有坂総一郎 2022/01/01 09:30

新年のご挨拶

明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。

というわけで、初夢も見ず元旦を迎えたのだけれども・・・・・・。読者諸兄は如何であっただろうか。

さて、いよいよ「このはと」も1936年を迎えるわけだけれども、この年はどういった年だったかを考えるとなかなかに判断に悩む部分がある年であると思う。

史実では2・26事件が起き、世間で言うところの軍閥政治に拍車が掛かるそれではあるのだが、では、彼ら“軍閥”が悪であったのかを考えるとそれも甚だ疑問である。

皇道派に特別同情する気もなければ正当化するつもりもないけれど、彼らの主張は確かに頷ける部分もある。

地方の困窮を打開したいというのは地方出身者が多く存在し、その中でも優秀な人材は軍のエリートに進んでいたわけで、その実情をよく分かっている立場にあったと言わざるを得ない。

中央政界は足の引っ張り合いを行う政局の連続であり、それに元老・重臣と言った存在や中央官界までがグルになったそれもいくつも起きている。

まして政界の一部には自分で政治と軍部の関係を悪化させることを行った連中もいて軍部が政治に責任を負う事態にまで発展する素地をせっせと作っている。

では、財界が悪なのかと言えばそうでもない。時代は世界恐慌の余波の残る時期、いくら満州事変で円ブロック経済圏が多少増えたところで、加工貿易が活路であった日本にとってブロック経済なんてものは必然的に経済の頭打ちを意味しているわけで、財界がいくら頑張ったところで生産能力云々よりも需要が伸び悩むことで経済を満たせないから仕方がないのである。

実際問題としてアメリカも輸出能力が余っているのにブロック経済のせいで輸出が落ち込んで経済復興出来なかったわけであるのだから列強は揃って自分の首を絞めて自滅しているわけだ。

そういう情勢で軍部への期待や軍部の自分たちが背負うという空気が醸成されたのは必然であったことだろう。

古来、日本は民衆のそれが政治を担ったことなど一度もないわけで、政治を担うのは常に御上の委託を受けた貴族、武家、官僚、名士(豪族)といった層である。この時代においてはそれが軍部という存在だったに過ぎないのだ。

実際問題、軍部には政治を担う能力自体は備わっている。何しろ、数十万の兵を養うというそれは文字通り政治であり、統治能力を有すると言うことに他ならないからだ。

場合によっては、占領地で行政権を握るのも軍部の常であり、それは満州や支那、南方で発揮されている。具体例で言えば、蘭印の今村軍政などが有名な部類だろう。

そして、それを知っているのは皇軍兵士を担った臣民自身である。

故に、軍閥が云々などというのは誰かを悪役に仕立ててそれに全責任を負い被せて自分は被害者であると言わんばかりのロクデナシの論理でしかない。

まぁ、そうやって悪役に仕立てることは100%悪いことではない。戦後占領時代を生き抜く策の一つである。そして、それを全うしたのが処刑されたA級戦犯と言われる英霊たちである。尤も、割を食った人間や何もしなかったことで結果として破滅に導いた人間もいるからそこはなんとも言えないが。

とまぁ、こういった時代をこれからどう描いていくか、史実とは異なった歩みを進める「このはと」世界でも一歩間違えれば、再びそういった未来へ向かうことがあり得て、登場人物たちやそうではないNPCたちの動きでも変わってくると改めて作話する立場である私自身への戒めにしていきたいと思う。

なにせ、主人公格は存在しても、彼らは万能でもなければチートでもない。あくまでも、彼らは出来ることしか出来ないし、彼らの意志が世界を決するわけでもない。彼らの意図と反することをNPCがやれば容易に世界は変転するのである。

史実もそうだったように。

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