時 自若 2022/12/12 15:09

今生のローダンセ第33話健康の秘訣は彼女に優しく苛めてもらうことです。

それが観測されたのは、233年前とされる。

今を生きている人で、始まりを知るものはいないが…
都市の上空、空との間に蓋のようなものができた。
理由は不明。
このせいで、大気は淀みがちで、呼吸器疾患が増えたとされる。

数年前、こちらからは異世界である都市において、魔女っ娘くノ一ミチルちゃんが現れ、都市の犯罪抑制の立役者となったが、一年もせずにその活躍は聞こえなくなった。

「その都市と空の真ん中にあるレンズみたいなの、今日割る手伝いをして来ますから、夕方には帰ってきます」
「終わったら連絡してくれ、迎えに行く」
こちらはいつもの二人。

今日ほとんどの人が何も知らず、レンズが割れて、青空を見ることになる。
「殿、大変です」
自分はもう殿じゃないと心の中で突っ込みながら。
「なんだ?」
「外をご覧ください、私も何が起きたのか聞いて参ります」
そういって家主はどたばたと居候を残して出掛けてしまった。
(なんで割れた?いや、割ったのは誰だ?)
このレンズのせいで、跡継ぎに生まれはしたが呼吸器に難がある男は、数年前に健康な甥に家督を譲り渡した。
(あのレンズがある限り、この都市に生まれる子供の一割は、呼吸器の病気となる、その話をまともに聞いたやつでなければ、もう当たり前すぎて何とかしようともしない…割ったのは誰だ?…)
しかしもうその話をまともに受け答えする者は彼の周囲にはいないのだ。
どうでもいいこと、そういって窓を閉めようとしたとき。
「殿、殿、お体の方はいかがでしょうか?」
「…俺の元から黙っていなくなった不忠義ものの声がするな」
「その節は申し訳ありません」
ミチルは姿を現した。
「それにもう俺は殿じゃない」
「いえ、私にはずっと殿であります」
「殿ではないから、お前を口説いて嫁にすることもできるのだぞ」
「しますか?」
「…あの空はお前の仕業か?」
「ああ、やはりバレましたか」
「どうやってやった、まっ、上手くやったのだから、それは追求しないで置こうか」
「他の世界のものと出奔前に知り合うことが出来ました、そこで色々と話をしたさいに、殿のレンズに関する推測をしましまところ」
うちの殿は頭脳明晰なんだぞ自慢も兼ねてました。
「それなら早いうちに割った方がいいと教えてもらいました、あれは竜の鱗だそうで、割っても別にどうってことはないと、ただ割るのならば、あそこまででかいと人手がいるからなだそうで、そうなると金がかかりますゆえに、どうすればいいか相談したところ」
割るために必要な人たちというのは学者肌の人間が多いから、護衛とかそういうのを引き受けてくれれば力を貸してくれるだろう。
「とのことで、こうしてはいられないと」
「それでいなくなったのか、俺の元から」
「先方の話にすぐに返事をするようでなければこちらの本気も伝わらぬもの、本懐はあのように遂げさせてもらいましたので、どうか殿、私に処分を」
「もう殿じゃない、お前に下すも何もないさ」
「どうして家督をお譲りに」
「あの後すぐに道島が亡くなった」
「道島殿が」
殿の教育係である。
「続けて起きれば心も荒れるし、折れるものだ」
少しばかり酒に溺れた。
「これで死んだら道島にも怒られるだろうしな」
「…」
「お前はもう自由だ、どこへなりとも、その学者とやらの元で仕事をするがよい」
「せっかく帰ってきたのに」
「せっかくだ?なら、さっきも言った通り、俺の妻となり、子を生んでくれるか?」
「悪くない話でござるな」
「お前な…」


帰る支度が出来たので帰りますと伝えに来たら、部屋の中で盛り上がっている場合、何をすればいいのか答えよ。
異世界の言葉でもミチルが見ればわかるので書き置きしてから帰ってきた。


「そういうときは、声をかけてやると男の方は盛り上がって、もっと触るのに」
「それ確実に向こうのやってるところ見ちゃうからイヤ!」
「?女性の方は温泉とか入ってなかったっけ」
「なんで知らない男の裸まで見なきゃダメなのさ」
「ええ、それは俺のはいいってこと?それとも俺のだけはいいってこと?ああ、俺の亀さんがむずむずと」
「躾のなってない亀ですね」
ああ、その目ゾクゾクする。
男の健康の秘訣はなんですか?彼女に優しく苛めてもらうことです。

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