有坂総一郎 2022/03/03 12:30

魔法と通信<2>

魔法以外の方法での通信方法の検討

時を同じくして日本と欧州では似たような高速通信を発明運用し始めた。

日本の場合、確実な文献上の登場では1743年、起源を辿ると1600年代後半に紀伊国屋文左衛門による米相場伝達で旗振り通信が確立された。大坂堂島の米会所からの相場情報を各地へ伝達させたこれは、大坂発京都で4分、神戸で3~7分、桑名まで10分、岡山まで15分、広島まで27分、江戸までは箱根越えの兼ね合いから最速1時間40分であったという。旗の視認には望遠鏡や双眼鏡が用いられた。

旗の振り方によって、相場の増減幅を伝えることが出来、旗を振る位置・回数・順序に意味を込め、情報を伝達した。単純なものは旗を振る向き(前後左右)で桁数、回数で数字を伝えるというものだが、第三者に通信内容を知られてしまうリスクがあったことから、後年複雑化したパターンが使用された。

欧州では日本に遅れること約1世紀、腕木通信が発明されフランスで実用化された。既存の手旗信号の原理を応用した形での数メートルの3本の棒を組み合わせた構造物をロープ操作で動かし、この腕木を別の基地局から望遠鏡を用いて確認することで情報を伝達するというもので、旗振り通信と同様の伝達手段である。

原始的な方式ながらも伝達速度は意外に速く、1分間に80km以上の速度で信号伝達された。また、腕木の組み合わせによってそれ以前から存在した手旗信号よりも精密かつ多彩なパターンの信号を送信できるため、短い文書を送れるだけの通信能力があり、基地局整備によって数百km先まで情報伝達することができた。シャップの考案した1799年以降の改良型では腕木だけで92パターンの動作を示すことができ、理論上は2つの符号を送ることで92の2乗の8464パターンを形容できた。

ナポレオンも腕木通信の活用に熱心で、国内を中心とする幹線通信網の整備に取り組んだ。この結果、1819年の記録によれば、フランス国内を縦断する551kmのルート(パリ・ブレスト間)を通じ、8分間で情報伝達することを可能にしたという。

モールス信号や電気通信網が充実するまでの間、情報伝送量、通信速度と通信可能距離の3点において、最も優れた通信手段であった。

日本の場合、腕木通信を採用することなく、電気通信に移行したこともあって、その設置例はない。実際に莫大なコストをかける必要がなく、従来の旗振り信号で事足りたことと、電気通信の国内整備進展により通信費が下がったためそのまま電気通信に移行している。



上記を考えると、国境や辺境地域からの通信としては旗振り信号を導入するのがコストが掛からずに効果を上げそうだが、主要都市間には腕木通信を導入すると良いかもしれないと考える。

あと、モールス信号そのものもそれほどコストをかけずに整備できそうだから、情報漏洩のリスクを無視すれば、腕木通信よりもモールス回光通信の方が望ましいかもしれない。

モールス回光通信ならば、単純に光の明滅であるから、光属性ないし火属性の魔法によって短距離から長距離まで一応は通信が可能である。

それって、旗振り通信や腕木通信の必要性があるのかと思うが、術者を大量に確保しないとモールス回光通信の魔法運用出来ないことを考えるとやはり必要であると思う。

まぁ、回光通信機を固定通信基地に配置している分には灯油ランプとかそういうので何とかすればいいわけだからそれはそれで活用出来るか。

軍部隊間の通信手段とかにはモールス回光通信がどこまで活用出来るかって話になるけれど、さて、難しいなぁ。そこは他の方法を考えるか。

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