【名文紹介】三島芳治『児玉まりあ文学集成』
サブカルにだって名文はある。それを紹介したいと続けているこのシリーズですが、今回はザ・サブカル、マンガです。
今回紹介したい名文はこちら、
児玉さんは言った
「木星のような葉っぱね」
彼女の言葉は文学的である
「それはどこが」
「意味はなかった
でも今私が喩えたから
この宇宙に今まで存在しなかった葉っぱと木星の間の関係が生まれたの
言葉の上でだけ
これが文学よ」
児玉さんはまるで詩のように改行の多い話し方をする
三島芳治『児玉まりあ文学集成(1)』pp.6-7
文章というのは、イラストや動画などに比べてはるかに情報量が少なく、物事を十全に描写することはできません。
僕は、そこが文章の面白いところだと思います。
すなわち、何を語って、何を語らないかを選べるということです。
描写する物に対して、あえて限定的な視点を提示することで、読み手に「こんな見方もあったのか!」という新鮮な驚きをあたえることができるということです。
それは、ピカソが「アヴィニョンの娘たち」で、従来の遠近法や写実性という視点から見たリアルとは違うリアルを提示したような。
作者の意図や視点、そこからくる感動が溢れている文章、とても好きです。
文学を謳う作品の最初に持って来る喩えですから、大変な勇気と推敲が必要だったことは想像に難くありません。
その作者の悩み抜いた末の表現が上の引用文です。
どうでしょうか? 文学の世界に引き込まれる気がしませんか?
『児玉まりあ文学集成』は、各話、文学という概念の底を掘り下げてくれるような作品です。
文学って素敵だろ、という作者のメッセージをひしひしと感じます。
皆様にも、そんな感動が伝われば幸いです。
あと、最近3巻が出たよっ!