時 自若 2022/11/17 11:21

今生のローダンセ 第23話 でも俺は心からワンワン

「こっちに訪ねてくるのは珍しい」
そういって彼は彼女にお茶を入れてくれるが。
「ここは変わってないですね」
「まあな、必要な書類や何やらは増えてはいるが基本は、私室扱いだからな」
こちらでデスクワークがある場合、彼はサラリーマンのような姿をしていた。
彼女もこちらに合わせて、おとなしめな格好はしていたものの。
じっ
胸やお尻に視線を時々向けていた。
「こちらにほとんど資料もあるから、住居は変えてもそう…差し支えがなかったわけさ」
淹れてくれたお茶は寒い今日には特に美味しく感じた。
「それに入り口も、人目がつかずに入れる場所があるから、こうして訪ねてこれるわけだし」
さすがに表は使えないので、そういう入り口から出入りすることになってはいたが、本来はそちらの、隠し口はよっぽどでないと教えないものである。
「そこは…前も言ったが、誠意といいますか…その…」
下心はありますが、真剣ですよといった具合。
「一応やってもいい部屋でもあるしな」
「えっ?」
「言ってなかったけども、まあ、若いから、場所も困るし、逢瀬の場だしってことで、ただこれも問題が多い奴にはその話はしてない」
そう、知らない奴がやった場合は糾弾される。
「最初から問題起こしそうな奴に教えても、問題増やすだけだしな」
思い出しているようだ。
「実はな、お前と暮らし始めたときにあったんだが、それは私室持ちではなく、全然関係ない奴が連れ込んでてな、そん時出来ちゃったとかで」
「うわ…」
「しかも許嫁は別にいて、遊びだったんだが」
「それはヤリ部屋持ちにはなれませんね」
「ヤリ部屋なんて、どこでそんな言葉を知ったの!」
数秒後。
(俺が教えたんだったわ)
思い出しました。
「後、変な噂も流れてますね」
「どういうの?」
「あなたがようやく新しい相手を見つけたかと思ったら、前の相手と似ているから、結局踏ん切れてないみたいな」
「10年は忘れるにしたら短いだろうよ」
「出会ってから生活した時間の何倍かにはなってますが」
「それは密度の濃い時間だったと、そりゃあ俺も濃いのが出るさ」
「飛ばしますね」
「普段こういう話ができないから、自分でも驚いているよ」
だいたい真面目って感じで、このような話はしないものと思われていたが、彼女からすると、こういう話バンバンするし。
「まだ物足りないのに朝が来ちゃったしさ」
「ちゃんと寝てくださいよ」
「スッキリして寝るのって最高なんだよ」
「…私も甘えてしまいましたしね、今日は甘えませんよ、だからゆっくり寝てくださいね」
この言葉は逆効果です。
「言葉攻めかな?」
この娘っ子は!
「俺も大分、素人童貞をこじらせている部分があったからな」
「自称素人童貞では?」
「うちの流派は性的なことで失敗しないために、年齢で、人にもよるが、毛が生えて、ちゃんと子供が作れる頃に、訓練するからな」
「でもそうしないと、無理矢理するからとか前にいってましたね」
「そうなんだよ、荒っぽい連中とみられるわけにはいかないからだな、それでまあ、俺もそこに則ってってやつだ」
相手は性別を選べます、申告制です。
「もしお前がうちに来てたら、相手は俺に決まりですが」
「相変わらず基本の動きしか私はできませんから、入門はしませんよ」
「でも、うちの流派の閨と捕縛は知っているからな」
そこでお茶が変なところ入ってしまう。
「ごほっ」
「あっ、大丈夫か?」
「ここで閨だの、捕縛だの」
「俺が我慢というか、やりたくてしょうがないって気持ち抑えているのは、好かれたいからから入っているわけどもさ」
拭き取るものを貸してくれる。
「ありがとうございます」
「どこかにこぼしたか?」
「大丈夫でしたね、たぶん」
そういってキョロキョロ確認をする。
「失礼しました」
「いや、俺の方こそ、さすがにむせるとは思わなかったし」
「事実でむせるので、私の方こそ、修行が足りませんよ」
「へぇ」
あっ、これは変なスイッチを踏んだ。
「どうも夜まで待てそうもないのだが」
手の握り方も、指を絡めてくる。
「あの~ちょっと」
「よいではないか、良いではないか」
そんな台詞、時代劇以外でははじめて聞いた。
スリスリ
匂いをつける、嗅ぐ、それらを同時に行う動き。
「なんかこう…こういう時犬っぽいですよね」
「ワンワン」
「こういう人って、周囲からは思われてませんよね」
「でも俺は心からワンワン」
手もお尻へと伸びてくる。
ムニュからのサワサワ。
「さっきもいった通り、今日は満足する前に明け方だったからな」
息をかけてくる。
「それは…」
「お前が甘えたのもそうだが、何しろ気持ちいいことまた覚えたのもあるからな」
「こういうのってまだ増えるんですかね」
「わからん、人によるが、どんどん相性が良くなる感じだ」
「相性?」
「体の」
「体の…ですか」
彼女は赤くなる。
「…確かに弱くはなっていますけども」
「そこは俺もビックリなんだが」
真顔に戻る。
「俺の欲望と勢いを受け止めるわけだから、痛くないの重視してたんだが」
(おっ)
「最近ちょっと優しいのが物足りなくなってるんじゃないかなったは思うよ」
イタズラっ子は指を入れてくる。
「これは次のステップに進む時ではないか!」
「次のステップ?」
「交換日記」
そこで空気は少ししらけたが。
「または許されるものならば、出会ったときから今までを文書で残し、会えないときはそれを眺めてニヤニヤしたかった」
「もしもそれを実際に行い、私があなたの様子を見に行ったときにそちらをお読みになっていたら、たぶん会わずに帰ってましたよ」
「そうだな、誰もが引くだろうなと思い、行動に移しはしてないが、俺の欲望はそんなんだしな、はぁ~俺は本当にダメな奴だな」
ポンポン
彼女がそれを聞いて、合図を送るかのように頭をポンポンした。
彼の顔が明るくなる。
「そんなに溜まっていたら、ますます悪いことを考えるかもしれません」
そこで彼女がシャツのボタンをはずしてくる。
「他にしたい相手はいるかもしれませんが、とりあえず私で我慢してくださいね」
ズボンを脱がせると、興奮したものがブルンと出てきた。
「あっ」
戸惑ったようだが、息を整えて。
「それじゃあ、始めますよ」
もうこういうことするから、大好き!


「あれ?今日は日替わりもうないですよ」
いつもなら品切れ前に食べに来るはずの男がいないので、休みかなと思ったら、食堂の終わり時間ギリギリにやってきた。
「来客があったもんでな、…今日はカレーにしておくか」
「はい、カレー入ります」
カレーといっても薬膳のカレー、ああ、夜は夜で挑むためにこのメニューを注文したようです。

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