あおくん 2024/04/02 22:17

2.初めての陣痛にパニックを起こす産婦の出産過程【セックス依存夫婦の初めての出産】

「出血したってことは、陣痛もそろそろ来るのかしら…」
「亜衣も無理はするなよ?俺は早めに帰るから」

俺は朝食の準備のためキッチンへ向かうと、亜衣は洗濯物を回し始めた。
こういう時でも女性は真面目だ。
普段通りのやるべき事をやり、万が一この後陣痛が始まった時のことを考えているのだろうか。
二人で朝食のトーストを食べ、体調を気にかけながらも、まだ陣痛らしきものはないため出勤して欲しいとのことだった。
そして亜衣がパタパタとスリッパの音を立てながら、玄関まで見送りに来た。

「もし陣痛が始まったらすぐに連絡するんだよ。家のことも無理する必要はないし」
「わかってるって。とりあえずゆっくりしてるよ」

亜衣は心配そうな表情で、俺の鞄を持つ。
そして俺の頬に軽いキスをして、胸を押し付けるように抱き着いてきた。

「いってらっしゃい……」
「……ん?」

何か違和感を感じた俺は亜衣のお腹に触れる。
すると、微かにポコっと何かが動く感触がした。

「今……」
「うん、赤ちゃん動いたね。一緒にパパにいってらっしゃいって言ってるのよ」

亜衣は嬉しそうに微笑み、俺の腕を引っ張った。

「ほら、早く行かないと遅刻するわよ!」

俺は慌てて靴を履き、亜衣に追い出されるように家を後にした。
あの時、亜衣が妊娠したという事実は俺の中では衝撃で、正直すぐには実感がわかなかった。
しかし、俺との子供が体内で生きているということを思うと、素直に嬉しさという感情が込み上げてきた。
色々な感情を抱えたまま出勤した俺は、そわそわしながら仕事をしていた。
亜衣は陣痛が来ていないと言っていたが、本当にそうなのだろうか。
ただの勘違いで既に陣痛が来ている可能性もあるし、鈍感だけなのかもしれない。
亜衣のことが心配でならず、俺は時計とスマホばかり見ていた。
そんな俺の様子を不審に思ったのか、上司が俺の席まで来た。

「なんだ、彼女からの連絡でも待ってんのか?」
「いえ、そういうわけでは……」

上司に亜衣のことを話すのは何故か気が引けて、俺は言葉を濁した。
今朝の出血の後、何も状況の変化がないのか、亜衣からの連絡はなく、俺も仕事中で電話もできず気が気でなかった。

「早く帰ってやれよ。今日は少しなら定時前で帰っていいしさ」
「え、いや…そのうちお話しするつもりだったんですが、彼女がもうすぐ出産するんです。それで、産後落ち着いた頃に入籍する予定です。」

まさかいきなりそんな提案をされるとは思わなかったのか、上司はたじろいでいたが、俺のその報告に対しすぐ真剣な表情になった。

「そうか、おめでとう。今頑張ってるのはお前だけじゃない。奥さんを支えられるのは旦那だけなんだから、支えてやれ」
「はい!」

奥さんではないのだが、いつかそうなる呼び方に少しだけ喜びを感じる。
俺は亜衣のため、そしてこれから産まれてくる子のためにも早く家に帰ろうと決めた。
上司が気遣ってくれたおかげで夕方前には会社を出ることができ、俺はすぐに電車に乗り込む。
大急ぎで家に帰ると、亜衣はお腹に手を当てたままソファに座ってテレビを見ていた。

「おかえり、早かったね」
「大丈夫なのか!?出血は?あぁ、定時で帰らしてもらったんだ」
「とりあえずはまだ様子見かな。出血は増えてないしナプキン当ててるよ」

俺がスーツから部屋着に着替えている間も、亜衣はソファに座ったままだった。
そんな中、亜衣の表情の変化に、俺は声をかける。

「亜衣?どうしたんだ?」
「なんかね、痛かったり大丈夫だったり…痛たたた」
「陣痛か!?」
「いや、なんかね、お腹っていうより腰なのよ…」
「腰?」

俺は心配で亜衣のすぐ後ろに座ると、お腹に手を当ててみる。

「この辺か?」
「もっと下…その辺り…」
「これ、陣痛なんじゃないか?」

俺は亜衣の腰をさすり始めるが、本当にこれは陣痛なのだろうか。
俺の心配をよそに、亜衣は何故か少し笑った。

「ははっ……なんかその摩り方くすぐったいよ。もっと強くていいよ」
「なんで笑うんだよ。心配してんのに」
「ごめんごめん。でも大丈夫だよ、私こう見えても意外と痛みに強いし、頑張るから。それに我慢できる痛みだから、まだ病院に電話するのは早いと思うよ」

だが俺にはその笑顔がどこか無理をしているようにも見えて、思わず抱きしめた。

「ありがとう……抱かれると安心するね。なんか陣痛ってどんなのなのか本当にわからないよ。あとは腰から足の付け根が痛い感じかな」

亜衣の顔を見ると、その表情は先程より険しくなっていた。
もうこれは陣痛が来ているのだと判断し、俺は慌てて立ち上がりスマホを手に取る。

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