サーチライト 2022/07/25 23:00

活動報告187回目

こんばんは。坂下です。


無事に日程が通常ルーチンに近づいてきました! 仕事の方は相変わらずなのでしばらくは忍の一字で粛々と創作優先で行きたいと思います。


突然ですが、坂下は道路交通法を順守しています


……一体なんのこっちゃいと思うのですが、道路交通法って奴は順守がマスト、というかすべからく法律は(よっぽど悪法でない限り)順守がマストなので、例えば


「僕は道路交通法を尊重しています!!!」


とか言い出すヤツが居るとしたら「尊重ってあれか? どうしてもという時はプリウスミサイルで救急車走法でもするんか?」みたいなヤバキャラ扱いになること間違いなし、自分の事をナチュラルボーンモンスターとして扱ってほしい時にしか使えない論法になります。


ところがこれ、労働基準法の話になると順守どころか尊重する人ですらレアキャラなんですよね。これ一体なんででしょうね、HPとLPをゴリゴリ削るという点では同じはずなのですが……



という、今からする話と全然関係のない入りをしたのですが(なんでした?)、坂下の住む街にはとある押しボタン式信号機がございます。渡る時だけポチってやるアレです。


設置基準はわからないのですが、大抵は彼我の交通量に差があり常時車を流していた方が効率的、って所に着けられているアレ。


押したからってすぐに信号は変わらず、「なんだよ押したのにさー」って気持ちになったり、「あれ? 押してないのに(お待ちください)になってる?」という意外な一面を見せてくれたり、はたまた
「あれ……あのビジネスマン自信満々で待ってるけど、押してなくね? 押していいのかな……いや、プライドを尊重した方が……」
みたいな謎の駆け引きを一人でやってしまうアレです。


押すと青信号が長くなるボタンもあったり、バリエーションに富んでいる押しボタン式信号機くんですが、この前、新たに押しボタン式信号機を発見したのです。


~~


坂下くんが見つけた押しボタン式信号機くんは、すぐ近くに幹線道路が控える住宅街で、頼りないあみだくじのように家々を繋ぐ横断歩道に据え付けられた押しボタン式信号機くんでした。


別に横断歩道を無視して横切ってしまっても良かったのですが(尊重しろ)、「まあ一応横断歩道渡ろかな、渡る以上は押したろかな、ほなポチー」くらいのノリで横断歩道と押しボタン式信号機君を利用することにした坂下くん、上記の脳内処理をゼロ秒で済ませて「ほなポチー」を実行しました。


「まあ一応横断歩道渡ろかな、渡る以上は押したろかな、ほなポチー 
はー、そういえばスマホスマホ、僕をFIREに連れて行ってくれるオルカ」



「……ふぁっ?!」


二度見しましたが、見間違いではありませんでした。坂下くんの目の前にあった横断歩道は、青になっていました。


「……ああ! そうかそうか! 今まさに信号が変わる所だったんだな! 押す必要なかったパティーンね。はいはい理解した」


坂下くんはそういうとスマホをしまい、横断歩道を渡って無事に用事を済ませました。


もう坂下くんは三十代の老化スタート年代の独身男性ですから、帰り道では爆速青信号事件の事はすっかり忘れていて、またその横断歩道に戻ってきました。


スマホで楽天ポイントクラブを開き一日1ポイントだけ貰えるログボに微笑む坂下くんは、横目で赤信号であることを確認しました。


「あー押しボタンか。じゃまあ押しとくか。ほなポチー。あ、そういえば今日は楽天おかいも」


横断歩道に差し掛かる車、停止


「……ぴょっ?!」


坂下くんは驚きました。視界の隅で車が止まったのです。
坂下くんの住む町は「道路交通法尊重系アルファード」が跳梁跋扈するベッドタウンで、横断歩道は信号機がない限りコンクリのシミ扱いになる特殊な街に住んでいます。

つい先ほどの出来事を思い出した坂下くんは、恐る恐る顔を上げました。


―ー信号は、青になっていました。


坂下くんはスマホを開いたまま横断歩道を渡り切り、恐る恐る自分の手のひらを眺めます。


「もしかして……"目覚め"ちまったのか、"力"に……」


押しボタン式信号機を即座に青にする権能。そんなものがあるなら出してみろと言いたくなる権能ですが、マジでそれを疑いたくなる速さでした。


翌日。坂下くんは再び同じ道を通り横断歩道に差し掛かりました。悲しい事に昨日の能力チート設定は忘れていました。
横には自転車にまたがるスマホをいじるJKが居ましたが、スマホをいじるJKはスマホをいじる事に夢中なので、押しボタンにも坂下くんにも気づいていません。


坂下くんは、試しに上を見上げたままボタンを押すことにしました。


それはある意味奇怪な光景でしたが、スマホをいじるJKも気づいていないことだし、別にいいやと思いました。


「ほな……ポチ。まあ? まさ」



「……ふぁあっ?!」


「はっ、何!?」


思わず坂下くんは叫んでしまい、スマホをいじるJKもまた叫びました。


スマホをいじるJKは身体をビクつかせて坂下くんをにらみました。まあ当然の反応です。


「アッ…サセンッ…」


坂下の消え入るような声をどう受け止めたのかは知る由もありませんが、スマホをいじるJKはスマホを持ったまま自転車を漕いでいきました。


早いなんてもんじゃあ、ありません。何かの回路接続を間違えたんじゃないかというスピードで信号が変わるのです。軽く罪悪感すら覚えるレベルでした。


坂下くんはその後も通りかかるたびに試したのですが、何度やっても押してからコンマ単位で車側の信号が黄色に変わり、赤になります。
車側の事故誘発レベルのスピードで信号が変わるので正直道路交通法違反なのではないかとも思うのですが、そこまでは調べ切れていません。


ただ一つわかるのは、この押しボタン式信号機は鬼神がごとき速さで信号を青に変えてくれるという事。歩行者としては素晴らしい信号機ですが、一歩使い方を誤れば人類にあだなす恐るべき信号機くんだという事です。


「こんなものが世間に知られてはまずい……きっと世界が変わってしまうレベルの能力だ。これは坂下の心の中にだけ秘しておこう。きっと来る約束の日が来れば、こいつは正しい主を見つけ、能力をきちんと使える時が来るはずだ……頑張れよ、押しボタン式信号機……ほな、ポチ……」




励ますように坂下くんが押すと、感慨を抱く暇すらなく信号は青になりました。
坂下くんは白い線を踏みしめるように歩き、家へと帰っていきました。



坂下くんは、まだ誰にもこの押しボタン式信号機くんがある場所をしゃべってはいません。
なぜなら、まだ人類が知るべき"時"ではないからです……


~~Fin~~


今日のブログで書きたかった事

押しボタン式信号機ってどういう基準で信号を変えるんですかね?

フォロワー以上限定無料

無償で活動報告を読めます。

無料

この記事が良かったらチップを贈って支援しましょう!

チップを贈るにはユーザー登録が必要です。チップについてはこちら

月別アーカイブ

記事を検索