時 自若 2022/11/23 06:51

今生のローダンセ第29話 浄霊で町おこし

「ようこそ、おいでくださいました、私はこの屋敷を任されたものでございます」
美しい女性だ、主人は彼女をマリと呼んでいた。
「あらあら、行けませんわ、お客様、恨み辛みで撒き散らかしたままではありませんか」
するとどうだろうか、屋敷の内部が上下左右が歪んでいく。
「ご主人様が長らく訪れず、来訪してくださったお客様はとても良いかたでした、そのお方を追ってこちらにやってこられたのですね」
ふっふっと彼女は笑った。
「お仕事しなくてはいけません、招かれざるもののお相手をするのは久しぶりではありますが、根競べと参りましょうか」

「えっ?マリちゃんが、そんなことしてるの」
「はい、マリお姉さまからの連絡で、あとはこちらで何とかすると」
「…」
「どうかなさいましたか?」
「こんな方法で長年のものが解決するとは思わなかったんだけども」
「喜ばしいことでは」
「それはそうなんだけどもさ」
観光、彼氏がゾンビ退治のお仕事の後にデートしたいと行ったので、観光地にいきましたら、歴史ある建物に足を踏み込んだところ、その建物を守るマリという女性に出会う。
彼女はその屋敷の紫陽花、そのマリをマリお姉さまと呼ぶのは、株分けされ、彼氏の屋敷に植えられた紫陽花の「うらく」である。
「どうしよう、これ」
「招かれざる客を排除するのは、屋敷のものとして当然です」
「それはそうなんだけどもさ」
「ただいま」
「ああ、お帰りなさい」
「お帰りなさいませ、旦那様」
「うらくちゃん、いつも手伝ってくれてありがとう」
そういってお菓子をくれた。
「ありがとうございます、あの奥さまの業なのですが、マリお姉さまが今お屋敷で相手にされておりまして」
「ん?それは」
「これで頭を悩ませることはありませんね」
「えっ?えっ?それでいいのか?なんとかなるのか?」
「なんとかなればいいんだけども」
「なりますよ、絶対」
「こういうのは勝負がつくまでわからんからな」
「確かにそうなのですが、あの地の、地脈からも力を借りてますから」
「そうなるとどうなるんだ?」
「地脈だと、それこそ業の人霊は相手にするのは向こうの土地ってことになるわね」
簡単に図にしてみる。
「人霊由来ともなると、神格持ってない場合は、地脈相手では分が悪いな」
「逆に飲み込んで大蛇になるとか、悪い例もあるんだけども」
「水蛇となった場合は、矢で頭を射抜くそうです」
「射抜くのもマリちゃん?」
「いえ、あそこには神社があります、二手の社が、神事として弓の名手が毎年選ばれます、お祭りでは水蛇に見立てたものを撃ち抜いて、毎年盛り上がりますね」
「これ、本当にどうしたらいいんだろう」
「結果はいつわかるんだ」
「人間の感覚では計れないと思います、明日かもしれませんし、100年後かもしれません」
「マリちゃんが負けるとは思わないけども、怖いかな」
「何がだ?」
「負けたときにどうなっているのか、さらに恨みを重ねて、その時私は飲まれてしまうのか」
「それは考えすぎでは」
「ああ、ごめん」
「いや、こいつはそれだけ苦しんだから、怖いんだよ」
「怖いですか…」
「それはあるわね、とても怖いわ、自分の人生をめちゃくちゃにしてくれたものが、一旦は離れているのでしょうけども、もしもの場合がとても怖い」
「だから人を寄せ付けず、一人で死んでしまえばいいとか思ってるんだぞ」
「それは…どうしましょう、決着をつける、マリお姉さまじゃなくてもいいから、誰かが討ち取った方が安心するのですかね」
「安心はする、安心はするんだけどもね、怖いね」
「同じ言葉繰り返すときは、本当に怖い、不安なんだ、あれは何をするかわからない怖さと力がある」
「それは何としても吊し上げなければ…」
「吊し上げれるのならば、吊し上げてたさ、それが私ではできなかったから、苦しんだ、あれはそんなんだ」
「あの地域の他に暇しているものもみな、手伝ってはくれてはいるのですが」
「本当に嫌なのは、私が不安だと思えばそれも喜び力を増す、あなたたちが負けるのは嫌なんだけども、一番の敵は己の心にあるんだが」
「そこも俺の愛の力で大分ましになったぞ」
「さすがです、旦那様」
「自己嫌悪、後悔、そこら辺は本当に辛いものがある」
「昔ご主人様もそれらを抱えておりました、酒を浴びるほど飲んでおりましたし、それに比べると奥さまは健康的だと思います」
「そうなの?」
「酒に溺れるというのは大いな、理不尽さに耐えられないのだ」
「理不尽さは、確かに世の中にあるでしょうが、そこまで絶望することはないとは思う」
「強いですね、奥さまは」
「そうなの?そこは感心しちゃうの?それぐらいも出来なければダメだよねじゃないの」
「それは誰が言ってたんだ」
「えっ?うちの…あれ?あれ?」
「なるほど大分根っこは深いようだ」
「これはいけませんね、家族のことになるとどんなに悪でも慈悲深く接してしまうのは奥さまの悪いところどはないでしょうか」
「それは…あるな、ただこの辺は難しいんだ、俺は家族とはそうじゃないからかもしれないが」
「ああ、うちの主人は骨肉の争いの唯一の癒しがあの庵でしたから」
「そういえばそういう説明はパンフレットに載っていたな、そこから連休などではお茶会が開かれていたりするとかも」
「お抹茶お菓子がついて500円ですよ」
色んな流派のかたが持ち回りで開催してくれます。
「とりあえずゆっくり休ませて、いきなり業の相手をしてるから、私のところに向かってこなくなりましたって言われても、話についていけないから」
「それじゃあ、ゆっくりするか」
「旦那様も奥さまもご休憩ですね、後はこちらで片付けておきますからごゆっくり」
その観光地で手が空いてるものが、順繰りに当番と称して相手をしているというのだが。
「不安か?」
「まあね」
男に体を預けた後でも心の暗雲は消えず。
「じゃあ、そうだな…こういうときは、勝てるように勝ちに続くようなことをすればいい」
「後方支援ですか」
「そうだ、まあ、あそこの地域はそれこそ酔っぱらいのあしらいが上手いような地域だし、それこそ戦闘になってもいいというのならば容赦ないと思うぞ」

人霊と聞きましたが、これはこれはなかなかに面白い。
ここは湯が出る中の島、確かに歴史は浅いですが、人の汚れを流してた地であります。

「なんで浄化、清霊が町おこしになるんじゃねえから、頑張るかみたいになってるんだろ」
需要があると見たので、主人もお客もいない人を守るための善意を持つ種族が、彼女の業の相手をし始めた。
「これは…奉らないと、まずは義実家に報告かな」
彼女の想像もしない方向へ事は進んでいるようです。

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