赤羽決亭@木東有稀 2019/09/15 20:52

【死神+天使 望】1話 「かつての日常」 【宣伝用小説】

目次:
プロローグ[ci-en]
1話-1 (イマココ)
1話-2 [ci-en]
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時は1年前に遡る。


「望!いつまで寝てるの!?」
僕、日野望小学6年生は
母さんの怒鳴り声で目を覚ます、というどの家庭にもあるような朝を迎えるくらいには平凡だった



「まだいいじゃん、何もいつもより早く起こさなくても。」


僕は目をこすり文句を言いうと
母さんは腕をあからさまにイラついた様子を見せた

「お母さんが困るの、
朝食の片付けすまないと仕事行くの遅くなるし、望だっていつもギリギリでしょ?
くせ毛で身支度時間かかるし、6年なんだしちゃんとして。」

「だって眠いし。」


「望!!」

口答えをする僕に母は怒鳴る。

その様子をテームるで朝食を取りながら見ていた父さんが助け舟を出してくれた

「母さん、とにかく先に食べさせたら?
説教してると余計に遅くなるぞ。」

母さんはまだ言い足りないようだったが、時間がないのは事実なので朝食を食べるように促された。

それと同時に

「いってきまーす。」

一つ上の兄の声が聞こえた。
もう家を出るのか、玄関の方に向かう足音が聞こえる。
返事をしようとした母さんだったけど、兄に弁当を渡していないことに気がつき急いでそれを渡すために玄関へ向かった。

僕はその様子を見ながら目の前に座る父さんに話しかける


「兄さん最近朝早くない?」

「中学遠いからな、慣れるまでは早く行くんだと。」

「ふーん。」

中学ってそんなに遠いんだ。
大変そうだな…来年は僕も中学生…
もっと早く起きなきゃいけないのか…面倒だな…

そう思って死んだ目をして食パンにかじりつく。
その様子を見て何か不安を感じたらしい

「望も少しは兄さんのこと見習ったらどうだ。」

なんて注意された
母さんから助けてくれたけど、味方というわけでもないらしい。

「兄さんは兄さんなんだから押し付けないでよ。」

「いつまでもいうこと聞かないからだろ、嫌だったら実行しろ。」

「はいはい。」

そう適当に返事すると、僕は残りの食パンをほうばった。

これが僕のいつもの朝。

母さんはガミガミうるさいし、父さんはいつも兄さんと比べるし。
兄さんとは仲はいいけど、何でもできる人間が近くにいるとこっちは窮屈だ。

だけど…そんな家族が好きだったし、
こんなどうでもいい平凡な日々が幸せだったんだと思う。

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それは学校での生活も同様だった。


自分のクラスは比較的明るくて、みんな仲良く関係は良好で、
朝学校に来れば声をかけてくれるにとは多かった
例えばこの日の朝なんかは…

「おっす日野」

「おはよー赤坂。ご機嫌だね、なんかいいことでもあった?」

満面の笑みで僕に声をかけてくるので、思わずそう聞くと
赤坂は「ふっふっふ」と笑いながらあるものを僕に手渡した。

「これ、前から貸して欲しいって言ってたゲーム」

「貸す?…もしかして「フロンティア・ゴールド」!?」

「そ、俺昨日クリアしたから日野に貸そうと思って」

「え!?いいの!?」

「おう、終わったら対戦しようぜ」

ゲームクリアして達成感に慕っている様子のクラスメイトとゲームや漫画の貸し借りをしたり
クラスの女子とも分け隔てなく話もする

「日野くん、ちょっと手伝ってくれない?」

「どうしたの?」

「先生にこの前の習字の時間に書いたやつ貼ってくれって頼まれたんだけど、
数多くて…一人じゃちょっと」

「そういうことなら手伝うよ、半分貸して」

「ありがとう、すごい助かる」

まぁ…その女子との会話がどんな内容かなんて些細な問題だ。
普通に頼まれごとをするくらいに話せればまぁまぁいいだろう。

そのほかにもクラスで穏便に過ごすための行動といえば…
やっぱりクラスのリーダー的な存在との付き合い方だろうか。
もちろんここもクリア済み

「おい日野、今日の掃除当番代わってくれよ」

僕のクラスのリーダー的男子の大地は僕の方に手を回してそう頼む様は、ほぼ脅迫である

「昨日も代わったじゃん」

「いいだろ、俺たち友達じゃん」

頼りにされるのは悪い気はしないけど、これが嬉しさよりも恐怖が勝つ。
こういう時の対処法は

「わかったよ」

「お、サンキュー」

よほどの用事がない限りは、抵抗せずに受け入れる。
それが平和に過ごすコツだ。

「日野くんもさいなんだね」
「嫌なら嫌って言えばいいのに」

近くにいた女子から憐れみと情けないという視線をもらったけど
そんなことできるわけがないあとが怖いよ。

僕の我慢で平和が保たれるのであれば、これほど安い犠牲はない。
それに、


「おい日野、今日空いてるか?」


「え?」

「このあと野球すんだけど、人数あつまんねーからさ
日野もどう?」

「そういうことなら行くよ。」

こんな感じで遊びの誘いを受けることもある。
数合わせだったとしても、こういう誘いはやっぱり嬉しいし
このやり方で仲良くしてくれる人がいるならそれでいい。


こんな感じで和気藹々としたクラスで、充実した生活を送っていた


ただ、問題が0だったわけではない。


「いってーな、そんなところでぼーっと突っ立ってんなよ!あぶねーだろ!」

突然教室に怒鳴り声が響き渡る
どうやら大地が教室を出ようとした時に、扉の前にいた女子にぶつかったようだ。

普通そんな風に怒鳴られれば女子も普通は怯むのだけど…
その女子は少し様子が違う。


「何よ、突然飛び出してぶつかったのはそっちでしょ?
あんたが謝んなさいよ。」

大地とぶつかった女子、四木数美は、静かに…でも凄みを利かせたトーンの低い声でそう言った。
それは少し遠くから聞いていても背筋が凍りそうになるほどのもので、大地も少し物怖じした。

しかし、それも一瞬の話。
すぐに我に返った大地は、生意気なその口ぶりに舌打ちをした。

「なんだ?てめ、調子乗ってんじゃねーぞ。
お前ごときが生意気なこと言ってんじゃねーぞ」

そう言ってガタイのいい大地が四木さんに蹴りを入れると、あまり筋力のない四木さんは転んで尻餅をついた。
大地はその様子を横目で見ると、すっとその横を通り過ぎたけど
僕は流石にそれを放って置けなかった。

「大丈夫?」

僕は声をかけて手を伸ばそうとしたけど

「バカにしないで。」


そういうと自力で立ち上がって自分の席へ向かった。

彼女は、あまり他人と関わろうとしなかった。
いや…周りが彼女に関わろうとしなかった。

なんでかはわかんないけど…近寄りにくい雰囲気があるからかな…。
ちょっと怖いし。

そういうことを考えると、この時のクラスが本当に平和だったかと言われると微妙だった。
でも、この後の出来事を考えれば…ましだったのかもしれない。

少なくとも、僕にとっては。

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