは面白くなってきた、こういうときがたまらないんだよね、さあ、勝負だ、21、21!やった私の勝ちだ!」
「勝てると思ったのに」
「どうする、続ける?」
「いや、勝てると思ったが勝てないときは素寒貧まで行きそうなんでね」
「お姉さんは」
「私もここで、ちょっと豪華にご飯食べてから帰ろうと思ったけど、抜きになりそうで」
「そっか、じゃあ悪いね」
掛け金を手に取る。
「もし良かったら次も遊んでね」
娘は場から立ち去った。
「悪かったね、これで食事でもしてくれ」
そういってお偉いさんは自分の懐から数えもせずにお金を出した。
「ありがたくいただきます」
「僕が勝ってしまうかと思ったんだが」
「勝ちたくはなかったようなので、勝たせました」
「いい腕だ、これから君は帰るのかい?」
「はい、一刻も早く、何か食べるもの勝っては帰りますが」
「その方がいい」
「では失礼を」
「君は何も聞かないんだな、…これから明日から一週間、この地域に起こる事件を知っておくといい、じゃあ」
「失礼いたします」


「ということがありました」
「それで話としては?」
「彼女、男性の精液を鉱物資源に変えれる存在で」
勝負から三日後に彼女と性交渉した男性が被害にあった。
「人間ですらなかったか」
「昔からいるみたいですね、狙われたのはお偉いさんで、下手に犠牲にでもなれば、私が犯人にされる恐れがありました」
ギャンブル好きだが雑魚である、勝っても負けても興奮すると男が欲しくなる。
「お兄さん、私と遊ばない、今ちょっとエッチしたいんだよね」
チュボン
ただ彼女が勝つと被害は比較的少ないとされていたので、勝負に乗らないか、勝たせたほうがいい。
「なるほど、怖いな」
「まあ、でも対処方法さえわかっていればそうやって避けるだけで、根本的な対処をしないところが一番怖いと思いますよ」
「確かにそうだな」
「まっ、早めにここから抜けましょう、今の私は当時と姿変わらないから、誘われることが考えられます」
そういってさっさっと食べるもの飲むものを買い込み、移動した。
「あれ、今の、見たことある人かもって思っていたけども、行っちゃったか、残念…」

あっ!

「そこのお兄さん、私と勝負してみない?」
彼女はあなたに微笑んだ。

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