3.出産予定の産婦人科での見学ツアー、そして気づく性癖
今回俺たち夫婦が選んだ産院は、少し特殊な病院だった。
大規模な病院でとても人気があり、その理由も自分達にとても合っていたのだ。
そして今日は、産院ツアーという院内を見学できる一日であり、二人で参加することになっていた。
通常、出産はプライベートなものだと言われているが、この病院では広い陣痛室で複数の産婦が痛みに耐え、その隔たりにカーテンや壁などは存在しない。
それは同じ様な状況である女性どうし、一緒に励み合いながら新たな命を産み出そうという方針なのだという。
分娩室も同様で、複数の分娩台が一部屋に設置され、最大八人が同時に出産の時を迎えることができると説明を受けた。
また出産後は、産婦と一緒にその部屋を使い、立会い出産をするというサービスがあるという。
陣痛室は分娩室と比べ簡素な作りだが、その分個室でありゆったりとした空間で気を遣わずに痛みと向き合えると説明を受けた。
「ふうううっんっ……ふううっ……んああっ……」
「あの…ここの皆さん、今陣痛中なんですよね?見学して大丈夫なんでしょうか…」
「大丈夫よ。ここの病院で出産申し込みをする時には、こういったことにも了承してもらうサインを貰ってるの。由紀さんもうちの病院で出産する場合、こういう場面に出くわすかもしれないわね。」
「はぁっ、っつ……ふぅう……んっ!」
目の前にいる二人の妊婦は、まさに今俺たちの目の前で陣痛に耐えている。
額に汗を浮かべて身悶えしている姿に思わず鼓動が早くなるが、今は視線を逸らしつつ、続けて俺たちは分娩室の中を見学させてもらうことにした。
「破水してから約18時間くらいかかることがありますので、お産の進行具合によっては明日の出産になるかもしれませんね」
「あぁああっ……ふううっん!ふぅうーっ…ふぅぅぅぅっン!!」
「ダメよーまだいきむのは。さっきまだ子宮口、五センチだったでしょ?ちょっと別の助産師呼ぶから、もう一回内診してもらいましょうね」
担当の助産師はそう告げながら、分娩台に横たわる妊婦と会話を進める。
その女性は、助産師の声に答えようと試みるが、陣痛の痛みが邪魔をするのだろう、身体を捩りながらも必死に痛みに耐えているのが伝わってきた。
その後すぐに別の助産師がやってくると、俺たちは内診の様子まで見学して良いと許可を得た。
「ちょっと、産道が狭いのよ。痛みが来ると勝手にいきんでしまうのよね。さっきも一緒に呼吸の練習したんだけどな。はい吸ってー吐いてー」
助産師が息を吸った後で背中を擦って声を掛けると、彼女は弾かれた様に息み始め、呼吸を荒げる。
「ああっ!はぁっ、ううっふぅううンっ!」
「ほらまだいきんじゃだめよ!赤ちゃんが苦しくなっちゃうからね、もう少し呼吸で逃して頑張りましょうね。もう少しよ!!」
「はぁあはぁつ、ううっ!」
しばらく身体を休ませていると陣痛が再開したのだろう、先程の様にいきみ始めると、助産師の付き添いにより呼吸の誘導を受けている。
陣痛の痛みがどういったものなのか、自分には想像することしかできないが、数ヶ月後には妻も同じ様に苦しむ姿を見るのだと思うと、俺もできるだけその苦しみを知っておきたいと思った。
「はい、吸ってー吐いてー!吸ってー!」
「はぁああっああぁああっはぁあ!」
「そうそう上手!さあもう一回頑張ってね。吸ってー」
「はぁああっ!はぁあすぅううふあはっはぁあっんンン!!」
「……ううっ、ふうぅーっ……んっ……!」
陣痛の時の呼吸法は、妻の出産時も同じ様に行うのだという。
とはいえ俺と妻ではこんなに苦しまないのだろうなと想像していたが、その時が来たら妻も目の前の女性と同様に足を広げ、恥ずかしげも無く大声で喘ぐのだろうか。
その後も俺たちは院内ツアーを続けながら出産室を見学していたが、助産師たちの緊張感が増しているように感じた。
いつの間にか助産師の表情はどこか真剣で、本当に出産が始まるのかもしれないと予感した。
すると急に仲間を呼び叫ぶ助産師の声が聞こえ、俺たちは慌ててそちらへと向かう。
その視線の先には分娩台で苦痛に耐える女性がおり、下半身を曝け出しながら必死に痛みを逃していた。
「はあつっ!あっああっううぅン!」
「ごめんなさいね、少し手助けさせてもらうわね」
助産師は女性の股に拳を突っ込むと、手首まで押し込み、その腕を捻り出した。
一瞬それが何なのか俺にはわからなかったが、隣で見守っている妻の驚いた表情からその行為の正体を察する。
それは子宮口を無理やりに開いているのだと気づき、俺は動悸が激しくなるのがわかった。
「ふぐうっ!痛い、痛い!!うぐううぅうう!!」
「もう無理やりにでも子宮口を広げてあげないと、あなたの体が持たないと判断しました。赤ちゃんの頭もすぐそこまで来ているから!痛いかもしれないけど、これを我慢したらいきめるわよ!」
どうやら助産師は手首ごと膣内に挿入し、指先全体を使って無理やり、そして人工的に子宮口を開かせているらしい。
助産師に促された女性は自分の腕を噛んでその人工的な処置の痛みに耐えており、その叫びと喘ぎ、そして苦しむ様子を見ていて俺はそこで気づいたことがあった。
それは目の前で艶やかな声で喘ぐその姿を、エロティックなものとして捉えているということだ。
下半身が興奮し、服の中ではビンビンに勃起している俺のペニスだったが、助産師の行為は単なる処置でありそれ程エロティックなものではないと、必死に自分に言い聞かせる。
「もうダメ!いきんでいいですか!?」
「これで大丈夫そうね、一度思いっきりいきんでみてくれる?」
助産師はすぐに手を膣から抜き取ると、女性は身体を丸めるようにしながら強く長く胎児を外の世界へと押し出していた。
そしてその勢いのまま女性は股を広げ、息を整えながら体全体を強ばらせて力を込める。
その姿は先程までの苦しげなものではなく、新しい命を産み出す興奮に包まれていた。