赤羽決亭@木東有稀 2019/09/17 18:05

【死神+天使 望】1話-2 「かつての日常」 【宣伝用小説】

目次:
プロローグ[ci-en]
1話-1 [ci-en]
1話-2(イマココ)
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「ちょっと望!遅いと思ったら…その服の汚れは何!?」

「ご…ごめんなさい…」

掃除の後、野球に誘われていた僕は、家にも帰らずそのまま公園へ行った。
人数合わせで呼ばれていった僕だったけど…。

まぁもちろん戦力と呼べるような実力はないわけで、足を引っ張りまくった。
期待されていなかったとはいえ、あまりにもひどかったのか、途中から試合じゃなくて僕の特訓になった。

気がつけば門限はとっくに過ぎていたけど、僕の特訓のための千本ノックに付き合ってくれてる彼らに門限のことを言い出すことなんかできるわけもなく。

結果がこの惨状だった。
チャイムを押して出てきた母さんの鬼の形相は…直視できなかったな…。

「もう…お父さんもう帰ってきてるのよ!小学生がこんな時間まで外うろついてたら危ないでしょ!」

「でも…特訓だって…」

「言い訳なんか聞きたくありません!」
「門限破った子は家に入れません」

「え!?」

「門限破った時はいつもそうしてきたでしょ。」

「けど…」

「母さん…それは本末転倒だろ。」

夕飯を食べ終えた父さんが玄関までやってくる。
多分あまりにもうるさかったから様子を見にきたって感じだったのかな。
今のやり取りを聞いて仲裁に入ってくれた。

「夜は危ないから怒ってるなら、家に入れないのは望を危険に晒すことになるだろう。家に入れてやるべきだ。」

「父さん」
「説教はそのあとでいいだろう。」

助けてくれたのか…と思ったら…そういうことじゃないんだ。
少し落胆する。
その僕の表情を読み取ったのだろう

「理由はどうあれ門限破るのはどうかと思うぞ。罰は受けるのは当然だ」
と言われてしまった。

「…お父さんのいうとおりね、先にご飯にしましょう。
手を洗って来なさい」

「はーい。」

はは…お腹は空いてるはずなのに、リビングまでの足取りが重いな…。
説教を聞きながらのご飯ほど美味しくないものはない。

とはいえ、家に入れてもらえないよりはましか。
僕は家の中に入って手を洗ってからリビングへ向かった。

すると、テレビの音が聞こえて来た。
父さんがニュースを見ているらしい。
僕はそのテレビの音に耳を傾けた。

「しかし、恐ろしい事故ですね。」
「無免許でバイクを運転していた高校生が事故を起こすなんて…。」
「被害者は重症のようで現在病院に搬送され、治療を受けているそうです。」
「事故を起こしたのは、暴走族の…」



そのニュースの画面を見ると、写っていた住宅街は学区の端にある廃ビルが並んでいるところだった。
まさか今日、こんな身近なところで事故が起きてたなんて、ニュース見るまで知らなかった。

「まだ被害者の情報は流れてないけど…小学生の男の子が被害にあったらしいぞ。」

父さんはただ黙って後ろに突っ立っていた僕に、静かにそう話した

「そう…なんだ。」

「母さんな、これがお前なんじゃないかって心配して、それであんなに怒ったんだよ」

「まさか、考えすぎだよ。」

「けどな…考えてみろ、こんなニュースになるような事件が起きていて、
連絡もよこさずにまだ帰ってこない息子。
何かあったんじゃないかって、不安にもなるだろ。」

「…」

「まぁ、いろいろあると思うし仕方ないけど…心配したことだけはちゃんと謝っておけよ。」

「はーい。」

父さんが言うことはわかる。
母さんが心配してくれてることも、わからないわけじゃない。
だけど、こんな事件に巻き込まれるなんて、そう滅多にあることじゃない。
確かにこの事故が起きたのは学区内のことだけど、この辺りはやばいからってあまり近づかないし。
…関係ないことだと思うんだけどな。

「望、手洗ったなら自分のご飯よそってちょうだい。」

「えー」

「えーじゃないの。夕飯の時間に遅れた子の食事を準備はしませんからね。」

「…」

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