2021/04/20 「ものべの」沢井すみお誕生日SS『誰もおらぬお誕生日』(進行豹
こんばんわです! 進行豹でございます!!
今日は「ものべの」ヒロイン! すみちゃんのお誕生日でございますね!
めでたい!!!
で、せっかくの機会なので、わたくし、
『1000文字ショートストーリー』にチャレンジしてみようと思いました!
いままでも誕生日お祝いショートストーリーはちょこちょこ書いていたのですが。
諸般の事情で
「1000文字分量くらいのショートストーリーで、ちゃんと面白いもの」
を書けるようになる必要があるため。
今まで:書きたいものを分量気にせずすきにかいてた
これから:1000文字以内という枠を定め、その中できっちり構成
ということに、今日から改めていこうかと!!!!
というわけで、当初1500文字程度あったのを998文字までブラッシュアップしたすみ誕SS!
このままさくっと貼り付けますので、もしよろしければどうぞお楽しみいただけますと嬉しいです!!!
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2021/04/20 沢井すみお誕生日SS『誰もおらぬお誕生日』 進行豹
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「なんじゃなんじゃ! 今日はわらわのお誕生日じゃと申すに」
残念ながら、自称、お誕生日じゃが。
わらわは間に合わなかった家守──
本来守るべきであった家は、わらわが生を得た瞬間にはもう滅びており──
人の暦を知ったのは、沢井の家の呼ばわれた後であったのじゃから。
「が、透より一週間だけおねえさん。ゆえに今日。
それですっかり定着しておったではないか!」
なのに。おらぬ。
透はおろか、夏葉も、のみならず飛車角までもが。
「……自業自得、かの」
毎年毎年、透がくれる贈り物。
帆布の前掛け。刺し子の鍋つかみ。毛糸の肩掛け。
わらわの好みをようわかっており──で、あるからこそ使えぬもの。
「……透は学んで、お医者にならねばならぬ身じゃ。学ぶべき貴重な時間を臨時雇の仕事に費やし、
そうまでして稼いだお金をわらわへの贈り物に使うなど……決してあってはならぬゆえ……」
ゆえに、素直に喜べぬ。
透の気持ちがどれほどに嬉しかろうと──喜んだなら、透はきっと、更にがんばってしまうがために。
「……贈り物を使わず、喜びもせず。
それを幾年も繰り返したなら、祝われぬ様になるもの当然であるか。
とは申せ──」
しかし、やはり……
せっかくのお誕生日を、たった一人で過ごすというのは……
「さみしい、の」
「たっだいまー! ね!? すみちゃんすみちゃん! 間に合ってるよね!? まだ今日のお夕飯、すみちゃん準備してないよね!?」
「!!?」
「大丈夫じゃろ。食い物の匂いはまるきりしとらんでのう」
「すみ? あれ? すみ? どこ??」
「ま、まったく! なんじゃ騒がしい──っ!?」
「えっへへー! すごいでしょ! 菜穂子おばちゃんにおそわって、夏葉たちで作ったんだよ!!」
柚子胡椒を揉み込んだ蒸し鶏。
サワラの柚子焼き。
ゆず味噌田楽。
さといものゆずあんかけ。
──どれも見事に、わらわの好物ばかり……っ!
「これは──その、もしかして、じゃが」
「もしかしなくてもご想像どおりだよ。バイトしてプレゼント買うの、すみ気にしちゃうみたいだからさ。
無理をしないで、すみにも気兼ねなく楽しんでもらいたくって、考えたんだ」
「あぁ──」
「やったぁ! すみちゃん、喜んでくれてるー!」
「飯ぃつくると腹が減るのぉ。ちくと早いが、もう夕餉にしてもええんじゃないかの」
「そこはほら、今日のヒロインのご意向次第で」
透が笑う。
わらわのことを、まっすぐ見つめる。
「すみ、お誕生日おめでとう!!!」