有坂総一郎 2022/03/26 00:00

チハたん<4>

既にチハについてというよりも、帝国陸軍の戦車砲や「このはと」世界における戦車のあり方という感じに話が逸れているような気がするが仕方あるまい。

一度整理して考え直すとしよう。

まず、現実世界の戦車の歴史は41年においてその流れを大きく加速させたと言うことである。これは当然の帰結として戦車砲にも影響を与えることとなる。

そう、T-34ショックである。

リアル転生疑惑があるこのT-34はあらゆる意味で先進的すぎた。

傾斜装甲による被弾経始、幅広の履帯による泥濘地だろうが無視しての機動、主砲火力は圧倒的な貫通力を備えるという化け物だ。

そしてそれだけでなく化け物を化け物ならしめるのはその生産性である。俗にパンター1台作る間に15台作れると言われるほどのそれである。

文字通り、雲霞の如く、イナゴの群れとも言えるほどの数で押し寄せるそれだ。多少の人間工学無視や規格品の遊びがガバガバなことも何のその。工具箱で修理出来、燃料入れたらすぐ動くと言われるそれは火力云々以上の脅威であると言わざるを得ない。

L-1176.2mm戦車砲の性能は以下に示し、ドイツのⅢ号戦車、Ⅳ号戦車と比較してみると解るがいかれているの一言である。

T-34 76.2mm L-11
500m:60mm/1,000m:50mm AP
500m:62mm/1,000m:56mm AP

Ⅲ号戦車H型 50mm/L42 KwK 38,40
500m:54mm/1,000m:41mm APHE

Ⅳ号戦車E型 75mm/L24 KwK 37
500m:39mm/1,000m:35mm AP

バルバロッサ時点での比較であるが、これでは太刀打ち出来るわけがない。まして、T-34の砲塔前面/側面が90mm/75mmで曲面及び20度傾斜、車体前面/側面が45mm/45mmで60度傾斜。

あ・・・・・・ありのまま今起こった事を話すぜ!何を言っているか解らないと思うが、俺も解らない。頭がどうにかなりそうだった・・・・・・。猛然と突っ込んでくるヤツに砲弾を食らわせてやったんだ、だけどよ、躱されたとかそういうチャチな話なんかじゃねぇ、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ・・・・・・砲弾を食らっても弾き返してビクともしないんだ。その上でヤツはお構いなしに単機で突っ込んでくるんだ・・・・・・。しかも、ヤツはその後は戦術を覚えて隊列を組んで襲ってきたんだ・・・・・・。

と言う奴だ。

文字通り前線が恐慌状態に陥る。そんな化け物がモスクワで反撃してくるんだから。

その化け物退治にドイツは当然、動き出す。

そう、化け物に勝てるのは化け物だけである。パンターという怪物を、ティーゲルという魔物を、ケーニヒスティーゲルという魔王を・・・・・・。

これが42~44年の出来事である。

そして、その情報(化け物と怪物と魔物の情報に決まっている)をドイツはベルリンに駐在する陸軍武官が遣独潜水艦から持ち帰るのだが、残念ながら、遙か遠くの日本に持ち帰ったところで、研究開始しても追いつくわけがない。

今の今まで長砲身57mm砲による次期戦車開発をやっていたところにそんな情報持ち込まれたところで出来ることなんてたかが知れている。

それでも、我が帝国陸軍の至宝、原乙未生と戦車開発陣は超能力を発揮して開発した。そして間に合わせた・・・・・・それが三式中戦車チヌである。製造中の一式中戦車チヘの車体上部と砲塔を取っ払ってその上に九〇式野砲を無理矢理積んだ砲塔をでっち上げて、量産ラインに乗せたのである。

迫り来る本土決戦に備えて帝都の三菱重工の戦車工場では空襲も何のそのとせっせと製造に励んでいたのだ。

この前提条件を無視して語ることなど出来ない。

文字通り、「話が違う」のである。ノモンハンの後にそんな話は聞いていないのだ。間に合わせる方がどうかしているわけで、そんな国力が大日本帝国にはあるわけがないのだ。

だが、それでもやり遂げたのが原乙未生以下の技術陣であった。

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